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2022年8月10日【企業・経営】

国内自動車メーカーの1Q決算、厳しい内容に

松下次男

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半導体不足、上海のロックダウンに伴う部品の供給不足、資材高騰が響く

 

上場自動車メーカーの2023年3月期第1四半期(4~6月)連結決算が8月10日のホンダの発表で出揃った。それによると需要は堅調なものの、半導体や部品の供給不足に伴う減産や資材高騰が響き、多くが減益、赤字となった。(佃モビリティ総研・松下次男)

 

2023年3月期の通期見通しについては、第1四半期で落ち込んだ生産台数を第2四半期以降にかけて挽回する方針を示し、ほぼ全メーカーが期初の計画どおりの生産、販売台数を目指す。

 

これに加え、円相場がドルやユーロに対し、大きく円安に振れこともあり、通期見通しを上方修正するところが目立った。同時、先行きの不透明感から期初予想を据え置くところも少なくない。

 

23年3月期第1四半期の業績をみると、半導体の供給不足に加え、上海ロックダウンや南アフリカの洪水など想定外の案件が発生し、計画どおりの生産ができないところが相次いだ。

 

個別にみると、トヨタ自動車は連結販売台数が前年同期比6・3%減、トヨタ・レクサス販売台数が7・9%減となった。ホンダはグループの四輪車販売台数が同18・3%減となったが、二輪車がアジア市場の回復で9・6%増となった。日産自動車は小売台数が同22%減少した。

 

マツダや三菱自動車も半導体不足などの影響で同34%減、同6%減となったが、逆にスズキ、スバルは前期の第1四半期に大幅に落ち込んだ分、販売台数を増やした。

 

生産は下期にかけて挽回を表明、通期は円安もあり、上方修正が相次ぐ

 

スズキは主力市場のインドで増加し、第1四半期の四輪車世界販売台数は同13・9%増を達成。ただし、日本や欧州では半導体不足などの影響から販売台数が減少した。スバルも重点市場の米国を中心に、同11・7%増の販売台数となった。

 

さらに今期第1四半期は前年度から続く資材高騰の影響も響いた。トヨタは例年なら資材高騰分を原価改善の努力でカバーするが、今第1四半期は資材高騰が3150億円に達し、原価改善の400億円を打ち消した。

 

ホンダも今期、期初に比べてインフレなどにより「600億円のコストアップ」(竹内弘平代表執行役副社長)を見込む。

 

こうした中、メーカー各社の今第1四半期の業績は販売台数こそ減少したものの、上級車種・グレードの比率を高めるなどの車種構成を活かし、売上高(売上収益)で増収を達成するところが相次いだ。

 

一方、利益面では販売台数減や資材高騰が響き、減益決算となったところが目立った。
トヨタ、ホンダ、日産の3社は増収減益。スズキ、スバル、三菱自は増収増益を確保した。唯一、出荷台数減少が大きく響いたマツダは減収とともに、営業損益で赤字となった。

 

これに対し、23年3月期の通期見通しでは、各社とも第1四半期の減産分を下期にかけて挽回する考えを打ち出し、大半が販売台数計画を据え置いた。

 

トヨタは通期の連結販売台数見通しを885万台、トヨタ・レクサス生産台数を970万台と5月発表時点と変えていない。

 

利益面では販売台数減や資材高騰が響き、減益決算となったところが目立つ

 

通期の連結決算見通しでは、為替レートを円安方向に見直したことで営業収益(売上高)を期初見通しから1兆5000億円、当期純利益を1000億円それぞれ上方修正した。営業利益は据え置いた。なお、このトヨタの数値には品質問題から今期の見通しを公表していない日野自動車の数値は含まれていない。

 

ホンダも為替状況やインフレ影響によるコストアップを反映し、売上収益で5000億円、営業利益で200億円、それぞれ期初見通しから上方修正した。四輪車販売台数見通しは420万台を据え置いた。

 

このほか、三菱自も売上高で600億円、営業利益で200億円、当期純利益で150億円をそれぞれ期初見通しから上方修正した。日産、マツダ、スズキ、スバルは期初予想を据え置いた。

 

いすゞ自動車、日野自動車の商用車メーカー2社の今第1四半期業績は、半導体不足などから国内の販売台数が大きく落ち込んだものの、重点市場のASEAN(東南アジア諸国連合)が回復し、堅調に推移した。

 

特にいすゞは小型トラックを伸ばすとともに、子会社化したUDトラックスの業績を取り込んだことで売上高が大幅な増益となった。営業利益は微減となった。通期見通しは据え置いた。

 

日野は増収を確保したものの、品質問題が響き大幅な減益となった。通期見通しは品質問題が解決していないこともあり、引き続き公表を見送った。

 

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。