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2023年6月7日【新型車】

ボルボカーズ、小型で環境負荷の小さいSUVをリリース

坂上 賢治

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浙江吉利控股集団傘下のボルボ・カーズは、事前の複数回に及ぶディザー広告を経た6月7日の夜、オンライン会見を介して新BEVのEX30を世界発表した。同車は発表4車種目にあたるBEVで、同ブランドの歴代SUVでは最も小型のSUVとなる。

 

 

予てよりLCA(製品に係る原料調達・製造・使用・リサイクル・廃棄に至るライフサイクル全域の環境影響を定量的に評価する手法)に拘るボルボ・カーズは、二酸化炭素(CO2)排出量低減に重点を置き、車両開発に取り組む姿勢を強く打ち出しており、今回、オンライン会見でジム・ローワンCEOは「車両購入ユーザーがクルマに求める全ての要素を小さなパッケージで纏め上げたクルマだ」車両サイズの小ささと完成度の高さを訴求した。

 

具体的には、生産工程を含むライフサイクル全体でCO2排出量の削減に取り組み、20万km走行時までの合計CO2排出量を30トン以下に削減させたと謳っている。

 

 

但しこれが可能となった理由は、車体が小さいためで、そもそも生産財の使用量が必然的に少なくなっていること自体が優位に働いている。なおアルミニウムは約25%、鋼材は約17%、樹脂材の約17%をリサイクル材としたこともCO2排出量の削減に効いている。

 

その他では、シート・ダッシュボード・ドア等に、デニム・亜麻・リサイクルポリエステルを約70%含むウール混紡素材などの再生可能素材を使う。

 

 

特にデニムは、これまでリサイクル工程で廃棄されていた短繊維を使うことで環境負荷の削減に係る試みを積極展開し始めた。結果、最終的にリサイクルできない部分に関してはエネルギーを回収するなどで全体で再利用率を95%まで高めた格好だ。

 

製品発表の概要は先の通りで、オンライン会見を通じて世界全域に向けて同時発表した。なかでも欧州(の一部)や米国地域では同日より予約注文の受け付けを開始(その他の地域でも順次受注が開始される見込み)。

 

 

但し、車両自体のデリバリー開始は2023年末頃からとなる見込みだ。気になる価格は3万6000ユーロ(540万円前後)から。対象者は限られるもののリース提供の他、サブスクリプションによる車両利用も可能となる。

 

車両のスタイリングは、前後方向が圧縮された格好のボルボ特有のスカンジナビアデザイン。車体各部のサイズは、市街に於いて立体駐車場を選ぶ手間が省ける全長4233×全幅1836×全高1549mm、ホイールベース2650mm、車両重量は1830~1943kg(装備により異なる)、これはXC40リチャージ比で200mm、40mm、100mm、50mmほど小さくなる。

 

蓄電池はフロア下中心部に配置。蓄電容量は大きく分けて2種。パワーユニットは3種。

 

 

蓄電池のひとつは、資源消費が削減されるリン酸鉄リチウムのLFPスタンダードレンジバッテリ搭載車で69kWh(航続距離344km/298.3マイル)。このスタンダード仕様での動力性能は、最高出力200kW(272hp)、最大トルク343N・mを発揮するシングルモーター仕様で、0-100km/h加速5.7秒、電費16.7kWh/100km。

 

より長い航続距離を求めるユーザーには、ふたつめのリチウム、ニッケル、マンガンを使用した高性能NMCバッテリを搭載したシングルモーター・エクステンデッドレンジ仕様がある(航続距離480km/298.3マイル)。こちらの動力性能は、電池性能の向上により0-100km/h加速は5.3秒、電費15.7kWh/100kmとなる。

 

 

加えて更に上位性能を持つモデルも用意される。こちらは最高出力315kW(428PS)、最大トルク543N・mで全輪駆動のツインモーターパフォーマンス仕様だ。

 

こちらは前後モーター駆動ゆえに0-100km/h加速が3.6秒、100km/hからの停止距離38m。但し航続距離は若干落ちることになり460km(285.8マイル)。電費は16.3kWh/100km。なおトップスピードに関しては全モデル共通の180km/h。

 

 

充電時間は11kWの普通充電で電池残量0%から満充電まで8時間、175kWの直流急速充電で電池残量10%から80%になるまで26分。車載センターディスプレーやスマートフォンアプリを介して充電アンペア数、最大充電レベル、充電を始める時間などが設定できる。

 

ラゲージスペースは、後席後方・床下の61Lを含めて318Lと。フロントにも若干ではあるが、備品の収納区画がある。インストルメントパネルはコンパクトなセンターディスプレイに、ダッシュボード中央に大型のセンターディスプレイが配される言わばテスラ的なもの。決して豪華な仕様ではないが機能的だと言える。

 

 

安全性の確保では、構造材に異なる強度の高張力鋼を使いピラーやルーフを強化。側面衝突時にドライバーと助手席乗員が衝突しないよう運転席にファーサイド・エアバッグを内蔵した。

 

ステアリングホイールの後ろにはセンサーによるドライバー監視システム、交差点での事故を回避する交差点自動ブレーキなども搭載。新手の安全機能では、通行中の自転車や2輪車が車両後方から走行してきた時にドアオープンを警告表示と警告音で制止する「ドア・オープニング・アラート」もある。

 

 

最後に後に公表された日本国内向け仕様は、20インチの大径ホイールに245/40R20サイズのタイヤが装着されていた。今後の日本国内への展開としては2024年に「EX30 Cross Country」の受注開始。こちらのデリバリーは同年後半になる見込みだ。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。