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2023年5月16日【企業・経営】

京セラが創業以来初めて中期経営計画を策定した狙い

山田清志

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京セラの谷本秀夫社長

 

京セラは5月16日、2026年3月期までの中期経営計画を発表した。売上高を2兆5000億円、利益率14%を目標に掲げ、そのために3年間で最大8500億円の設備投資を行う。このうち4000億円が半導体関連の投資だ。実は京セラが中期経営計画を策定するのは創業以来初めてで、そこにはどんな狙いがあるのか。(経済ジャーナリスト・山田清志)

 

今後は先取りして半導体の成長を取り込む

 

京セラはこれまで中長期の経営計画を策定したことがなかった。それは創業者である稲盛和夫氏の考えに基づいている。長期にわたる計画を立てれば、その過程で必ず予測を超えた市場の変動や不測の事態が発生し、計画自体が意味をなさないものになってしまう。その結果、計画自体を放棄せざるを得ないような事態が往々にして発生する。

 

売上高の推移

 

それを見せられた従業員は「達成しなくていいのだろう」とたかをくくるようなり、経営者が高い経営目標や経営計画を掲げても、それに挑戦していこうという気持ちが薄れてしまうというのだ。そこで、京セラでは各事業部が1年間の経営計画を立て、それを何が何でも達成するように努力してきた。その積み重ねによって、2023年3月期には売上高2兆円を達成した。

 

「従来は1年から1年半ぐらいで増産ができたが、それが建設資材の長納期化、建設人材の不足等々で工場の建設、あるいは設備を入れて稼働させるのに3年ぐらいかかるようになってきた。そのため、従来の1年計画ですべてを計画するということが、物理的に無理が生じてきている。

 

それに半導体が飛躍的に増えていくということで、昨年までユーザーの要望になかなか応えられない局面もあった。今後は先取りして半導体の成長を京セラの成長につなげていきたいという思いを込めて、3年間の中期目標を立案した」と谷本秀夫社長は説明する。

 

半導体市場は現在約50兆円の規模で、長い年月をかけてそこまで成長してきた。しかし、これから先、倍の100兆円になるまでわずか8年、2030年には達成する見込みだ。そこで、「過去にない投資をしないとチャンスをつかめない」と半導体関連に過去3年間の2.3倍となる4000億円を投資する方針を明らかにした。

 

京セラとして約20年ぶりとなる国内新工場を2024年3月までに長崎県諫早市に着工する。そこでは半導体製造装置用ファインセラミック部品や半導体パッケージなどを生産する計画で、27年3月までに生産を開始する予定だ。総投資額は約620億円なるという。

 

設備投資額と研究開発費の推移

 

事業のベースとなるのは京セラフィロソフィー

 

そのほか、鹿児島国分工場と滋賀八日市工場でファインセラミック、ベトナム工場と鹿児島川内工場で半導体部品セラミック材料、京都綾部工場と鹿児島川内工場で半導体部品有機材料の設備増強を行う。この結果、半導体部品有機材料が2.4倍、ファインセラミックが1.8倍、半導体セラミック材料が1.4倍の規模となる。

 

「中長期的な市場拡大機会を当社の事業成長に着実に結びつけ、競争優位分野で事業を飛躍的に伸ばす」と谷本社長は話し、半導体関連部品で売上高を26年3月期に23年3月比34%増の4900億円、産業・車載用部品で28%増の2550億円を目指す。

 

また、コンデンサーやタイミングデバイスなどを含む電子部品分野でも、エレクトロニクス産業の進展に伴い電子部品の市場はさらに拡大すると見ており、京セラが強みを発揮できる競争優位分へ注力し、市場シェアの拡大を図る。

 

例えば、タンタルコンデンサーは23年3月期の30%から26年3月期には40%へ、タイミングデバイスは10%から20%へ、積層セラミックコンデンサー(MLCC)は5%から10%へ、コネクターが2%から5%へとそれぞれシェア拡大を目論む。

 

そのために、過去3年間の1.6倍である2100億円を投資する。例えば、MLCCとタンタルコンデンサーを生産するためにタイに新工場を立ち上げる。また鹿児島国分工場とエルサルバドル工場で生産用量の拡大を進める。

 

セグメント別中期目標

 

一方、課題が多い携帯電話端末事業を含むソリューション分野は、各事業の状況を見極めたうえで将来の成長分野へリソースを集中する方針を示した。個人向けスマートフォン事業に見切りをつけ、23年3月期に新規開発を完了し、25年3月期で供給と販売を終了する。

 

ただ法人向けについては、収益性の高いカスタム機器の開発を進め、端末・通信サービス事業に注力していく。さらにミリ波5G通信のさらなる普及に向けたインフラ関連事業へ開発リソースを集中していく方針だ。

 

このような中期経営計画を踏まえ、29年3月期に売上高3兆円企業を目指す。「やはりベースとなるのは京セラフィロソフィーで、稲盛が常々言っていた『人として何が正しいのか』というベースがないと、私利私欲に偏った投資をしたりとてみたりとか、そういうことにならないような精神的なベースは必ず必要だと思うので、京セラフィロソフィーは今後も従業員の中で教育を徹底していきたいと思う」と谷本社長は強調していた。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。