英国でグリーンエネルギー技術に取り組むアルティリウム( Altilium )は5月10日( 英国イングランドデヴォン州プリマス発 )、車載蓄電池からのリチウムの回収とカソード活物質 (CAM) の製造を行う湿式冶金リサイクル技術「EcoCathode™の進捗過程について報告した。
それによるとアルティリウムは独自のプロセス技術を経て、LFPバッテリーから97%以上のリチウムを回収し、持続可能なバッテリーのリサイクルに向けた第一歩を踏み出した。このリチウムを高効率で回収する技術は、2030年段階で世界市場の40%以上を占めるLFPバッテリーのリサイクルを推し進めるための重要な鍵となる。
また併せて古い三元系正極材(ニッケル・マンガン・コバルト)のNMC111バッテリーから回収したリサイクルCAM(Cathode Active Material:カソード活物質)を、電気化学的性能試験と化学分析のためにインペリアル カレッジロンドンでのテスト用に納入した。
これらは自社が高度なNMC622高ニッケル化学物質を初生成した事例となり、原材料生成に係る炭素排出量の60%、コストを 20% 削減して、より効率的で環境に優しいバッテリーの製造に貢献するという。
イングランド北部ティーズサイドにあるアルティリウムの大規模リサイクル施設は、年間 150,000台のEVから出るバッテリー廃棄物を処理することで、国内の持続可能な電池原材料源を構築し、中国からの輸入材料への依存を減らし、英国の運輸部門の脱炭素化に貢献する。
アルティリウムでCOOを務めるクリスチャン・マーストン博士は、「我々は、バッテリー材料の国内サプライチェーンの構築を目指して取り組んでいます。そうしたなかで近年、正極材料としてリン酸鉄リチウムを使用するLFP電池は、ニッケルやコバルトなどの希少材料への依存を減らすことを目指す自動車OEMや電池メーカーの間で急速に人気が高まっています。
しかし鉄とリン酸塩はニッケルやコバルトよりも抽出時点での価値が低く、リサイクル過程に於ける経済性の確保が課題で、今後のLFPバッテリーの拡大はバッテリーリサイクル事業上の大きな障壁になっています。
そこで我々は、これに対処するべく新しいCAMの製造過程で再利用できるリチウムをより多く取り出してバランスを取るべく、リサイクル効率80%の目標を掲げて取り組んでいます。
また当社は、グラファイトをリサイクルして新しいアノードの製造に再利用することもできるため、今後拡大するであろうLFPバッテリーからの原材料回収に係る稼働コストとの相殺に挑戦しています。
ちなみに英コベントリー・ウォリック大学内にある非営利の資金提供団体Advanced Propulsion Centre(APC/先端推進システム技術センター)によると、英国のバッテリー需要は 2030年までに年間91GWh に達し、年間120万台のEVの生産を支えるようになると予測されています。
そのためにはバッテリー廃棄物の黒い塊からCAMを生成し素材の価値が倍増させる必要があります。しかし現段階に於いて英国内から生まれる黒塊は、加工のためにアジアに輸出され、それは重要な資源の損失に繫がっているのが現状です。
そうしたなか当社のティーサイドリサイクル工場は、年間30,000トンのCAMを生産でき、これは2030年までに英国で予測される需要のほぼ(年間163KTのCAMの)20%を満たす量となります。我々は今後も、中国からの輸入資材への依存を減らし、英国の運輸部門の脱炭素化を支援していきます」と話している。