NEXT MOBILITY

MENU

2024年3月1日【ESG】

NSG、欧州初のCO2分離回収実証を開始

坂上 賢治

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

写真:R&Dプロジェクトマネージャーのカイオ・メンドンカ氏(右から3人目)を含むXLR8 CCSプロジェクトのパートナー

 

日本板硝子(NSG)は3月1日、当社グループの英国内事業所のフロート窯に於いて、板ガラス業界として欧州初のカーボンキャプチャー(CO2分離回収)の実証実験を開始した。

 

この実験は、脱炭素化が難しい産業向けの低コストのCO2回収ソリューションを実用化することを目的とした英国の国家プロジェクト(XLR8 CCSプロジェクト)の一環であり、英国のエネルギー安全保障・ネットゼロ省および民間セクターの追加拠出を合わせ、総額270万ポンドの資金規模となっている。

 

具体的には、同社グループのPilkington United Kingdom Limited社(ピルキントンUK社)のグリーンゲート事業所(同国セントヘレンズ)にあるフロート窯で、プロジェクトを主導するC-Capture社(英国)の汎用型CO2回収溶媒ユニット(CCSCU)が設置され、成功裏に分離回収実験を開始。現在、このCCSCUはフロート窯の煙突基部に接続され、煙突内の煙道を流れる排出ガスからCO2を分離回収している。

 

今実験の主目的は、CCSCUがガラス製造窯から排出される不純物を含む排気ガス中に於いても十分に機能を発揮できることを確認する点にあり、この実験の期間は数か月間を予定している。

 

なおXLR8 CCSプロジェクトとしては、今回の実験以外にも、C-Capture社独自の溶媒ベースの技術が複数の産業に於いて互換性を有することを確認するため、プロジェクトパートナーのGlass Futures、Heidelberg Materials and Energy Works Hullが所有する各種産業現場で、大手コンサルティングおよびエンジニアリング企業であるWood社と共同で、さらに5つの炭素回収実験が英国全土で実施される予定。

 

またWood社は、当プロジェクトの一環として、グリーンゲート事業所でのC-Capture社技術による100トン/日レベルのCO2分離回収の実現可能性についても調査を完了している。

 

今後、当該プロジェクトの成功が確認された後、C-Capture社とそのプロジェクトパートナーは、2030年までに年間数百万トンレベルのCO2を回収可能な商業ベースの施設を3つの業界に展開する予定。

 

NSGグループは、サステナビリティへの取り組みは、環境や社会課題の解決、および事業の持続的な発展を両立させる重要な活動であると位置づけ、サステナビリティ活動を通じて社会と共に成長することを目指すという。

 

なおNSGグループ グローバルR&Dポートフォリオ・マネージャー Paul Skinner氏は、「今回の実験は、ガラス製造工程に於いてもCO2回収が実際に可能であることを実証しています。

 

これは非常に画期的な開発であり、カーボンニュートラルなガラス製造を目指すNSGグループにとって脱炭素化技術の道のりにおける重要なマイルストーンとなるものです。

 

このプロジェクトを通じて、C-CaptureやGlass Futuresのチームと協力できたことは素晴らしい経験であり、今後、さらに貴重な学びを得ることを楽しみにしています」と述べた。

 

またC-Capture社CEOのTom White氏は、「ガラス製造業界に於けるCO2回収実験のスタートが成功し、ネットゼロへの道のりにおける重要な一歩を発表できることを誇りに思います。

 

CO2回収は、気候変動に取り組むために喫緊に必要とされている多くの解決策の重要な部分です。しかし現在、コスト、技術の成熟度、複数の業界における互換性などの障壁が、CO2回収の普及を妨げています。

 

既に実用化されている他のアプローチとは根本的に異なる化学的性質に基づく当社の次世代技術はCO2回収分野におけるイノベーションです。アミンの使用に依存しないため、低コストで環境にやさしいことが特徴であり、非常に堅牢であるため、ガラスやセメントなど、世の中に不可欠であるが、排ガス中の不純物が多く脱炭素化に課題を抱える産業での使用にも適しています。

 

C-Captureのアプローチの利点は、現在、CO2回収・貯留技術の普及を妨げている障壁を打ち破り、気候変動への取り組みに世界的に大きく貢献する可能性を秘めていることを意味します。このプロジェクトは、これらの業界にとって大きな前進であり、ネットゼロへの道のりの重要な部分となることでしょう」と語っている。

 

また英国エネルギー効率担当大臣Callanan卿は、「CO2回収は、重工業を脱炭素化し、野心的な環境目標を達成するために不可欠な役割を果たします。私たちは既にこの技術に約3億5,000万ポンドを投資しており、その中には今回のヨーロッパの板ガラス業界における初のCO2回収試験も含まれています。

 

この革新的な実験は、産業全体のCO2回収技術を変革する可能性があり、ネットゼロへの移行における重要な一歩となります」と語った。

 

更にGlass Futures R&Dプロジェクトリーダー Masimba Toperesu博士は、「ガラス業界にとってのこの欧州初の試みは、ガラス業界や他の分野のパートナーがCCUSをよりよく理解するのに役立つ本技術の実装に向けた記念碑的な一歩です。

 

このような稼働中の生産現場での実証を通じて、最終的にはこれらの基幹産業を脱炭素化していきます」と話す。

 

Wood社コンサルティング担当エグゼクティブプレジデントのAzad Hessamodini氏は、「CO2回収は、ネットゼロへの道のりを加速させる上で重要な役割を果たしており、当社はテクノロジーパートナーやクライアントと協力して、スケーラブル、投資可能で提供可能なソリューションを作成することで、この歩みを前進させることに注力しています。

 

Woodのチームにとって、脱炭素化の専門知識を応用し、競争力のあるCO2回収ソリューションを提供して重工業などCO2削減が困難な産業の排出量を削減することは非常にやりがいのあることです。エネルギー安全保障・ネットゼロ省、C-Capture、XLR8 CCSプロジェクトパートナーとともに、C-CaptureのCO2回収技術の展開と最初のオンサイト試験の開始が達成できたことを非常に誇りに思っています」とコメントした。

 

最後にHeidelberg Materials UK CEOのSimon Willis氏は、「CO2回収はセメント生産を脱炭素化する唯一の方法であり、2050年までにネットゼロカーボンを達成するためには不可欠です。

 

ウェールズ北部のパデスウッド・セメント工場は、既にHyNet North Westの炭素回収・貯留プロジェクトの一部であり、ケットン工場のXLR8 CCSプロジェクトへの関与は、新技術の開発に対する当社のコミットメントの一例です。

 

私たちはピルキントンUKの試験を注意深く見守っており、2024年に独自の試験を開始することを楽しみにしています。成功すれば、Heidelberg Materialsグループの他の拠点にも展開される可能性があります」と結んでいる。

CLOSE

坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。