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2023年8月2日【事業資源】

スバル新体制、BEVへ大きく舵を切る

松下次男

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2030年のBEVの販売目標を全世界販売台数の50%・60万台に

 

スバルは8月2日、電動化計画を大幅に見直し、2030年のバッテリー電気自動車(BEV)の販売目標を50%に引き上げると発表した。生産体制でも群馬に続き、米国にBEV専用工場を建設する。(佃モビリティ総研・松下次男)

 

2024年3月期第1四半期決算発表会見に合わせて、6月に社長・CEO(最高経営責任者)に就任した大崎篤氏が「新体制方針」を説明。中期経営ビジョンで掲げていた電動化計画を見直し、BEV戦略主体のアップデートを公表した。

 

新たな目標について大崎社長は「スバルの舵をBEVに大きく切る」と表明。従来、2030年の電動車販売目標はハイブリッド車(HV)とBEV合わせて40%としていたのを「BEVのみで50%」目標へと引き上げた。

 

2030年の全世界販売台数は120万台プラスアルファを計画しており、半分の60万台をBEVにする方針だ

 

大崎社長は電動化計画の見直しについて自動車を取り巻く環境が「非連続な変化」「従来にないスピード感」で進行していることを背景に掲げた。

 

カーボンニュートラルへの対応から急速なBEVへのシフト、新興メーカーの台頭などがその代表的な動きであり、北米を主戦場とするスバルにとっては米インフレ抑制法もBEVへと大きく舵を切る一つの要素といえるだろう。

 

米でもBEV専用工場を建設、2027~28年頃に生産開始

 

生産、販売活動でもアップデートする。生産体制では春先に国内のBEVの生産上乗せを表明したが、今回、さらに米国でHVの「e―BOXER」とBEVを現地生産すると発表した。

 

 

米国でのBEV生産工場は2027~28年頃の稼働開始を予定。現米工場のSIAを含めて、複数の候補地から選定し、専用工場を建設する計画だ。

 

また、BEVのラインアップについても今回、新たに4車種を追加、投入すると発表。すでに公表済みの2026年末までにSUV4車種を投入するとしていたのにあわせ、2028年末までに8車種をラインアップするとした。

 

これにより2028年には米国で販売台数の半数強となる40万台のBEV販売を狙うと表明した。BEVの販売が北米主体となるのはスバルの「主戦場」であり、米国のEVシフトが鮮明なため。

 

電動化計画のアップデートはモノづくりでも革新を打ち出す。具体的にはBEVに対応し、「開発手番半減」「部品点数半減」「生産工程半減」を目指す。

 

2028年までにBEV8車種、ゼロベースで新たな挑戦へ

 

これらの実現時期について大崎社長は「群馬では更地から専用工場を立ち上げており、ここではゼロベースで新たなことに挑戦する」と述べ、BEV専用工場から革新的な手法を目指す考えを示した。

 

また、BEVによりスバルらしさが失われるとの懸念に関しては「モーターで駆動するEVは制御がより緻密になる。そこにAWD(四輪駆動)で培われてきたスバルの技術が生かされる」と強調した。

 

スバルはこうした電動化対策として2030年までに約1・5兆円を投資する計画だ。投資の約半分は電池関連とし、BEV電池は先に公表したパナソニックおよびBEVを共同開発するトヨタから調達する。

 

同時に発表した2024年3月期第1四半期の連結業績は生産・販売台数が大きく伸びたことなどから売上収益が1兆821億円と前年比29・7%増、営業利益が845億円と同128・4%増の大幅な増収増益となった。通期見通しは前回公表値を据え置いた。

 

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。