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2024年5月17日【事業資源】

自律走行AIの輝翠TECH、シリーズA資金調達を実施

坂上 賢治

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Adamと輝翠メンバー

 

オフロード自律走行AIロボット「Adam」の開発を手掛ける輝翠TECH(本社:宮城県仙台市、代表取締役CEOタミル ブルーム)は5月17日、環境エネルギー投資を引受先とする1.5億円のシリーズA調達を実施した。

 

同社では、これによりAdamの機能を追加し、より多くの農家に役立つようにすると同時に、要望の多い建設などの非農業用途に適応させることも可能となる。またAdamが農場で多様な仕事をこなすためのアタッチメント(作業ユニット)の開発と普及を更に推進していくとも述べている。

 

ちなみにAdamは、オフロードを自律走行するAIロボットであるが、同車は、屋外果樹農家にとって実用的なロボットが存在しなかった日本国内に於いて、農家の経営の持続性を高め、より多くの利益をもたらす車両として期待されているもの。

 

オフロード自律走行AIロボットの「Adam」

果樹園にてAdamの自動走行の様子

 

また輝翠TECHは、2021年9月にアメリカ出身のタミル・ブルームによって設立されたオフロード自律走行AIロボットのスタートアップ。

 

CEOのブルーム氏は、UCLAで航空宇宙工学の修士号を取得後、スペースXで実績を積み、AeroVironmentのGNC Controlsでインターンとして、軍用ドローン技術開発に取り組んだ。

 

その後、東北大学航空宇宙工学の博士課程にて、コンピュータビジョンなどの先進的なAI技術を月面ローバーに適用し、複雑なオフロード地形を安全に走行できるよう研究に専念してきた。

 

Adamと第一号購入者である葛西氏

 

輝翠という社名となった理由は、そのブルーム氏が旅先で日本の美しい田園風景に魅了されたと同時に、高齢化、労働力不足、農作業の身体的負担などの厳しい現実を目の当たりにし、オフロード月面ローバー技術の専門知識を農業への応用できるのではないかと考えたことから新会社の社名として命名。

 

企業設立以来、15以上の異なる国籍の仲間、約25人のプロフェッショナルなメンバーと、革新的な発明を起こすとともに、国内展開そして海外展開も進めている。

 

輝翠TECHによる資金調達の用途は以下の通り

 

1. Adamの製造
この資金調達により、輝翠はAdamを量産し、日本全国の農家へ展開する端緒とする。また、Adamの機能を追加し、より多くの農家に役立つと同時に、建設などの農業用途外への適応も実現していく。

 

2. アタッチメントの開発
これに加え、Adamが農場で多様な仕事をこなすための作業ユニットの開発と普及を更に推進していく。

 

3. チーム強化
UIUX、事業開発/国内営業などより多くのプロフェッショナルかつ世界の農業や一次産業などを豊かにしたいという仲間を募る。

 

活躍の舞台として想定されるEUのブドウ園

同EUのオレンジ畑

同アメリカのブドウ園

同SEAのパーム油田

建設現場でのAdam

 

輝翠TECHが想定する農業が直面する課題は以下の通り

 

課題
労働力不足と高齢化:世界的な労働力不足と高齢化が、農業の生産性や持続可能性に影響を与えている。若い世代が農業に興味を持たず、後継者不足も深刻な問題となっている。

 

気候変動の影響:気候変動が農業に与える影響は大きく、異常気象や気温の変動が作物の生育や収穫に悪影響を与えている。これは食料安全保障にも直接関係する。

 

技術革新への消極的な姿勢:伝統的な農業は技術革新を受け入れることに消極的な傾向があり、特に果樹園では機械の導入が遅れている。作業の複雑さや屋外条件の厳しさが、技術の導入を妨げてもいる。

 

革新的な解決策
農業技術の革新:近年、農業技術分野での革新が進んでおり、ロボット収穫システムや精密農業技術などが開発されている。これらの技術は効率性や生産性を向上させ、持続可能な農業の実現に貢献していく。

 

輝翠の「Adam」の役割:輝翠が開発する「Adam」は、農業の変革を推進する重要な役割を果たすことが期待されている。このシステムはオフロード環境での作業を支援し、農業従事者に新たな可能性を提供する。

 

革新的な解決策の必要性:世界人口の増加や農業への関心の高まりを受けて、革新的な解決策が求められている。技術とイノベーションを活用することで、農業技術のスタートアップが世界中の農家に持続可能性と繁栄の新時代をもたらすことができる。

 

今資金調達の引受先からのコメントは以下の通り

 

▼シリーズ A リード投資家

 

株式会社環境エネルギー投資
プリンシパル モビリティ事業創造室 室長 林 隆介氏
環境エネルギー投資は、輝翠のシリーズAラウンドに参加することを誇りに思います。輝翠のAdamは、革新的な電動オフロードモビリティローバーであり、様々な産業における電動化への重要な推進力になると確信しております。

 

この投資は、2006年から開始したクリーンテックイノベーションを支援するという私たちのコミットメントと完全に一致しています。Adamには、世界中で生活の質を向上させ、より清潔な地球に貢献する潜在能力があると信じています。そして、私たちのグローバルネットワークを活用し、輝翠の国際展開を支援するのを楽しみにしています。

 

▼既存の投資家によるコメント

 

スパークル株式会社 下里 健二氏
輝翠は、ビジョンを実現する過程で素晴らしい進歩を遂げました。 輝翠のメンバーとタミルさん、おめでとうございます! 輝翠の可能性を信じ続けてきた私たちは、会社が設立される前からその可能性を信じてきました。

 

特に、Adamの市場投入に成功した資金調達を見て、大いに喜んでいます。EEIという素晴らしい新しいサポーターが加わることを祝福し、私たちも 輝翠のスタートアップとしての旅を今後ともサポートし続けます。

 

XVC有限責任事業組合 飯野 将人氏
初期の投資家の一人として、私は輝翠がこの資金調達に成功にしたことを祝福します。2年前に投資した際は初期のプロトタイプが完成したばかりで、青森のリンゴ農家の問題を解決するために開発したロボットを提供するという彼の約束を守る様子を見守っていました。

 

私自身が驚嘆したのは、タミルが人々を巻き込む能力でした。彼が名門投資家EEIの支援を確保した事実だけでなく、あらゆる国籍の優れた学者やエンジニアのチームを引き付ける能力にも驚きました。この成功した資金調達により、輝翠は新たな段階に進むことができ、彼らが手に入れた新しい翼で飛躍すると確信しています。

 

株式会社ラック 又江原 恭彦氏
輝翠の資金調達の成功をお祝い申し上げます。人口が急減している日本では、解決すべき課題が数多くあります。その中で、農業の振興は重要な問題であり、輝翠の製品やソリューションが果たす重要な役割を認識しています。

 

私たちは、国内の様々な地域でのビジネス拡大、およびセキュリティやデータ統合インフラの観点から支援を提供することを検討しています。

 

 

これらを受けて輝翠TECHの代表取締役、Tamir Blum氏 (ブルーム タミル)は、「私たちは、EEIという素晴らしい投資家を見つけることができ、大変嬉しく思います。EEIは重要な環境問題の解決に焦点を当てており、中でも林さんはモビリティおよび自動車産業での長年の経験を持っています。

 

私たちはEVのオフロードモビリティプラットフォームを構築しており、EEIは私たちの成長を加速させるてくれると考えています。この資金調達を終えることで、まずは日本で製品を発売し、その後新しい市場に適応させるためのリソースを得ることができます。農業はどこでも生活の中核ですが、世界中の農家は苦境に立たされています。

 

Adamはそんな農家さんを支援することができ、来年までに我々の潜在能力を示すために最善を尽くします。農業や建設などの主要産業を支援することで、経済活性化を通じて都市と地方の間の不平等を減少させながら、大きなグローバル市場に対処することができます。多くの障害を避けなければならないオフロードによる移動は簡単ではありませんが、私たちは世界的な専門家チームを集め、革新的な技術を提供する準備ができています」と述べている。

 

輝翠TECHの経歴と受賞歴

2024
1月: 豊橋農業コンテストにて最優秀賞およびイノベーション賞を受賞
1月: 日本の内閣官房YouTubeチャンネルに特集される
3月: 最初のAdamユニットが予約購入され、納品される。約12通の意向書が受け取られる
4月: FOOD 4 FUTURE – EXPO FOODTECH World Summit: The Best Robotics Solutionのファイナリストに選出
5月: TiE Silicon Valley TiECON TiE50にて賞を受賞
5月: Future Food Asia Awardのファイナリストに選出
支援を受けているプログラム: 輝翠は、地方および政府のさまざまな機関および組織から支援を受けている。
地方: 仙台、青森、柏、福島、千葉、群馬、愛知、豊橋、山梨、広島、浜松、宮城
政府: 農林水産省、総務省

 

2023
3月: 輝翠と創業者がJETROによって特集され、多くの外国投資家を日本に呼び込む
4月: 初めてAdamが青森でのパイロットプログラムの一環として有料で顧客に提供される
9月: Adam Version 8がリリース
9-11月:収穫期間中に約40の農家がAdamを使用
10月: NHKグローバルの「Farm-bot to the Rescue!」で特集される
6月: Japan Agriculture (JA) アクセレータープログラムに採択
Forbes Asia 30 Under 30 と Forbes Japan Rising Star にて賞を受賞
J-Startup Tohoku にて賞を受賞

 

2022
4月: Adam version 2 がリリース
9-11月: Adam version 2 とversion 3 が青森で収穫期間中にテストされる
MIT Tech Review Japan Innovators Under 35 にて賞を受賞
French Business Awards French Tech Awardにて 賞を受賞

 

2021
4月: 輝翠最初のプロトタイプを作るためのクラウドファンディングキャンペーンを開始
9月: 輝翠正式に設立され、最初のプロトタイプが福島県の農家と共にテストされる
10月: 愛知県の「Accelerate Aichi by 500 Startup」(現在では「Accelerate Aichi by 500 Global」として知られる)のアクセラレータープログラムに採択。青森の農家を初めて訪問。
JAアクセラレーター・AgVenture Labにてイノベーション賞を受賞

 

会社概要
会社名:輝翠TECH株式会社
本社所在地:宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉468-1 東北大学マテリアル・イノベーション・センター青葉山ガレージ内
開発センター:〒277-0861 千葉県柏市高田1240−15
代表者:代表取締役 Tamir Blum (ブルーム タミル)
設立:2021年9月
事業内容:AIアグロボット、画像認識、データサイエンス
URL:https://kisuitech.com/

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

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1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。