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2022年2月2日【事業資源】

ソニーG、2021年度の営業利益が25%増の1.2兆円に

山田清志

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ソニーグループの十時裕樹副社長兼CFO

 

ソニーグループの強さが際立ってきた。株価も1万2600円超と同業他社を大きく引き離し、業績も非常に好調だ。2月2日発表した2021年度第3四半期累計(4~12月)の連結決算も、売上高が前年同期比13.2%増の7兆6575億円、営業利益が同19.7%増の1兆637億円、当期純利益が19.9%減の7710億円だった。通期業績見通しも10月公表値から営業利益、当期純利益で上方修正した。(経済ジャーナリスト・山田清志)

 

半導体不足でプレステ5の販売数量目標を引き下げ

 

「売上高、営業利益は第3四半期(10~12月)としては過去最高となった。コロナ禍において、物流に大きな影響があり、半導体を含むデバイスの供給制約が長期化しているが、次に何が起こるのかといったことの予測を立てて、早めに対応したことが過去最高の業績につながっていると思う。しかし、プレイステーション5の旺盛な需要に対して十分な供給ができていないこと、イメージセンサーの収益性の回復が当初の目論見通りに進んでいないことが課題だ」と十時裕樹副社長兼最高財務責任者(CFO)は第3四半期を振り返る。

 

2021年度1Q-3Q連結業績

 

セグメント別に第3四半期の業績を見ると、ゲーム&ネットワークサービス(G&NS)分野は売上高が前年同期に比べ700億円(8%)減収の8133億円、営業利益が121億円増益の929億円だった。前年度第3四半期にプレイステーション5のローンチと大型タイトルの発売があり、その反動で減収になったが、販売費および一般管理費の減少やプレイステーション5のハードウェアの収益性改善などにより増益となった。

 

その裏には、プレイステーション5の販売台数が半導体不足により思うように伸びなかったことで、プロモーション費用が減り、物流費の高騰もセーブできたというメリットがあった。そのプレイステーション5は今期の販売目標を当初1480万台以上に設定していたが、1150万台程度になる見通しだという。

 

また、十時副社長は1月31日に発表したソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)による米国独立系ゲーム開発会社バンジーの買収について説明。「バンジーは900人を超えるクリエイティブ人材を擁し、これまでに『Halo』や『Destiny』などの大ヒットタイトルを創出してきた実績がある。これまでさまざまな協業の検討を重ねてきたが、両社の持つクリエイティブ領域での強みや企業文化の融合を通じ、さらなる成長を目指すことができるとの確信が得られたため、買収を進めることになった。バンジーはSIE傘下においても引き続き独立したスタジオとして、プレイステーション以外のプラットフォームでの事業展開も継続していく」と述べた。

 

2021年度3Qセグメント別業績

 

エレキは部品の供給不足で大幅な減収減益

 

音楽分野は売上高が前年同期に比べ314億円(12%)増収の2959億円、営業利益が40億円減益の551億円だった。映像メディア・プラットフォームの減収はあったものの、ストリーミングサービスの増収分がその減収分を大きく上回った。ストリーミングの売り上げは前年同期比で音楽製作が29%増、音楽出版が27%増だった。「スポティファイのグローバル楽曲ランキング上位100曲に平均して36曲がランクインしており、またアデルのアルバム『30』が11月のリリース以来、ビルボードチャートで8週連続1位を獲得し、歴史的な大ヒットになっている」と十時副社長。

 

映画分野は売上高が前年同期に比べて2701億円(141%)大幅増収の4612億円、営業利益も1291億円大幅増益の1494億円だった。これは、主に映画製作における『スパイダーマン:ノーウェイ・ホーム』の大ヒットや、テレビ番組制作において人気番組『となりのサインフェルド』シリーズの大型ライセンス収入があったためだ。そのうえ、昨年12月6日に売却を完了したGSN ゲームスの事業譲渡に伴う利益の計上もあった。

 

十時副社長によると、スパイダーマン:ノーウェイ・ホームは昨年12月17日全米で公開以降、オープニング興行成績として歴代2位を記録し、全世界累計興行収入が17億ドルを超え歴代6位になるなど、ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメントとして過去最大のヒットとなっているそうだ。

 

エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション(EP&S)分野は、売上高が前年同期に比べて121億円(2%)減収の6869億円、営業利益が233億円大幅減益の800億円だった。為替による増収効果はあったものの、巣ごもり需要の剥落や部品の供給不足による製品販売台数の減少が響いた。

 

2021年度連結業績見通し

 

「テレビのパネル価格の急激な下落による製品市場価格への影響が懸念されたが、限定的であったことに加え、欧米や中国を中心に大画面化が進んだことにより、テレビの平均販売価格は第2四半期と同等レベルを維持できた。ただ、幅広いカテゴリーにおいて深刻な部品の供給不足により、市場の需要に十分に応えきれない状況が続いており、この影響は第4四半期も継続する」と十時副社長は懸念を示した。

 

イメージング&センシング・ソリューション(I&SS)分野は、売上高が前年同期よりも578億円(22%)大幅増収の3248億円、営業利益が133億円増益の647億円だった。主にハイエンドモバイル機器向けイメージセンサーの増収が大きかったそうだ。

 

「スマートフォン製品を取り巻く環境は、軟調な中国市場や半導体を中心とした部材不足など厳しい状況であるが、これまで進めてきたモバイルセンサーの顧客基盤の拡大や多様化、数量ベースでのシェア回復に向けた取り組みが一定の成果を上げている」と十時副社長は話し、こう付け加えた。

 

「中国特定顧客向けのビジネス縮小により停滞していた、中国メーカーのハイエンドスマートフォン向けセンサーの大判化トレンドは回復基調にあり、中国スマートフォン市場も来年度後半には正常化することが期待される。さらなるシェアの拡大には手応えを感じていることから、今後は製品の高付加価値化に一層注力し、収益性の改善に努めていく」

 

ソニーのEV「VISION-S」

 

ソニーモビリティでは大規模な投資は行わず

 

2021年度通期の連結業績見通しについては、10月の公表値から売上高が9兆9000億円(前期比10.0%増)に据え置くが、営業利益は1600億円増の1兆2000億円(同25.6%増)に、当期純利益は1300億円増の8600億円(同16.5%減)にそれぞれ上方修正した。

 

セグメント別業績見通しは次の通りだ。G&NS分野は売上高が10月公表値に比べて1700億円減の2兆7300億円、営業利益が200億円増の3450億円。音楽分野は売上高が200億円増の1兆900億円、営業利益が50億円増の2050億円。映画分野は売上高が400億円増の1兆2200億円、営業利益が970億円増の2050億円。EP&S分野は売上高が800億円増の2兆3600億円、営業利益が200億円増の2100億円。I&SS分野は売上高が300億円減の1兆700億円、営業利益が据え置きの1500億円とした。

 

十時副社長は決算説明の最後に「ソニーモビリティ」について触れ、ソニーが持つさまざまな技術とコンテンツを生かし、モビリティに新たな価値を創造していくために、さまざまなパートナー企業との連携や提携を進めていく考えを示した。しかし、具体的な話はまだ決まっていないようだ。

 

「設立時期は22年春と言っているが、具体的な時期は検討する必要があり、決まったタイミングで話す。ただ一点付け加えると、ソニーモビリティをつくって市場参入を検討すると言ったのであって、参入することが決まっているわけではない。クルマについては勉強することが多いと考えているので、会社を設立するというステップを経て、さらに勉強と検討を深めていく。具体的にどういうビジネスになるか、どういう規模になるかというのは時期尚早だ」と十時副社長は強調した。

 

ソニーモビリティでは、単独でバッテリーを開発したり、大規模な製造設備、販売や整備のためのインフラを持つことはないとのことだ。資本の投入についても、大規模ではなく、アセットライトと語っており、パートナー企業ありきといった感じだ。いずれにしても“ソニーカー”がこれからどうなっていくか気になるところだ。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。