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2024年3月26日【事業資源】

独・VWグループ、モービルアイとの協力関係を強化

坂上 賢治

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フォルクスワーゲン ジャパンは3月26日、独・フォルクスワーゲングループとモービルアイが協力して新たな自動運転機能を新型量産車へ導入する計画を推し進めるなど、今後も互いの技術連携を強化していくこと(本国発表は3月20日/独・ウォルフスブルグ&エルサレム発)を明らかにした。

 

そうした体制固めを確かなものとするべく、独・フォルクスワーゲングループは目下、数多くのパートナー企業と戦略的な協力関係を推し進めており、目下、その中核に据えているのは自動運転及び自律運転領域だという。

 

より具体的には自動運転領域に関して、特にモービルアイ(Mobileye)とのパートナーシップを強化。両社は共に革新的な自動運転機能を量産車両に対して導入する準備を加速化させたい構えだ。

 

そもそも両社は、長らく先進運転支援システムで密接な技術協力体制を敷いてきた。そうした経緯を踏まえてモービルアイは、フォルクスワーゲングループ内で、まずは安定性の高いレベル2の自動運転機能(部分自動運転)を提供する予定だ。

 

同技術水準でドライバーは、ステアリングホイールから手を離すこと自体が許可される。但し交通状況には、注意を払いつつ、いつでも自身が運転に介入できるように備えておかなければならない。

 

一方で両社は、将来のレベル3自動運転機能(高度な自動運転)でも、これまで以上に協力関係を深めていく。このレベル3の段階では指定されたエリアで、車両が一時的に全ての運転操作を担えるようになり、ドライバーは自動運転機能を継続的に監視する必要がなくなる。

 

また両社は将来的に、フォルクスワーゲングループ傘下のアウディ、ベントレー、ランボルギーニ、ポルシェの各ブランドへ、これら自動運転技術を投入することを介して、全パワートレイン・全車両タイプの個々モデルのポートフォリオ毎に、車格に適したプレミアム指向の運転機能を迅速に導入する予定としている。

 

これらの自動運転機能では、許可されたエリアと条件で複数車線の高速道路上での自動追い越し、赤信号や一時停止標識での自動停止、交差点やロータリーでのサポートなど高速道路だけでなく、市街地走行のための高度な支援システムが含まれる。

 

更にモービルアイは、自動運転用の高度なテクニカル コンポーネントをフォルクスワーゲンの商用車ブランド向けにも提供する構えだ。これはレベル4(完全自動運転)を視野に据えたソフトウェアとハードウェアとの組み合わせになる。

 

実際、フォルクスワーゲン グループ傘下のフォルクスワーゲンADMTは、フォルクスワーゲンID. Buzz.(アイディ. バズ)をベースにした電気自動車プラットフォームに、同技術コンポーネントを実装するべく開発を進めている。

 

なお導入を進める当該技術は、フォルクスワーゲン傘下のカリアド(Cariad)が開発したソフトウェア アーキテクチャーをベースに完全独自の社内システムを磨いていく。またその一方で自動運転技術の共有では、ボッシュ(Bosch)、クアルコム(Qualcomm)、中国のホライズン・ロボティクス(Horizon Robotics)とのパートナーシップも併せて引き続き重視していく。

 

こうした将来的な技術開発に於いては、社内で開発すべき技術と、外部企業とのコラボレーションによる課題解決の方が得策かを明確に分離して取り組むとしており、この技術毎の棲み分けによって開発プロセスが合理化され、協力企業との連携に関して開発過程の複雑さが軽減されるとしている。

 

例えばプレミアム指向のアーキテクチャー開発では、モービルアイなどのパートナーと協力し迅速な車両実装を進めて行く一方で、長期的視野で取り組んでいくべきソフトウェア環境上の開発過程では、子会社のカリアドとの連携・強化・統合を計画。

 

そのカリアドではBEV専用の拡張性の高いシステム開発に臨み、これを自社グループのスケーラブル システムズ プラットフォーム(SSP)に統合させていく構えのようだ。

 

こうした取り組みについてフォルクスワーゲン グループ並びにポルシェAG最高経営責任者(CEO)を務めるオリバー ブルーメ氏は、「私たちの目標は、最先端のテクノロジーを備えた優れた製品を世界中のお客様にお届けすることです。

 

新しい自動運転機能により、利便性と安全性が大幅に向上します。私たちのブランドや製品に合わせたこれらの機能により、あらゆるドライブを、これまで以上にパーソナライズできるようになります。私たちは、一流のパートナー企業のモービルアイとともに、この自動車の未来を一緒に形成していきます」と述べている。

 

これを受けてモービルアイ社長兼CEOのProf. アムノン シャシュア氏は、「私たちはフォルクスワーゲン グループと緊密に連携して運転の未来を、より安全に、より自動化し、より価値あるものにすることに誇りを持って取り組んでいます。

 

フォルクスワーゲン グループは、これらのプログラムを通じてAIを活用した先進運転支援技術を世界中の消費者に提供し、自動運転車による新しいサービスを開発するという点で業界をリードしていくことになるでしょう」と両社の協力関係とそこから得られる成果について説明した。

 

 

最後にフォルクスワーゲン グループ研究開発責任者でポルシェAG研究開発担当取締役を兼任するミヒャエル シュタイナー氏は、「私たちは、お客様重視の姿勢を更に強化すると同時に運転支援システムの開発戦略を大きく強化して行き、信頼性の高いシステムの供給体制の確立を目指すべく注力して行きます」と結んでいる。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。