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2023年11月10日【企業・経営】

自動車メーカー、2024年3月期第2四半期決算総括

松下次男

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自動車メーカーの2024年3月期第2四半期(4~9月)連結決算の発表が11月10日、出揃った。それによると半導体需給の改善や好調な北米での販売増が収益を押し上げ、過去最高の収益を達成するところが相次いだ。円安も収益増につながり、通期業績見通しについても大半のメーカーが上方修正した。

 

一方、リスクとして顕在化してきたのがNEV(新エネルギー車)の比率が拡大している中国事業や景気減速感が出ている一部のアジア地域での取り組みだ。

 

実際、日産自動車の内田誠社長兼CEO(最高経営責任者)は決算説明会で中国事業改革の一環として中国拠点からBEV(バッテリー電気自動車)の輸出に乗り出すなどのテコ入れを図ることを表明した。

 

三菱自動車は中国事業撤退に伴う損失を計上し、乗用車系の上期業績で唯一、最終利益が減益となった。

2023年度上半期の実績を見ると、前期まで足かせとなっていた半導体不足が改善し、生産、販売のサイクルが軌道に乗り始めたのが全般に好業績につながった。

 

トヨタ自動車は上期、全地域で販売台数を伸ばした。売上高に相当する営業収益は20兆円を超え22兆円弱に達し、営業利益、最終利益とも2兆5千億円を上回った。通期見通しについても上方修正し、過去最高の営業収益、営業利益を目指す。

 

宮崎洋一副社長はトヨタの事業基盤について「グローバル・フルラインアップで地域バランスがとれている」と述べるとともに、販売台数が「1億台を超える」こと、そして「CO2(二酸化炭素)と収益を両立したハイブリッド車がある」のが特色と強調。

 

これが「稼ぐ力の安定化」につながっているとし、さらにバッテリーEV(電気自動車)や電池への投資をすすめることにより、一層「稼ぐ力を強化したい」と話す。

 

ホンダも過去最高の収益を達成。青山真二副社長は決算説明会で「高収益の二輪事業に加え、北米を中心に生産台数を回復させ、競争力の高い商品を届けることができた」と述べた。

 

懸案だった四輪事業の収益性も大きく改善。上期の四輪事業の営業利益率は4・7%(前期1・3%)となった。ただ、青山副社長は自動車業界の中では「自慢できる数字ではない」として更なる上昇を目指す方針。

 

通期見通しについては、中国やベトナムなどの減速から四輪、二輪とも販売台数計画を引き下げた。一方で、通期業績は上方修正し、初の売上収益20兆円超えを目指す。

 

米GM(ゼネラルモーターズ)との量販クラスの小中型EV共同開発中止の業績への影響は軽微との見方を示した。

 

日産自動車も北米での販売増が寄与するなど収益が大きく改善し、通期業績見通しを上方修正した。

 

課題となっているのが中国事業で、内田社長はここ数年、「ローカルブランドの新エネルギー車のシェアが大幅に増加した。その分、シェアを落としているのが日産を含むインターナショナルブランドの合弁会社の販売」と分析する。

 

このため、かつて年間120万台水準あった中国販売が四半期ベースで20万台未満に落ち込み、当面、年間80万台水準を目標するレベルだ。

 

そこで日産は中国事業の構造改革に着手し、NEVを前倒しで投入する。内田社長はこれらを現地のテクニカルセンターで開発し、うちBEV4車種を「2024年下期から投入する」と表明。また、2025年からは約10万台のBEVを輸出する方針を明らかにした。 

 

スズキ、マツダ、スバル、三菱自動車も2023年度上期実績で、売上高、営業利益ともに2桁増の増収増益を達成。スズキは主力のインドや日本などの事業が好調で、第1四半期に続き、通期業績見通しを再度、上方修正した。

 

売上高は2千億円アップの5兆2千億円を計画し、営業・最終利益と並んで過去最高を目指す。

 

マツダ、スバルは北米の販売増が業績に寄与した。懸案だった半導体の供給が改善したことから生産が回復し、車種構成でも収益アップに寄与した。

 

マツダの毛籠勝弘社長兼CEOはラージ商品の導入やアラバマ工場に2直化などにより「台当たりの売上高、変動利益が過去最高レベルとなった」と総括した。

 

通期業績見通しでは、上期の台風の影響や中国事業減速などからグローバル販売台数は5月公表値から下方修正したが、仕向地ミックス改善や車両価格の引き上げなどにより財務指標は上方修正し、売上高、営業利益ともに過去最高を目指す。

 

スバルも通期業績見通しを上方修正。販売台数は当初計画を据え置いたが、大崎篤社長CEOは主力の「米国向けを増やす」方針を示した。

 

加えて、マツダ、スバルとも次世代に向け経営のスピードアップに取り組みことを表明。毛籠社長は電動化事業本部を発足させ「電動化の加速」を、大崎社長は開発拠点やEV生産拠点の加速を示し、「三鷹の開発拠点は今年3月に稼働開始」し、群馬の開発拠点は「イノベーションハブ」の名称でと2024年1月に稼働を始めると説明した。EV専用工場は計画通りの進捗という。

 

三菱自動車は販売質向上や地域ミックス、車両価格の改善などが寄与し、売上高、営業利益を伸ばした。しかし、ASEAN地域の需要落ち込みもあり、上期、販売台数は前年比で減少した。通期業績見通しは上方修正した。

 

商用車メーカー2社の第2四半期連結業績は、アジア地域などの市況悪化が響き、いすゞ自動車、日野自動車とも販売台数が前期を下回った。

 

ただ、いすゞは価格対応や円安の進行から売上高、利益も過去最高を計上。通期業績見通しも上方修正した。一方、日野自動車はアジア地域の市況悪化に加え、認証不正問題の影響から厳しい決算となった。通期業績予想でも最終損益で赤字を見込む。

 

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。