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2023年2月14日【企業・経営】

住友ゴム、値上げで過去最高の売り上げを達成するも大幅な減益

山田清志

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決算会見の様子

 

住友ゴム工業が2月14日に発表した2022年12月期の連結決算は、売上収益が前年同期比17.4%増の1兆986億円、事業利益が同57.7%減の219億円、営業利益が同69.5%減の149億円、当期利益が同68.1%減の94億円だった。売上収益は過去最高を更新したが、利益は大幅に減少した。特に事業利益はこの10年間ほど右肩下がりの状況になっている。(経済ジャーナリスト・山田清志)

 

山本悟社長

 

原材料高騰と海上運賃上昇が響く

 

「多くの市場で回復基調となるなど明るい兆しが見えたものの、海上輸送コストや原材料価格、エネルギーコストの高騰の影響を受けた。そのような中、当社グループは2025年を目標年度とした中期計画の実現に向けて、経営基盤強化を目指す全社プロジェクトを強力に推進するとともに、世界の主要市場に構築した製販拠点の効果の最大化を目指して顧客ニーズに対応した高機能商品を開発、増販するなど、グローバル体制による競争力の強化に取り組んだ」と、山本悟社長は決算説明会の冒頭、2022年12月期について振り返った。

 

事業利益の増減益要因を見ると、製品への価格転嫁689億円、数量・構成比ほか137億円の増益要因があったが、原材料費の高騰688億円、海上運賃の上昇212億円、エネルギーコストの上昇など147億円、固定費19億円、為替27億円などの減益要因があり、前期から300億円も減少してしまった。そのうち、主力のタイヤ事業が290億円も占めた。

 

2022年12月期の連結業績

 

そのタイヤ事業は、売上収益が前期比18.2%増の9399億円だったが、事業利益は同70.3%減の123億円。国内新車用タイヤは、世界的な半導体不足などにより自動車メーカーの減算が土いていることの影響を受けて低調に推移。足元の販売状況は前期を上回るなどやや回復傾向が見られたが、累計の販売は前期を若干下回ったという。

 

国内市販用タイヤは、年初より好調に推移していたが、年末にかけて降雪の遅れや物価上昇によるタイヤ消費マインド低下の影響があった。夏タイヤについては、新商品のグローバルフラッグシップタイヤやプレミアム商品の販売に注力したほか、オールシーズンタイヤの市場認知度が上がったことで販売が増加。冬用タイヤの販売も年間では前年並みとなり、国内市販用タイヤの販売は前期とほぼ同等だった。

 

2022年12月期のセグメント別業績

 

海外新車用タイヤは、新型コロナウイルス感染症の影響で大きく落ち込んだ前期よりも販売が回復し、前期を上回った。一方、海外市販用タイヤは中国のゼロコロナ政策の影響もあり、販売が低調に推移し、前期を下回った。地域によってまだら模様で、インドネシアやタイでは、市販用タイヤの販売は前期を上回ったが、欧州はインフレ進行の影響もあってタイヤ需要が鈍化し、前期を下回った。北米は値上げによって販売数量が減少したが製品構成を改善することができたそうだ。また、南米は上期に旺盛な需要を背景に販売を伸ばしたが、下期になると需要が減退してほぼ前年並みの販売だったという。

 

もう一つの柱であるスポーツ事業は、売上収益が前期比15.0%増の1165億円、事業利益が同3.9%増の89億円と増収増益だった。ゴルフ用品は世界的なゴルフ需要の高まりによる部材不足などはあったが、北米、韓国を中心に海外で大きく販売を伸ばし、売上収益は前期を上回った。また、テニス用品も同様に売上収益が前期を上回ることができた。

 

2023年12月期の連結業績予想

 

23年の業績は通期と上期の利益が対照的に

 

2023年12月期の業績見通しは、売上収益が前期比9.2%増の1兆2000億円、事業利益が同59.4%増の350億円、営業利益が同100.2%増の300億円、当期利益が同91.2%増の180億円を見込む。ただ上期(1月~6月)については、売上収益が前年同期比11.3%増の5700億円と増収を予定するが、事業利益が同50.7%減の70億円、営業利益が同60.2%減の50億円、当期利益が同94.2%減の10億円と、大幅な減益予想だ。

 

タイヤ事業の見通しについては、売上収益が前期比8.8%増の1兆225億円、事業利益が同111.2%増の260億円を見込む。上期については、売上収益が前年同期比9.7%増の4725億円、事業利益が同86.9%減の10億円となっている。一方、スポーツ事業は売上収益が通期で13.6%増の1325億円、上期で22.7%増の755億円、事業利益が通期で10.5%減の80億円、上期で3.4%減の60億円を見込む。

 

2023年12月期のセグメント別業績予想

 

また、同日に新中期計画(2023年~2027年)を発表。2025年までに成長事業の基盤づくりを行い、26年以降にその成長事業でビジネスを拡大し、事業利益率を22年の2.0%から27年に7%まで引き上げる目標を掲げる。

 

「これまで当社はグローバル体制の構築のため、事業のすべて、全地域に注力してきた。そのなかでさまざまな非効率が生じ、収益低下につながったと認識している。そこで、ターニングポイントとする2025年度までに既存事業の選択と集中に注力する。そして、2026年以降にDX経営を実践し、事業ポートフォリオの最適化、成長ビジネスの拡大により、再成長に繋げていく」と山本社長は力強く語っていた。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。