NEXT MOBILITY

MENU

2024年5月2日【事業資源】

ミネベアミツミ、日立パワーデバイスの事業譲受

坂上 賢治

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 

ミネベアミツミは5月2日、日立パワーデバイスの株式取得(子会社化)及び事業譲受完了を発表した。同社は、先に日立製作所と日立パワーデバイスの株式取得に係る株式譲渡契約の締結と日立製作所グループのパワーデバイス事業の海外販売事業を譲り受けを明らかにしていたが、今発表同日に株式取得及び事業譲受を完了。日立パワーデバイスの名称をミネベアパワーデバイスに変更した。

 

1. 取引の目的及び今後の運営方針

ミネベアミツミは、超精密加工技術や大量生産技術等の当社の強みを発揮でき、且つ簡単に無くならない製品をコア事業「8本槍」として位置付けると共に、これらを相合(そうごう)することにより新たな価値をお客様に提供していくことを基本戦略としてきた。

 

そうしたなかでパワー半導体も上記の一翼を担っており、リチウムイオン電池保護IC、電源IC、タイマーIC、MEMS*2センサー、磁気センサー、車載用メモリー、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)などのパワー半導体領域では、売上高800億円規模から2030年度にはM&Aも含め3,000億円への拡大を目指している。

 

しかしIGBT事業がチップビジネスの展開に留まっていることから上記により、モジュール化の技術力(パッケージ及びモジュールの後工程技術および生産能力)を獲得することで「パワー半導体を開発から一貫生産できる垂直統合型のビジネス展開」が可能となる。

 

加えて技術統合による技術陣容の強化に加え、ミネベアパワーデバイスのSG-IGBTを含む独自技術とチップ製造技術を相合することで、SiパワーデバイスでSiCに近い性能を実現できること。

 

ミネベアパワーデバイスのSiC技術者集団が持つ高耐圧SiC技術を活かしたSiCパワーデバイス事業の発展など、パワーデバイス事業と当社の既存事業とのシナジー効果を発現させ、パワー半導体市場をリードできる競争力のある企業への躍進を図る構えだ。

 

特に新製品開発過程での相合活動では、高圧モーター制御のノウハウを自社DCモーター製品へ活用することによるモーターソリューションの新提案、先端高効率デバイス等を自社電源へ取り込むことよるハイパワー電源製品の市場投入、特殊プロセス技術と設計技術の融合やエイブリック製品との組み合わせなどによる医療向けデバイス製品の増強等を想定し、新たな付加価値を創出していきたい考えだ。

 

また従前より同社はミネベアパワーデバイスの前工程Fabとして製造受託を行っており、更にSG-IGBTは既に自社滋賀工場で試作中であるため、垂直統合で経営統合初日より付加価値を取り込めるようになるという。

 

ミネベアミツミでは、「パワー半導体は、EVに留まらず、GX(グリーントランスフォーメーション)、風力・太陽光等の再生可能エネルギー、電力・パワーグリッド、電鉄等の大型輸送機器、データセンター、重粒子線治療やMRI等の医療・ヘルスケア、産業機器・工作機器等での需要が高まっているものと理解しております。

 

マスの市場に加え、尖った強みを活かしやすいニッチな市場で強みを発揮させることで、大きなシナジー効果を生み出し、アナログ半導体事業として3,000億円をさらに上回る成長を目指してまいります」と事業拡大の可能性について語っている。

 

2. ミネベアパワーデバイスの概要(2024年5月2日現在)

(1)名称: ミネベアパワーデバイス株式会社
(2)所在地: 茨城県日立市大みか町五丁目2番2号
(3)代表者の役職・氏名: 取締役社長 鈴木 雅彦
(4)事業内容
   半導体部品の設計、製造及び販売
   半導体応用機器と部品の設計、製造及び販売
(5)資本金: 450百万円
(6)設立年月日: 2013年10月1日
(7)大株主及び持株比率: ミネベアミツミ株式会社 100.0%
(8)役員構成
   取締役社長 鈴木雅彦
   取締役 小池義彦
   取締役 田村洋平
   取締役 吉田勝彦
   取締役 矢野功次
   監査役 山本光伸

 

3. 譲受事業の概要

(1)譲受事業の内容 パワーデバイス事業に関する海外販売事業
(2)譲受対象事業の資産 事業譲渡日におけるパワーデバイス事業に関する海外販売事業に係る売上債権、商品在庫、契約及び従業員等

 

4. 今後の見通し
上記に伴う2025年3月期の当社の連結業績に与える影響は軽微。今後、開示すべき事項が発生した場合には、判明次第速やかに開示するとしている。

CLOSE

坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。