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2024年2月9日【企業・経営】

自動車メーカー、2024年3月期第3四半期決算総括

松下次男

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販売好調や円安で過去最高益達成や通期見通しで過去最高益予想が相次ぐ

 

2月9日、上場自動車メーカーの2024年3月期第3四半期(4~12月)連結決算発表が出揃った。9か月の累計業績は、半導体需給の改善に伴って車両供給不足がほぼ解消。増収増益を達成するところが相次いだ。円安も重なり、多くが過去最高収益を達成し、通期も過去最高を更新する見通しだ。(佃モビリティ総研・松下次男)

 

一方で、地域別にみると好不調の波があり、北米は成長が持続するものの、足元で一部アジア地域の減速感が目立つ。これに伴い中国やASEAN(東南アジア諸国連合)を主力市場とするところは影を落としつつある。

 

例えば、日産自動車は増収増益を達成するものの、通期の販売台数見通しを下方修正した。当初の400万台予想から370万台、さらに今回355万台見通しへと引き下げた。

 

そうしたなかで課題に挙げたのが中国市場で、スティーブン・マーCFO(最高財務責任者)は決算会見で中国市場での販売戦略を見直し、日産が強い地域に販売を絞り込む作戦へと変更を進めていると話した。

 

北米や欧州ではバッテリー電気自動車(BEV)の販売に一服感が出ているものの、中国市場では新エネルギー車(NEV)の比率が着実に高まっている。このため、日産も販売台数を大きく落とし、再構築が迫られていた。

 

マーCFOは「沿岸地区はNEVの比率が高いが、内陸部はそこまで進んでいない」としてブランド力のあるICE(内燃機関)車で攻勢をかける方針。加えて、2024年度に投入する新たなBEVで巻き返しを図る考えだ。

 

三菱自動車も中国からの撤退に伴う中国事業改善費用の計上に伴い第3四半期および通期の最終利益を減益、減益予想とした。

 

全体を見ると、各社の収益を大きく押し上げたのが北米市場。インフレや金利上昇の懸念から景気減速の見方も出ていたが、自動車市場に関しては米国は成長が持続。しかもBEVが頭打ちになる一方で、日本メーカーが得意なハイブリッド車(HV)が伸びるなど、日本車の追い風となった。

 

トヨタは営業利益4兆円超。通期で4・9兆円の営業利益を目指す

 

このため、トヨタ自動車はHVを中心に全地域で販売を伸ばし、第3四半期の営業利益が4兆円を超えた。通期でも5兆円に迫る4・9兆円の営業利益を目指す。

 

ただし、認証試験の不正に伴うダイハツ工業、豊田自動織機の出荷停止の影響を盛り込むなど、通期の連結販売台数は前回見通しから15万台引き下げ、945万台へと下方修正した。

 

ホンダも米国の堅調な需要や日本での生産回復から四輪車の販売が増加するなど第3四半期累計決算で1兆円を超える過去最高の営業利益を達成した。通期も1兆2500億円の営業利益を見込む。

 

決算会見した藤村英司執行役最高財務責任者は四輪事業の売上高営業利益率も4・6%に高まったとしつつも二輪事業の強み、収益率の高さを強調。長年培ってきたブランド力から一部アジア地域での落ち込みをブラジルや欧州でカバーし、二けたを超える高い収益力を確保しているとアピールした。

 

中国事業については、前年比で四輪車の販売を伸ばすものの、以前の高い水準には戻っていない。今年度の中国の四輪車販売台数は113万台へと3万台引き上げた。

 

また、生産工場についても新たに建設中の二つのBEV専用工場を加えると、ホンダの中国の生産能力は年間170万台となり、適正規模としている120万台水準から余剰感が生じ、対応が必要とした。

 

加えて、相次ぐ品質や認証不正に問題についても強化を図る考えを示した。これまでもホンダは現在も認証部門を独立させていたが、4月からはさらに機能本部へと格上げし、ガバナンスを一段と高めていく方針を打ち出す。高水準の需要が続く米国市場はマツダやスバルの決算内容にも反映した。

 

アセアン地域での苦戦で戦略の立て直しも課題に、物流にも制約

 

マツダのジェフリー・エイチ・ガイトン専務執行役員兼CFOは決算説明会で米国での販売増加は体質改善にも寄与し、ラージ―商品の効果と並んで9カ月累計決算の「すべての利益項目で過去最高を達成した」と強調した。

 

中国市場でも回復を見せており、3四半期連続して販売台数が増加。事業展開では11月に電動化事業本部を発足し、電動化のリソースを集中させ、研究開発を加速させる。

 

さらに今年2月、6年振りにロータリーエンジン開発グループを復活させた。この狙いについてガイトン氏はコンパクトなエンジンであり「レンジエクステンダーEVに生かせるほか、カーボンニュートラル燃料にも対応できる」と述べるとともに、EVシフトに頭打ち感の出ている米国では「HVも有効だ」との見方を示した。

 

米国の販売比率が高いスバルは生産回復にあわせ、米国向けの出荷を増やし、2022年8月から17カ月連続で前年越えの米国販売を記録した。この結果、営業利益は3710億円と大幅増益となり、通期見通しも上方修正した。スバルの米国向けの出荷比率は約7割に達する。

 

一方で、堅調に推移する米国市場はインフレとも相まって販売奨励金(インセンティブ)の上昇を招いているほか、物流にも制約が出ている。日産は「メキシコから米国への物流が滞り」(マーCFO)、米国市場の伸びを十分に生かせなかった。

 

スズキは主力のインド市場や日本、欧州で四輪車の販売が増加し、収益を押し上げ、9か月累計決算で過去最高の売上高、利益を達成した。

 

とくにインドは2023年暦年の総販売台数が508万台に達し、前年に続き世界第3位の規模を確保。これに伴いスズキも出荷台数に加え、9カ月累計のインドの売上高、営業利益が過去最高となった。

 

懸念の原材料費上昇は一段落、半面、インフラや円安が経費圧迫要因に

 

各社にとって懸念となっていた原材料費の上昇は一段落。ICEの触媒などに使用する貴金属類は需要が減少していることから下がりつつあるという。半面、インフラや円安などの経済情勢が経費圧迫要因となっており、これをコスト低減活動や為替換算でカバーしているのが実態だ。

 

商用車メーカー2社の連結業績は先進国向けの販売台数が伸びたものの、アジアなどの新興国の市況悪化が響き、9カ月累計の販売台数は前期を下回った。

いすゞはタイのライトトラックの全需の大幅な落ち込みが響いたが、価格対応や円安影響、アフターセールス伸長などから9カ月累計の売上高、利益項目とも過去最高となった。

 

日野自動車は一部車両の出荷再開により国内や米国で販売を伸ばすものの、主力市場のタイ、インドネシアの減速が響いた。また最終損益は日野工場西側土地の売却などにより赤字幅を大きく縮小した。

2024年3月期の通期見通しを上方修正したのはトヨタ、ホンダ、スバル。日産、スズキ、マツダ、三菱自、いすゞ、日野は前回見通しを据え置いた。

 

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。