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2023年5月24日【新型車】

ボルボEX30、ボルボ史上最少のカーボンフットプリントに

坂上 賢治

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浙江吉利控股集団傘下のボルボ・カーズは、自社ブランドブランド最小のコンパクトクロスオーバーBEVの「EX30」を来たる6月7日に本社拠点を構えるスエーデン本社から発表する予定を準備しており、5月24日の現段階で、当該車両のティザー画像と共に車両情報の一部を公開した。

 

それによるとEX30は、持ち前の安全性を確保している他、ブランド史上最少のカーボンフットプリントを実現していると謳っている。ここではその具体的な数値を挙げており、20万キロ走行時のカーボンフットプリントの合計を30トン以下に削減したという。

 

 

ちなみにこれは、同じ電動車のボルボC40とXC40と比較して25%の削減となり、同社の当初からのスコープに沿って〝2018年から2025年の間に車両1台あたりのCO2排出量を40%削減する〟という数値目標に向けて、着実に計画を消化しているとした。

 

それはテールパイプからの排出をゼロにするだけでなく、車両デザインや、開発・製造過程。更に車両や部品の輸送にまで及ぶと述べている。

 

こうした車両の概要についてボルボのグローバル・サステナビリティー部門をマネージするアンダース・カーバーグ氏は「新しいEX30は、私たちのサステナビリティへの取り組みに係る大きな一歩を記すものです。

 

私たちは2025年までに、車両1台あたりのCO2排出量を2018年の水準から40%削減することを目指しており、テールパイプからの排出量を50%削減、製造販売、原材料調達、サプライチェーンからの排出量を25%削減します。

 

これらは全て、2040年までにクライメート・ニュートラルな企業になるという野心的な目標に向けた取り組みの一環なのです。

 

更にボルボEX30のCO₂排出量を、現行モデルの電気自動車の75%まで削減することができたのは、なぜでしょうか。まず、車をより小型化するということは、製造するために必要な素材が少なくて済むということです。

 

 

アルミニウムとスチールは、車の生産に関連するCO₂排出量の最大要因であるため、この点において私たちは大きな違いを生み出すことが出来るのです。

 

新しい小型SUVを製造する際に、アルミニウムやスチールの使用量を減らす一方で、リサイクル素材をより多く使用しています。

 

ボルボEX30の製造に使用される全アルミニウムの約25%、及び全スチールの約17%がリサイクル素材となっており、これらの素材による環境負荷を大きく軽減させます。

 

また同車では、最もサステナブルな部品は〝存在しない部品である〟というアプローチが車両の至るところで貫かれています。

 

ボルボEX30のデザイナーは、サステナブルなデザインの原則として最適化を追求することで、内部の複数の機能を1つのコンポーネントにまとめることを可能にしました。

 

これにより、機能性を損なうことなく、車内部に存在する部品点数を減らすことを実現しています。

 

 

ボルボEX30の製造プロセスは、さまざまな方法で効率化がされており、ボディパーツのプレス加工における素材の車両への利用率が、ボルボの中でも最も高い車のひとつになっているのです」と畳み掛けた。

 

加えてカーバーグ氏は「またボルボは、素材のトレーサビリティという課題にも取り組み続けており、特にEX30のバッテリーパックを製造する際には、リチウム、マンガン、コバルト、グラファイト、ニッケルなどの重要な原材料を追跡できるように、ブロックチェーン技術を導入しています。

 

例えばシート、ダッシュボード、ドアには、デニム、亜麻、リサイクルポリエステルを約70%含むウール混紡素材など、リサイクル素材や再生可能素材を数多く使用しています。特にデニムは、よりスマートでサステナブルに素材を使用する方法を示す代表的なものです。

 

デニムの車内インテリア装飾を作るために、私たちはデニムのリサイクル工程で廃棄物となるはずの繊維を使用しています。

 

 

ジーンズがリサイクルされるとき、細断された繊維は糸状に撚られ、長い繊維は互いに絡み合いますが、短い繊維は通常、廃棄物として処分されます。私たちは、この短い繊維を回収し、デニムのインテリア装飾に使用しています。

 

このようにボルボEX30に使用されている素材も、よりサステナブルな新しい車づくりに貢献するものです。

 

内装コンポーネントから外装バンパーに至るまで、車に使用されている全てのプラスチックの約17%がリサイクル素材であり、ボルボ車の中で最も高い割合となっています。

 

排出量削減のために重要なもう一つの領域は、クリーンエネルギーを利用した製造およびサプライチェーンです。ボルボEX30は、100%クライメート・ニュートラル電力を含む、高レベルなクライメート・ニュートラル エネルギーにより稼働する工場で製造される予定です。

 

なおサプライチェーンに関してボルボは、EX30のための主要サプライヤーと協力しており、その95%が2025年までに製造に於いて100%再生可能エネルギーを使用することを約束し、多くのパートナーがすでに達成しています。

 

それは自社の事業上での排出量を単純に削減するだけでなく、より幅広いサプライチェーンのパートナーにもそれを強く促していること。これこそ、私たちの高い目標に対する達成意欲を反映したものです。

 

 

ちなみにEX30は、いわゆる〝クレイドル・トゥー・ゲイト〟のCO2排出量を約18トンと想定しています。クレイドル・トゥー・ゲイトとは、原材料の調達から完成した車が販売店に到着するまで、つまり車が使用開始されるまでのCO2排出量を指しています。

 

EX30は、そのライフサイクル終了後に於いても、素材をリサイクルし、またリサイクルできない部分からはエネルギーを回収することで、95%まで再利用できるように設計されています。

 

つまり、ボルボEX30は、安全性、快適性、利便性を犠牲にすることなく、お客様自身がダウンサイジングし、CO₂排出量を削減できる可能性を広げてくれるのです。これは、ドライバーにとって有益なことであり、環境へのダメージも少なくなります。

 

最後に、この新しい小型SUVボルボEX30は6月7日に発表され、同日より、一部の地域で注文または予約受付を開始する予定です」と結んでいる。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

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1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。