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2019年12月16日【オピニオン】

独VWとカタール、最先端モビリティ社会をサッカーW杯で実現へ

坂上 賢治

 

 

 独・フォルクスワーゲン AG(以降、VW)と、ペルシア湾の立憲君主制国家カタールの同国投資庁(以降、QIA)は、米国時間の12月14日、双方による協働事業「プロジェクト・カタール・モビリティ(Project Qatar Mobility)」に署名した。(坂上 賢治)

 

 

これは、世界に先駆けてカタール全域で、自律輸送ビジネスが成り立つ環境をいち早く整備。来る2022年を目処に、最先端のライドシェアサービスの本格事業化を目指すというもの。

 

同プロジェクトには、VW傘下で商用輸送車両とインフラを永年担ってきたフォルクスワーゲン・コマーシャル・ヴィークルス(VWCV)とスカニア。さらに車両共有によるライドシェアサービスを展開するモイア(MOIA)、自動運転技術を開発するAutonomous Intelligent Driving(AID)の4社が参画。

 

カタールで2022年開催の「FIFAワールドカップ」の期間中、世界初の〝排出量ゼロのイベント開催国〟になることを目指す。

 

写真はフォルクスワーゲングループと、QIA(カタール投資庁)による調印式

 

 これを目標に同日ドーハに於いて、双方が登壇して締結式典を開催。カタール投資庁CEOのマンスール・ビン・イブラヒム・アル・マフムード氏と、VWグループCEOのヘルベルト・ディース氏との間で締結書面の署名が取り交わされた。

 

これによりQIAとVWは、自動運転EVによるライドシェアサービスを当地の既存公共交通ネットワークとシームレスに統合させる最先端プロジェクトを同国・首都圏のドーハ西海岸地域で始動させる。

 

 同プロジェクトで利用されるハードウエアは、総勢35台の自動運転EV。フォルクスワーゲン・コマーシャル・ヴィークルスが25台の小型バスBuzzなどを用いてドーハのウェスト・ベイエリアからシャトルスタイルの小人数輸送を担い、対してスカニアが用意する10台のバスがより大きなグループを送迎していく仕組みだ。

 

 

同輸送サービスの実現のため、VWグループ傘下のMOIAとAIDは、モビリティプロジェクトを着実に推し進めるためのサーバ・ネットワークの整備と、AIを介したアプリケーション・ソフトウェアの導入・提供を担う。

 

併せて自動運転車運行に係る適切な法的枠組みの制定。さらに自動運転EVをスマートシティで安全に走らせるためのインフラ・ストラクチャの技術サポートなど、自動運転車に関わる全てのエコシステムも助言・整備していく。

 

またこれらは同国都市部のドーハのみに留まらず、それ以外のカタール全域への次世代モビリティ社会実現の青写真として国内全域に拡張。さらに国外への技術輸出も視野に入れている。

 

 

 なおシャトル車両と大型バスの〝エリア限定実験〟は2020年中に開始し、2021年には範囲を広げた社会実証を開始。2022年以降は、自動運転社会のショーケースとして国外に向けても発信していく。

 

 同プロジェクトについてVWのハーバートディースCEOは、「この計画は当社が2016年6月に発表した新経営戦略〝Together ‐Strategy2025〟の推進にも大きな役割を果たすことでしょう。

 

それはプロジェクト進捗上の課題として定義付けられた〝経済成長〟〝社会貢献〟〝環境対応〟などの複数に亘る課題に応えて、次世代モビリティ事業の費用対効果の高さを自ら実証していくものです。我々は、同計画の消化と実現を通して、新たな未来を切り拓く足掛かりとしていきます」と語った。

 

 対してVWCVのトーマス・セドラン会長は、「当社は自動運転、サービスとしてのモビリティ(MaaS)とサービスとしての輸送(TaaS)を担当し、ロボタクシーやロボバンなどに対応する特別目的車両(SPV)の開発と生産を担います。

 

もとよりVWCVは既に単純なトラックメーカーではなく、輸送全域に係る統合モビリティプロバイダーであり、そうした意味で今回の参画プロジェクトは、当社の中核事業をさらに加速させていくためにも重要です。

 

我々は現在、AIDが開発している自動運転システムを活用し、MOIAからはインテリジェントなライドシステムを導入し、これにCO2ニュートラルなモビリティを組み合わせて、移動時に於ける効率と安全を最大限にまで高めていきます」と話した。

 

写真は署名するVWグループCEOのヘルベルト・ディース氏と、カタール投資庁CEOのマンスール・ビン・イブラヒム・アル・マフムード氏

 

 またスカニアのヘンリック・ヘンリックソンCEOは、「当社事業に於ける最終目標は、持続可能な輸送社会を打ち立てることにあります。

 

それゆえに電気自動車や自動運転車の技術進化は、今後数年間で必ず達成しなければならない最重要課題となるでしょう。

 

そうした意味でカタールの最先端プロジェクトで、我々に活躍分野を与えられることは実にエキサイティングことだと思います」とコメントした。

 

 最後にカタール投資庁のマンスール・ビン・イブラヒム・アル・マフムードCEOは、「私たちの都市を世界に互して、さらに前進させていくためには、新たなイノベーションの力が必要です。

 

それゆえにQIAがVWと共に自立輸送技術の最前線に立っていることを誇りに思います。今後2年間で我々が挑戦していく技術革新は、世界の都市とモビリティの未来を革新していくことに大きく役立っていくことでしょう」と結んでいる。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域の取材活動を経て同社出版局へ。コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に環境&リサイクル紙、車両ケア&整備ビジネス専門誌等の創刊誌編集長を歴任。独立後は一般誌、Web媒体上でジャーナリスト活動を重ね30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。