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2022年8月8日【企業・経営】

住友ゴムの22年1~6月期決算、原材料価格高騰で大幅減益

山田清志

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住友ゴム工業の木滑和生副社長

 

住友ゴム工業が8月8日に発表した2022年12月期上半期(1~12月期)の連結決算は、売上収益が前年同期比16.4%増の5121億円、事業利益が同52.9%減の141億円、営業利益が同56.0%減の125億円、純利益が16.2%減の171億円だった。主力のタイヤ事業は売上収益が増えたものの、原材料価格や海上運賃の高騰などのコストがかさんで大幅な減益になってしまった。通期の業績見通しも厳しく、大幅な減益を予想する。(経済ジャーナリスト・山田清志)

 

タイヤ事業は値上げ行うも67%も減益

 

「2022年上半期の経済環境は、新型コロナウイルスやウクライナ情勢の影響が引き続き見られたほか、インフレ圧力の高まりや中国における経済活動の抑制など不確実性の高い状況が続いた。当社グループを取り巻く環境としては、半導体不足により自動車生産台数が減少していることに加えて、原材料価格や海上運賃の高騰も引き続き大きな影響がある状況だった」と木滑和生副社長は振り返った。

 

2022年1−6月連結業績

 

それは事業利益の増減要因を見れば、一目瞭然だろう。製品への価格転嫁による増益要因が320億円あったが、原材料価格の高騰が374億円、海上運賃の上昇が217億円の減益要因となり、コスト増を吸収しきれなかったのだ。

 

それを端的に表しているのが主力のタイヤ事業だ。売上収益が4309億円と前年同期比16.7%増だったが、事業利益は77億円と67.4%も減ってしまったのだ。木滑副社長の説明によると、主要市場での状況は次の通りだ。

 

国内新車用タイヤは、世界的な半導体不足に伴い自動車メーカーの生産台数が減少した影響があったことなどにより販売は前年同期を下回った。一方、国内市販用タイヤは、夏タイヤでは新製品のグローバルフラッグシップタイヤやプレミアム商品の販売が好調に推移。オールシーズンタイヤは年初の都市部の降雪で注目度が上がり、販売を伸ばしたうえ、冬タイヤも降雪の影響で販売が堅調で、前年同期を上回った。

 

2022年1−6月セグメント別の業績

 

海外新車用タイヤは、半導体不足影響による自動車メーカーの減産はあったが、新型コロナウイルス感染症の影響で大きく落ち込んだ前年同期よりも受注が回復し、販売は前年同期を上回った。海外市販用タイヤは、アジア・大洋州地域では中国でゼロコロナ政策の影響もあり販売が低調だったうえ、インドネシアでも新型コロナウイルス感染症による活動制限の影響があり販売は前年同期を下回った。

 

欧州はタイヤ需要が回復して、アジアの工場からの供給を増やしたこともあり販売本数を伸ばすことができた。米州地域は、北米で販売数量が若干減少したものの、低採算品の販売が縮小したことなどで製品構成を改善することができ、南米では地産地消の強みを活かし、旺盛な市販用タイヤ需要に対応して販売を伸ばすことができた。

 

また、もう一つの柱であるスポーツ事業は、売上収益が前年同期比19.6%増の615億円、事業利益が同12.5%増の62億円と増収増益だった。「ゴルフ用品は世界的なゴルフ時用の高まりによる部材不足などはあったが、ゴルフ場の利用者数増加などもあり、主要各市場を中心に販売を伸ばし、売上収益は前年同期を上回った。特に北米が好調だった」と木滑副社長は説明し、テニス用品についても同様に売り上げ、利益ともに前年同期を上回ったそうだ。

 

2022年度連結業績予想

 

経営基盤強化のための全社プロジェクトを推進

 

2022年12月期の通期業績見通しは、売上収益が前期比22.3%増の1兆1450億円と、初めて1兆円の大台を達成するが、事業利益が40.4%減の310億円、営業利益が43.1%減の280億円、当期利益が16.9%減の245億円と大幅な減益となると予想する。しかも、5月の公表値よりも事業利益で110億円、営業利益で115億円、当期利益で45億円それぞれ下方修正した。

 

「コロナ禍からの緩やかな経済活動の回復を期待したが、足元のコロナ感染再拡大や原材料価格、海上運賃の高騰、先行き不透明なウクライナ情勢など引き続き予断を許さない状況になっている」(木滑副社長)ということで、少し保守的に見通しを立てたそうだ。

 

セグメント別の業績見通しについて、タイヤ事業は売上収益が9870億円と前期比24%増と増収を見込むが、事業利益が220億円と45%減と大幅な減益となる。5月公表値よりも売上収益で45億円、事業利益で100億円下方修正した。

 

スポーツ事業は売上収益が前期比14%増の1155億円と、前回公表値から80億円上方修正し、事業利益については変更なしの80億円と前期よりも7%の減益を予想する。

 

2022年度セグメント別の業績予想

 

いずれにしても課題はいかにしてタイヤ事業の利益を上げていくかだ。地産地消比率向上のために米国、ブラジル、南アフリカ工場で増産をし、トルコ、中国、タイ、宮崎工場では高機能タイヤの生産能力を拡大し、需要や為替などの環境変化に柔軟に対応できる生産配置を進めていく。と同時に、利益基盤の再構築として、タイヤSKUの最適化、高機能商品の拡販、DXの推進などに取り組んでいく方針だ。

 

また、足元の原材料価格や海上運賃の高騰に対しては、各地域状況に応じた価格見直しをさらに進め、生産・技術・購買・販売までが連携してコスト削減に取り組むほか、北米・欧州向け出荷と現地在庫を考慮しながらきめ細かな対応をして運賃をできるだけ抑制する。

 

住友ゴムは現在、経営基盤強化のための全社プロジェクト「Be the Change」活動を推進しており、22年末には新中期計画は発表する予定だ。このピンチをチャンスに変えられるかが今後の発展のカギを握りそうだ。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。