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2023年5月10日【ESG】

欧州金融勢力、トヨタへ気候変動対策に係る株主決議を提出

坂上 賢治

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カミル・ザビエルスキー氏、ストアブランド・アセット・マネジメント社持続可能投資責任者

 

北欧金融グループのストアブランド(STB/Storebrand)は5月10日、株主3社がトヨタ自動車に対して、来たる6月の年次株主総会に向けて気候変動ロビー活動に係る決議案を提出するとしたプレスリリースを発表した。

 

ストアブランドは自らを、人々と企業にセキュリティの強化と財務上の健全性を提供する北欧の金融グループであるとし、自社は持続可能なソリューションを提供し、お客様が将来に向けて適切な経済的意思決定を行えるよう奨励する。私たちの目的は明確だ。それはより明るい未来を創造することにあると語っている。

 

そんなストアブランドには約40,000の法人顧客、200万の個人顧客がおり、1兆800億ノルウェークローネを管理。グループはノルウェーのオスロ郊外のライサケルに本社を置き、オスロ証券取引所に上場している。

 

なお今回のトヨタ自動車への提言は、デンマークの年金基金であるアカデミカーペンション(運用資産200億米ドル)、ノルウェーの金融サービス会社ストアブランド・アセット・マネジメント(運用資産1,200億米ドル)およびオランダの年金投資会社APG(運用資産 6,000億米ドル)が主導した。

 

その根拠として自動車ビジネスが気候危機にどのような影響を与えているかについて分析を行う独立系シンクタンクのインフルエンスマップの調査結果を挙げた。

 

このインフルエンスマップは、トヨタ自動車を気候変動ロビー活動に最も否定的な企業の1つとしてランク付けしているシンクタンクで、これを受けてストアブランド・アセット・マネジメントのサステナブル投資責任者を務めるカミル・ザビエルスキー氏は、「パリ協定には、国家レベルでの強力な規制が必要だ。企業や業界団体は、政治的影響力を利用して気候政策を阻止し、緊急の気候変動策実施のペースを遅らせるべきではない。

 

トヨタ自動車は日本の大手自動車会社として、あらゆる地域を介して一貫した関与策を実施すべきであり、それは気候変動に関わる我々の利益に沿ったものであるべきだ。トヨタ自動車は、長期に亘る気候変動に係る積極策を推し進めていくべきであると信じている」と述べた。

 

続いてアカデミカーペンションのアンデルス・シェルデ最高投資責任者 (CIO)は
「トヨタ自動車と2年以上に亘るコミュニケーションを経たにも関わらず、依然として同社と合意点に達することが出来ていない。

 

インフルエンスマップは、トヨタ自動車・経団連・自工会などの企業団体がパリ協定の目標に沿うまでには、まだ長い道のりがあることを示唆した。

 

これは投資の観点からは、トヨタがEV販売拡大による利益を逃し、貴重なブランドを危うくし、世界的に出遅れた現在の立場を進んで受け入れているのではないかと懸念している。

 

私たちは長年の対話結果と年次開示に期待した。しかしトヨタ自動車が多くの投資家達を充分に納得させるためには、より具体的な経営上の政策変更と、データに基づくより良い見直し策が必要だ」と話す。

 

最後にAPGアセットマネジメントのハーマン・スロイジャー最高情報責任者(CIO)は、「トヨタ自動車は日本株式会社である。そんなトヨタ自動車は世界最大の自動車メーカーであるゆえに同社のEVへの移行を加速させることは、ビジネス上の競争力を高めるだけでなく、自動車産業の発展を後押しするためにも極めて重要である。

 

そもそもトヨタ自動車は、日本のものづくりと経済を牽引する日本の自動車産業全域に於いて中核的な役割を果たしている。したがって、同社が業界団体、規制当局、サプライチェーンと主導的な立場と姿勢を示すことが日本経済の脱炭素化だけでなく、日本の持続可能な経済成長と雇用創出にとっても重要であると考えている。

 

私たちはトヨタ自動車に対し、特に一部の関連会社に於ける最近の排ガス不正表示問題などもを考慮して、私たちの提案に基づいて持続可能性開示の透明性を強化し、高めることを奨励する。これはトヨタ自動車の二酸化炭素削減への取り組みと戦略に対する投資家の信頼を回復するために重要である」と結んでいる。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。