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2020年11月5日【ESG】

ボルボトラックス、EVトラックのフルラインメーカーに

坂上 賢治

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 スウェーデン・イエテボリに本拠を置くABボルボ傘下のボルボトラックスは11月5日、来る2021年に欧州市場に向け大型電気トラックを発売。生産面に於いても翌2022年から量産体制に入ると宣言した。(坂上 賢治)

 

これを受けて来年から欧州の運送事業業者は、ヘビーデューティーレンジの大型ピュアEVトラックを同社に発注。最先端の環境車でいち早く事業を展開できるようになる。その結果、ボルボトラックスは来年早々にも、欧州に於けるEVトラックのフルラインメーカーとなる。

これは同社が欧州地域のみならず、都市を跨がる長距離輸送から、ラストワンマイルのエリア輸送に至る全レンジを通してCO2フリーのトラック輸送を、この地球上で初めて実現させることを意味する。

 

 なおリリースされる車両は主に地域内輸送、都市内の建設事業に関わる輸送、廃棄物の輸送等に供される見込みだ。これを踏まえてボルボトラックスでは目下、大型EVトラックのFH、FM、及びFMXのテストを熱心に繰り返している。

 

気になる車両の仕様は連結総重量で最大44トン。輸送距離は搭載バッテリーの構成により異なるが、当初は最大で300km前後を目安にしているという。

 

ちなみに同社は、既に2019年から都市配送やごみ収集用のFLエレクトリックとFEエレクトリックを欧州で生産してきた。今後はこれに新たな大型EVトラックが加わる形だ。また北米では、来る12月3日から区域輸送用のVNRエレクトリックが発売される見込みだ。

 

 

 ボルボトラックスのロジャー・アルム社長は「これからの10年、環境面で厳しい要求条件が問われるなかで、環境負荷の低い大型長距輸送トラックが社会から求められる時代が続きます。

 

従って輸送事業ではそうした要求に応え、気候への負荷を大きく減らすべく、電気などの代替燃料を使う車両を増やし、持ち前の車種ラインナップを大転換させる必要があります。

 

そして技術的にこれに応えられるのは、中・長距離の大量輸送を実現できるEVトラックと燃料電池トラックのみです。

 

当社は、来る2040年までに車両ラインアップを化石燃料を使用しない車両にすることを目指しており、2020年代後半には水素燃料電池トラックも発売する計画を立てています。

 

私たちはこうした大型EVトラックの生産・出荷数を急速に拡大させていくことで、輸送事業に関わる全てのステークホルダーの野心的な目標達成を支援していきたいと考えています。

 

 

しかし投下資本を筆頭に輸送事業が、輸送車両の動力源を転換させいくスピードは、事業環境下に於いて充電インフラへアクセスできる難易度。輸送業務の内容や条件など複数の変数があります。つまりその運送業者が関わる市場の性格によって社会浸透の速度は大きく異なります。

 

そこでボルボトラックスは、持続可能な未来社会へと段階的な移行のステップを踏み、様々な輸送事業を縁の下から推進させていくためのエンジンになりたいのです」と語る。

 

 またアルム社長は「当車両のシャーシは、搭載する動力源並びにドライブラインから独立させるようにあらかじめ設計されてつつも、電気・ガス・ディーゼルなど搭載動力毎に独自の設計技術が投入されています。

 

一方で車両の仕上がりは、使用するエネルギー内容には関係がなく、ボルボブランド車としてドライバーに対する快適性、信頼性、安全性など、統一した高い基準を満たせるよう日々腐心しています。

 

 

我々のクルマ造りの哲学は操業以来一貫しており、世界の輸送事業者が必要不可欠な収益性と生産性を維持したまま、電動車両など新たな動力車へ可能な限りスムーズに移行して頂くことにあります。

 

そのためには、無理の無い移行計画、資金調達手段、内燃エンジン車を超える車両の完成度、充電装置とそのアクセスを容易にすること、手厚い運用サービスを含む包括的なソリューションを提供しなければなりません。

 

私たちは、お客様に対するグローバルネットワークをより充実させ、これまで以上のサービス品質をご提供し続けていきます」と結んでいる。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。