NEXT MOBILITY

MENU

2024年1月24日【新型車】

ボルボ・トラックス、北米で「新型VNL」を発表

坂上 賢治

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 

バージニア州ダブリンのニュー・リバー・バレー工場で本格生産に移る

 

ボルボ・トラック・ノース・アメリカは1月23日、北米の大型トラック業界で自社が新時代を担う存在になるべく新型「VNL」を発売した。

 

そんな同車の最も大きな特徴は、車両の空力特性を徹底的に高めて燃料効率を最大10%向上させたところにある。そんな当該車両の組み立ては、今後数カ月以内に開始される意向で、バージニア州ダブリンのニュー・リバー・バレー工場で本格生産に移る予定だ。

 

先のVNLの空力特性の向上では、まずフロントのフォルム変更にあたって角張ったくさび形のキャブを設計したこと。これを湾曲したフロントガラスを組み合わせたこと。

 

またホイール開口部のクリアランスを狭くし、バンパー・ボンネット間のチリを検討、シャーシフェアリングの追加などで乱気流を抑えたことなどにより、同車に新たな空力的ゲインを生み出した。

 

加えてパワートレインも改良した。新しいVNLは、最新世代のD13エンジンを搭載したことから燃料効率、パフォーマンス、耐久性の向上を狙っている。そんなD13エンジンには、405~500馬力に至る4つの定格と、1,750~1,950ポンドフィートの3 つのトルク定格がある。

 

ギアチェンジの操作が多くなる場所での効率的な運転が実現

 

併せて効率的なアイドリング管理機能を備えており、車両停止・駐車時のエンジンアイドリング時の環境負荷低減にも貢献する。例えば駐車時には車載の24ボルトバッテリーシステムを利用して排出ガス、エンジンの摩耗、燃料コストを積極的に削減する。

 

時にアイドリング禁止エリアに駐車しんければならないドライバーのためには、ボルボ・パーキングクーラーが役立つ。これによりアイドリング時の騒音や振動を排除させることで快適な環境を維持し、ドライバーの健康と幸福度を最大限に高める。

 

そのパワーユニット関連に対するトランスミッション設定には、より素早いシフト操作が可能なDCT(デュアルクラッチトランスミッション)とした「I-シフト・デュアルクラッチ」を組み合わせたI-シフト・トランスミッションシステムが採用された。

 

このI-シフト・デュアルクラッチは、入力軸とクラッチを2つずつ備えたもので、従来型変速機の前半分を再設計したもの。I-シフト・デュアルクラッチでは、選択したギアとは別に、同時に次段階の変速ギアが同時に回っているため、シフト操作が瞬時に切り替わるのが大きな特徴となっている。

 

従ってエンジンパワーの伝達が無駄に中断されることなく、連続したトルク特性が維持される。このため変速時に瞬間的に速度が落ちることがなくなり、カーブの多い道路、アップダウンなど坂が繰り返される場所、信号が多い市街地など、ギアチェンジの操作が多くなる場所で効率的な運転が実現する。

 

正確なステアリング制御を提供することでドライバーの疲労の軽減にも貢献

 

加えて重量貨物を載せる場合、タンクローリーを引く場合、家畜を輸送する場合などで、変速ショックがやわらげられて荷物の揺れが抑えられることで、ナイーブな路面状況でも走行時の危険が低減する。

 

新型ボルボVNLは、ドライバーの仕事、生活、休憩時の快適性、効率性、安全性を最適化することも念頭に設計されており、新しくオプション設定されたエアサスペンションシステムのGRAS (グローバル リア エア サスペンション) は、デュアル レベリングロッドを介して車両のロール角とピッチ角を低減させて、横方向の安定性を向上させることにより常に一定の車両姿勢を維持する。

 

そんなGRASシステムに組み込まれたボルボ スマート サスペンション ソフトウェアは、ボルボ ダイナミック ステアリング システムとシームレスに連携。様々な積載条件に合わせてサスペンションを調整するための機能を持つ併せており、荷重、地形、道路状況、さまざまなエンジン トルク レベルに関係なく、正確なステアリング制御を提供することでドライバーの疲労の軽減にも貢献する。

 

車両運行時には、オールインワンのフリート管理ポータルのボルボコネクトが活躍する。ちなみに全ての新型ボルボトラックには、24か月間の無料のボルボコネクト・サブスクリプションが標準装備され、車両の診断、燃費レポート、安全性レポート、位置情報サービスなどを1つのプラットフォームに収容した同機能が役立つ。

 

ドライバーはボルボ・マイ・トラックアプリを使うことで、推定燃料残量、DEFレベル、冷却液レベルを確認できる他、ライトの故障、ウォッシャー液のレベル低下、その他の重要な項目など潜在的な問題に関する通知を前以て受け取ることで、休憩中や運行前の点検の際にそうしたトラブル要因に事前対処できるようにする。

 

車両を運転するドライバーにとっても新たな時代の到来を告げるもの

 

こうした新VNLの仕上がりに対してボルボ・トラック・ノースアメリカのピーター・フォールホーブ社長は、「新ボルボVNLは全てが刷新されました。それは当社のお客様のみならず、車両を運転するドライバーにとっても新たな時代の到来を告げるものとなります。

 

今になって過去を翻ってみると1996年に第一世代のボルボVNを発売した際、その型破りな空力ボディは、北米のトラック業界に衝撃をもたらすことになりました。そして今回、装いも新たになったボルボVNLを市場投入するにあたり、再び、当地のトラック業界の未来を革新する車両を導入できることに胸を膨らませています。

 

なかでも安全性の確保では当社伝統のDNAを受け継いでおり、我々のエンジニア達は、事故ゼロを目指して独自のアクティブ+パッシブ安全機能に焦点を当てました。

 

新VNLでは、アクティブレーンセンタリングを提供するパイロットアシスト付きボルボアクティブドライバーアシストプラスを含む、クラスをリードする様々な予防安全システムが提供されます。

 

例えばボルボ アクティブ ドライバー アシストプラスは、ボルボ ダイナミックステアリングを搭載しており、あらゆる速度での操縦安定性を向上させ、あらゆる道路速度での安定性を高め、横風、高速道路のクラウニング、柔らかい路肩、またはタイヤの故障などの緊急事態に的確に応える懐の深さも備えています。

 

将来到来する完全自動運転トラックの標準パッケージに

 

新しい歩行者検知機能は、歩行者や自転車が進路や死角にいる可能性がある場合にドライバーに警告し、進行経路に直接ある物体に対しては前方自動緊急ブレーキを作動させます。

 

クラス最高の受動的安全システムでは、死角の無い広域視界を実現する接着式のフロントガラスを搭載。これによりVNLはただ単に空力特性だけが改善されるのではなく、ドライバーの視認性を向上させ、安全性も強化され、キャビン内の風切り音も軽減されます。

 

そのキャビン自体は高張力鋼で構成されており、万が一の衝突時エネルギーも大きく削減し怪我の可能性を抑え込むだけでなく、独自のフレアフレームレール構造によって、パワートレインをキャブの下に落とし込むことで乗員を最大限保護し続けます。

 

もちろん主要な衝突試験基準に適合させる設計となっており、運転席側と助手席側には米業界初のサイド カーテンエアバッグもオプション搭載可能となっています。なおエアバッグ展開時やロールオーバー衝突時などのアクシデントが発生した折には、新たな安全機能としてE-Callが作動。携帯電話による接続が可能な場合は、ボルボ独自の緊急サービスを介してドライバー並び車両の正確な位置情報を伝えます。

 

新しいボルボVNLは、BEV、FCV、水素・再生可能燃料を含む次世代の内燃エンジンなど、今後の投入される可能性がある多様なパワーユニットに対応できる新プラットフォームに基づく設計思想に立脚したものとなっており、将来到来する完全自動運転トラックに於いても標準パッケージとなります」と結んだ。

CLOSE

坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。