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2018年2月8日【テクノロジー】

産総研、ラストマイル自動走行の受容性評価を開始

NEXT MOBILITY編集部

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産業技術総合研究所(産総研)情報・人間工学領域 端末交通システム研究ラボは、2月7日から、沖縄県中頭郡北谷町で、「ラストマイル自動走行の実証評価」として、効率的な配車や予約、運行管理を行う管制システムを、遠隔型自動走行システムに、新たに付加した自動運転車両を使った実証評価(受容性評価)を開始する。

産総研・ロゴ

この受容性評価では、実運用に近い状況で、2台の自動運転車両を運行。

 

遠隔型自動走行システムの利用方法と、運用管理の簡便性、複数台運行時の安全性、移動手段としての有用性といった観点で、自動運転車両が、利用者や事業者に受け入れられるかについて評価する。

 

産総研は、経済産業省および、国土交通省の平成29年度「高度な自動走行システムの社会実装に向けた研究開発・実証事業:専用空間における自動走行などを活用した端末交通システムの社会実装に向けた実証」を、幹事機関として受託。

 

ヤマハ発動機、日立製作所、慶應義塾大学SFC研究所、豊田通商などと共に、研究開発と実証を進めている。

 

 

端末交通システムは、基幹交通システム(鉄道やバスなど)と自宅や目的地との間、地域内といった短中距離を補完するラストマイルモビリティとも呼ばれる次世代の交通システム。

 

この事業では、公共的な利用を前提とし、地域の活性化などにつながる端末交通システムとして、自動走行技術を取り入れた運行管理システムなどの研究開発を行っている。

 

この研究開発された端末交通システムの社会実装に向け、平成30年度に実際に端末交通システムが求められている地域の環境で、実証評価を行うこととし、平成28年度に自治体や地域団体を公募した結果、選定地の一つとして沖縄県中頭郡北谷町の協力が得られた。

 

 

北谷町では、実証環境の特徴から同町を観光地モデルと分類。

 

観光施設やホテル、商業施設、ビーチなどを、海岸線に沿って横に結ぶ町所有の非公道を走路として、歩行者などとの共存空間における自動走行を、遠隔監視・操作システムを搭載した車両を用いて社会実験を行っている。

 

 

また平成29年6月からは、小型電動カートを使って、遠隔監視・操作技術と、自動走行技術を組み合わせた遠隔型自動走行システムとなる端末交通システムの社会実装に向けた技術確認を進めてきた。

 

 

今回、本格的な実証評価として実運用に近い状況での社会受容性評価を開始。

 

これまでの遠隔型自動走行システムに、効率的な配車や予約、運行管理を行う管制システムを新たに付加。

 

2台の自動運転車両を予約情報に応じて単路部を含む走路で、衝突することなく効率的に配車、運行する実証実験は、全国に先駆けての開始となると云う。

 

管制システムの導入により、遠隔監視・操縦者の負担を軽減、少人数での遠隔監視・操縦体制で複数車両の運行を実現できるとの評価が得られれば、遠隔型自動走行システムの事業性を大きく高められることが期待できるとしている。

現在の「遠隔型自動運転システムの公道実証実験にかかる道路使用許可の申請に対する取り扱いの基準」では、遠隔操縦者と遠隔型自動運転車両、1対1のシステムのみ、公道での実証実験が可能。

 

そのため、遠隔操縦者と遠隔型自動運転車両が1対複数となるシステムを用いた実証実験は、公道では行われていない。

 

今回の北谷町での実証実験で用いる走路は、公道ではなく、本基準対象外となるため、遠隔操縦者と遠隔型自動運転車両が1対2となるシステムでの、公道における実証実験の実現に向けた技術実証も進める予定だと云う。

 

また、北谷町での受容性評価から得られる成果を基に、他の実証評価地域(福井県永平寺町、石川県輪島市)でも、公道での実証実験へと進めていくとしている。

 

さらに今回の利用者や事業者などの受容性の実証評価で、見出された課題に対応するよう端末交通システムの改良を行うとともに、複数ルートでの効率的な運用などの技術実証を含め、移動サービスの事業性評価など、総合的な端末交通システムの社会実装に資する評価を行っていく。

 

この実証評価を通じて、端末交通システムの社会実装が加速され、高齢化が進む市街地の活性化に資する交通弱者への安心な交通手段の確保や、走路周辺の施設の利用による観光客の需要促進などが期待されると、コメントしている。

 

[用語の説明]

 

遠隔型自動走行システム:
車両内にはドライバーは存在しないものの、車両外(遠隔)にドライバーに相当する者が存在し、その者の監視などに基づく自動走行システムのこと。

 

受容性評価:
製品、サービス、新しい技術などがユーザーや社会に受け入れられるのかどうか(受容性)を評価すること。端末交通システムのように、新しい交通システムには利害関係者(ステークホルダー)が多く存在する。この事業では、利用者だけでなく、交通事業者や周辺住民、周辺施設関係者、自治体を含めた社会的な受容性の高い交通システムを目指し、それらの評価を受け、システム改善などを進めていく予定。

 

全国に先駆けての開始:
遠隔型自動走行システムと管制システムを組み合わせて運行管理を行う複数台の車両を用いた端末交通システムの実証評価は、国内初の試み。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。