NEXT MOBILITY

MENU

2022年6月14日【事業資源】

パナソニック、トヨタ系部品卸会社の共同配送を効率化

山田清志

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

トヨタモビリティパーツの共同配送の様子

 

パナソニックコネクトは6月14日、「配送見える化ソリューション」についての説明会を開催。同ソリューションを自動車関連部品・用品の卸売業を行うトヨタモビリティパーツ(TMP)に納入したと発表した。届け先の企業が異なる部品でも、運転手が専用端末で荷物のバーコードを読み込むことで、管理者は配送状況や作業をパソコンからリアルタイムで把握でき、業務の効率化が図れるというもの。パナソニックコネクトでは、このソリューションを自動車関連以外の業界にも広げていこうと考えている。(経済ジャーナリスト・山田清志)

 

ベルギーのソリューション企業を買収

 

パナソニックコネクトはパナソニックホールディングス(HD)傘下の事業会社で、主にB2Bソリューション事業を手がけており、従業員はグローバルで約2万8500人、売上高は9249億円。「現場から社会を動かし、未来につなぐ」を企業としての存在意義に掲げ、オートノーマスサプライチェーンの実現を目指している。

 

トヨタモビリティパーツの共同配送概要

 

「今回、TMPがドライバー不足やCO2削減をはじめとする環境保全などの課題を背景に、自動車メーカーの垣根を越えた補修用部品・用品の共同配送の検討を促進する中で、部品の配送管理システムとして導入することになった」とモバイルソリューション事業部の里平利彦主幹は話す。

 

TMPは全国33社のトヨタ部品共販とタクティーが統合し、2020年4月に発足。修理部品や用品を企画・販売、配送などを手がけている。同年6月からダイハツ工業やSUBARU(スバル)などと整備部品の共同配送を順次開始しており、その配送を効率化するためにパナソニックの「配送見える化ソリューション」を導入。まず栃木支社(栃木県壬生町)から稼働を開始し、22年4月から全国展開を進めている。

 

同ソリューションはもともとベルギーのゼテス・インダストリーズ社が開発したもので、1984年の創業以来、サプライチェーンのソリューションを手がけてきた。世界30カ国以上でビジネスを展開し、グローバルトップ500社のうち、80%の企業が何らかの形でゼテス社と関わっているそうだ。そのゼテス社をパナソニックが2017年に買収した。

 

タフブック画面(ドライバー端末)

 

当時、パナソニックは「タフブック」という端末を販売していたが、売り切りの商売だけでなく、端末にソフトを組み合わせたビジネスを模索していた。そこで、ゼテス社が提供していた配送現場プロセスの可視化システム「ゼテス クロノス」に目をつけ、買収することにしたわけだ。

 

食品物流の現場にもソリューションを提供

 

これによって、ドライバーが持つタフブックと運行管理者のPCをクラウドサーバーで相互に連携できるようになり、配送状況をリアルタイムで把握することが可能になった。「アナログの現場の情報をデジタルに変換することをゼテスが担っている」とモバイルソリューション事業部の計盛大課長は述べ、「ビジネスモデルとしては、パナソニックが狙っているリカーリングビジネスで売上高の4割を占めている」そうだ。

 

しかし、今回の導入を巡ってはいろいろと試行錯誤があった。共同配送では、各社が使用しているシステムが違い、ラベルなど現場運用が異なるため目視検品の運用となり、ミスに繋がりやすくなることが課題だった。そこで、各社のシステムとラベルをトヨタ標準出荷ラベルに統一することで一元管理を可能にし、他社の部品も自社配送管理システムで管理できるようにした。

 

里平利彦主幹(左)と計盛大課長

 

その結果、運行管理者は配送状況についての問い合わせにすぐ応えられるようになり、またドライバー端末でバーコードの読み取りによってデジタル化したことで誤配送の防止にも役立っている。

 

「物流関係のお客と話していると、ドライバー不足の問題に対する緊迫感をひしひしと感じる。人手不足の対策をシステムで補うことがさらに重要になってくると思う。当社は今後も、ゼテス社の技術力と、サプライチェーンの現場で培ってきた技術力、サービス・サポート力を組み合わせ、物流現場の課題解決と新たな価値提供を目指していく」と里平主幹は話す。

 

TMP以外にも、食品や酒類、コンビニエンスストアなどの物流の現場ですでに配送見える化ソリューションが導入されているそうだ。

 

CLOSE

坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。