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2023年11月6日【ESG】

TI、米ユタ州で300mm半導体ウエハファブの起工式

坂上 賢治

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テキサス・インスツルメンツ (TI) の社長兼 CEO のハビブ イラン(Haviv Ilan)と米国ユタ州のスペンサー コックス(Spencer Cox)知事(中央)は、TI 関係者やコミュニティのリーダーと共に、米国ユタ州リーハイで行われたTIの 2 番目の300mm半導体ウエハファブの起工式に出席した

 

米テキサス・インスツルメンツ(TI)は11月6日(米国・西部時間)、米国内のユタ州リーハイに於いて、新しい300mm半導体ウエハファブ建設の起工式を実施した。

 

起工式には、米国ユタ州のスペンサー・コックス(Spencer Cox)知事、州政府及び地方政府選出の議員が出席。加えて隣席するコミュニティのリーダー達らと執り行った。

 

同式典への出席で登壇したユタ州のスペンサー コックス(Spencer Cox)知事は、「TIによるユタ州への投資策は、製造分野のみならず、この地に於いて大きな役割を担っています。

 

この度、それがTIによって更に拡大され、当地で数百人もの高度人材を排出し、この地で高い報酬が得られる仕事を創出するということは、それ自体がユタ州にとって大きな変革をもたらす絶好の機会となるでしょう。

 

今後も、当地の市民が中核となって製造する半導体を以て、米国内に於いて新たな技術革新を創出し、米国全土の安全保障の土台となっていくことを心より誇りに思います」と述べた。

 

米国ユタ州リーハイでの建設を予定しているテキサス・インスツルメンツの2番目の300mm半導体ウエハファブLFAB2の初期計画図

 

ちなみにTIは先のコックス知事の言葉通り、先の2023年2月にユタ州へ110億ドルの投資を行うことを発表。それは同州に於ける史上最大規模の経済的投資になると同社では謳っている。

 

またLFAB2は、TI単独で約800人の雇用を生み出すと共に間接的に数千の雇用を創出。量産開始は2026 年初めになる見込みだとしている。

 

例えばユタ州に対する成長投資の一例である教育分野では、アルパイン学区に900万ドルを投資。ユタ州初の STEM(科学、テクノロジー、工学、数学)のラーニング コミュニティの創設に貢献している。

 

具体的に、それは幼稚園生から高校3年生までのあらゆる生徒を対象にした教育プログラムとしており、複数年に亘る同長期プログラムは、同学区の85,000人の生徒を対象に、コース ワーク(教育課程)に於いてSTEMの概念を奥深くまで行き渡らせ、担当する生徒・教員・管理者へ向けて、STEMを土台とする能力開発の機会を提供するという。

 

結果、この州の学区全体を対象とするプログラムは、生徒たちがSTEM分野の重要スキルを身に着けるのに役立つ。それは互いに協力することで創造性の高い問題解決に立ち向かう能力を身に着けさせ、クリティカル シンキングの体得や、卒業後の成功を手助けすることができる。

 

そんなTIの取り組みについてアルパイン学区で監督者を務めるシェーン ファーンズワース(Shane Farnsworth) 博士は、「TIとの協力関係のお陰で生徒たちは、今後の人生に於いて不可欠な知識やスキルを身につけ、テクノロジー分野で未来の進路を広げていけることを嬉しく思っています。

 

TIがリーハイ市と連携して進めるこの協力型の学び舎への投資は、多くの生徒のみならず、広い世代に亘る家族の歴史にも多大な影響を及ぼすことになるでしょう」と話している。

 

さて翻って、新たな拠点となる予定の今回のLFAB2新設は、TIの事業に於いても既存の300mmウエハファブを補完する役割を担っている。それゆえ今後は、LFAB1(ユタ州リーハイ)、DMOS6(テキサス州ダラス)、RFAB1とRFAB2(いずれもテキサス州リチャードソン)と連携を図っていく。

 

またTIは、テキサス州シャーマンにも新たな4棟の300mm ウエハファブ(SM1、SM2、SM3、SM4)を建設中であり、それらの進捗次第で早ければ2025年に新たなファブ体制下での製造が開始される見込みとしている。

 

加えて同計画を前提にLFAB2は、100%再生可能電力で操業する目標を掲げている。従って同拠点の半導体製造プロセスは、廃棄物の生成量や水とエネルギーの消費量を大きく削減していく見込みだ。より具体的にLFAB2は、既にリーハイにある既存ファブと比べ、約2倍の水のリサイクルを達成するという。

 

こうした施設の先進性ついてTIのハビブ イラン(Haviv Ilan)社長兼CEOは、「本日、TI はユタ州で製造技術面で重要かつ大きな一歩を踏み出しました。

 

我々は今後数十年に亘って、お客様のニーズにお応えできる製造能力を確保するための300mmウエハの製造に係る長期的なロードマップがあり、この新たなファブはそのロードマップの一部です。

 

TI は、半導体を通じてエレクトロニクスをより手頃な価格で提供することで、より良い世界を創造するという熱意があります。

 

私たちは、このユタ州で成長を続ける皆様の一員であり、今日、あらゆる種類のエレクトロニクス システムにとって不可欠になっているアナログ半導体と組み込みプロセッシング半導体の製造に携わっていることを誇りに思い、新たなファブであるLFAB2建設へ向けた最初の一歩を皆様と祝いたいと思います。

 

この新しいファブは、リーハイにある既存の300mmウエハファブとの連携を予定しています。完成後、ユタ州にある TI の 2 棟のファブはフル稼働時に。1日あたり数千万個のアナログおよび組み込みプロセッシング チップを製造する予定です」と語っている。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

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1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。