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2023年1月20日【ESG】

アウディが描く対日電動化戦略の全貌

山田清志

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アウディ ジャパンは1月20日、東京・白金台の八芳園で年頭会見「Audi New Year Press Conference 2023」を開催。2022年の状況を振り返るとともに、23年の対日電動化戦略を明らかにし、電気自動車(BEV)でプレミアムブランドのナンバーワンを目指していくという。その電動化戦略とは。

 

23年はBEVの販売構成比を3倍の12%に

 

 

「2022年は半導体不足との戦いの1年だった。販売台数は前年割れで、思ったよりもクルマがつくれなかった。クルマをつくる難しさを、アウディに入って22年目だが、初めて知った。その中で、『Q4 e-tron』というBEVを投入できたことは、アウディブランドとしては画期的な瞬間だった。トータルの台数は808台ということで大きな数字ではないが、BEVの販売構成比が1.4%から約4%になった」とブランド ディレクターのマティアス・シェーパース氏は流ちょうな日本語で振り返った。

 

 

アウディの22年における日本国内販売台数は前年比7.9%増の2万750台だった。多くの自動車メーカーが半導体不足に悩まされ、販売台数が前年を下回った。ただ、BEVの販売はシェーパース氏が言うように2倍以上の伸長で、「Q4 e-tron」は11月の発売以来、2000台を超える受注が入っているという。

 

「23年はまず2000台以上の受注をお客様に納める。そして、1700万円のスポーツモデルの『 e-tron GT』は納期が1年待ちになっており、日本でも高額な電気自動車が売れるということをドイツ本社も理解したので、供給がさらに増えることになる。さらに23年はハイエンドモデルの『Q8 e-tron』が登場する」とシェーパース氏は話し、BEVの販売構成比を3倍にして、最低でも12%に持って行く計画だという。

 

 

150kWの急速充電器を102店舗全店に設置

 

また、シェーパース氏は「日本市場におけるキーは急速充電の拡充だ」と力説し、全国の販売店にすでに設置されている50基の50kW~90kW急速充電器をより大出力な150kW急速充電器を置き換える。これまでに150kWの急速充電器を設置した52店舗52基と合わせて合計102店舗102基にすることで急速充電ネットワークをさらに拡大する。

 

 

さらに、ドイツ・ニュルンベルクやスイス・チューリッヒに設置されているアウディの都市型充電コンセプトである「Audi charging hub」を欧州以外では初めて東京に設置する。これによって、自宅で充電できない都市部居住のユーザーに対して利便性を大きく広げ、新たなライフスタイルを提供していくことになるという。

 

「アウディがナンバーワンのプレミアムBEVブラントとなる目標に向けて一歩ずつ着実に前進し、これまで以上にお客様に e-tronを選んでもらえる環境をつくっていく」とシェーパース氏は強調する。

 

 

その達成に向けて、同日に大型蓄電池の製造・販売を手がける新興企業、パワーエックスと充電に関する事業提携の基本合意書を締結したことを発表した。アウディはパワーエックスが開発する超急速充電器「Hypercharger」を日本国内のアウディ e-tron店へ導入すること、両社が共同で日本国内へのAudi charging hubの設置運営に関して協議・検討していくことを明らかにした。

 

 

パワーエックスの伊藤正裕社長は「BEVは電源が非常に重要。本来の環境メリットを発揮するためには、電気がクリーンである必要がある。

 

 

今の日本の再エネの利用状況と昼板の電源構成、特に多くの方が充電される夜間は火力が電源構成の大半を占めることを考えると、蓄電池を使って再エネを貯めてBEVに充電することが大切。また、日本は集合住宅比率が高いことから経路充電のニーズが高く、外出時に短時間で充電できることがこの先とても重要になる」と説明する。

 

 

2025年に内燃エンジンを搭載した最後のニューモデルを生産し、26年から新たに発表するモデルはすべてBEV、そして33年には内燃エンジンの生産停止(中国を除く)をすると宣言したアウディ。ハイブリッド車(HEV)化比率が高く、BEV化が遅れている日本で、急速充電インフラの拡充などアウディが進める電動化戦略は注目されそうだ。

 

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。