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2022年4月12日【事業資源】

ホンダ、四輪電動ビジネスの取り組みで会見

松下次男

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今後10年間(2030年まで)で電動化・ソフトウェア領域に5兆円を投資

 

ホンダは4月12日、EV(電気自動車)戦略を中心に、四輪電動ビジネスに関する記者会見を開いた。この中で、三部敏宏社長は電動化ビジネスに向けてエンジンからバッテリーという単純な置き換えでない「多面的、多元的なアプローチが必要」と述べ、電動化・ソフトウェア領域に今後10年間(2030年まで)で約5兆円(研究開発費全体では約8兆円)を投資することを表明した。(佃モビリティ総研・松下次男)

 

 

1年前の社長就任会見で三部社長は2040年の脱ガソリン車を宣言。今回の会見はその新体制下での進捗度、ロードマップを示すものだ。
具体的な展開では、2030年までにグローバルで30機種のEVを展開し、EVの年間生産台数200万台超を目指す。青山真二執行役専務は全体の生産台数は500万台前後としたうえで、30年までに生産の「約4割をEVにする」考えを示した。

 

日本では2024年前半に商用の軽EVを100万円台で投入し、その後、パーソナル向け軽EV、SUVのEVを適時投入する方針だ。
軽商用EVから投入するのは、日本は他地域に比べてハイブリッド車(HV)の普及率が高いことや具体的なEV目標が定まっていないことから、まず配送業など稼働率の高いプロフェッショナルの領域で展開し、認識度を高めていくためだという。

 

北米では、米GMと共同開発で中大型クラスEVを2024年に2機種投入

 

北米では、米ゼネラル・モーターズ(GM)と共同開発した中大型クラスEVを2024年に2機種投入。さらに2027年以降、共同開発のガソリン車と同等レベルの競争力を持つ量販価格帯を販売する。
EV普及で先行する中国では現地の独自開発車でスピーディに対応し、2027年までに10機種のEVを投入する。

 

また、生産体制についても中国で武漢のほか、広州にもEV専用工場の建設を計画。さらに北米でもEV専用生産ラインを設置する考え。
EVの重要な調達部品となるバッテリーでは、まず液体リチウムイオン電池について地域ごとに安定した調達を確保する地産地消で取り組むとし、北米ではGMから「アルティウム」を調達するほか、別途に現地生産の新たなバッテリー生産の合弁会社設立を検討する。

 

中国では、CATLとの連携を強化し、日本では軽EV向けに中国系のエンビジョンAESCから調達する。
さらに全固体電池についても約430億円を投資し、栃木県さくら市に実証ラインを2024年春に立ち上げる。青山専務は同電池について「ラボレベルでは開発を完了している。このため、実証ラインで量産化を検証する」としたうえで、2020年代後半に投入するモデルへの搭載を目指す。

 

 

EV向け「ホンダ e:アーキテクチャー」を採用した商品を2026年から投入へ

 

また、EV普及期にあわせてEVのハードウェアとソフトウェアの各プラットフォームを組みあせたEV向け「ホンダ e:アーキテクチャー」を採用した商品を2026年から投入する計画だ。
これはEVのハードとクルマの機能を後から進化させるために必要なOTA(オーバー・ザ・エア)の基盤となる電子プラットフォームを組み合わせたもので、車両販売後もユーザーとつながり、様々なサービス、価値の提供を目指す。

 

青山専務はホンダ e:アーキテクチャーについてホンダ独自のOSとしながらも、開発に当たってはそれぞれ専門のIT企業と連携するほか、先に発表したソニーとの共同事業からのシナジー効果にも期待感を示した。
ちなみにソニーとの合弁会社では「モビリティの概念の拡張への挑戦」を掲げて、2025年を目標に両社の強みを融合したソフトウェアファインドな高付加価値モデルと投入するとした。

 

こうした電動化を加速するために、ホンダは今後10年間に研究開発費として約8兆円を投入する計画。このうち、電動化・ソフトウェア領域に約5兆円投入する。
さらに「新領域」や「資源循環」などを含む新たな成長の仕込みに今後10年で約1兆円を投入するほか、将来有望な先端技術やビジネスモデルを持つスタートアップ企業などに年間100億円規模で出資する考えを示した。

 

 

2030年までの「売上高営業利益率(ROS)7%以上は十分達成できる

 

財務担当の竹内弘平取締役代表執行役副社長は目標とする10年間について「2021‐2030年」との見方を示したうえで、外部調達なども積極的に活用する方針を示した。このため、3月には27・5億米ドルのグリーンボンドを発行。
また、既存事業盤石化の実行や全方位での費用削減の取り組みから事業体質は改善しているとし、2030年までの中長期目標として「売上高営業利益率(ROS)7%以上は十分達成できる」とも述べた。

 

ホンダはこうした電動化戦略を加速させるために今年4月に組織変更を実施。従来の二輪、四輪、パワープロダクツの製品ごとに分かれた組織から、電動商品、バッテリー、エネルギー、水素などやそれらを繋げるソフトウェア、コネクテッド領域を取り出し、一つに束ねた新組織「事業開発本部」に再編した。
 併せて、三部社長はクルマを操る喜びを電動化時代にも継承するスペシャリティとフラッグシップの2つのスポーツモデルをグローバルへ投入すると表明した。 

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。