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2024年3月27日【イベント】

アウディ、ザウバー買収でF1への参入準備を更に加速

坂上 賢治

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アウディAGは3月8日(独・インゴルシュタット発)、F1参戦中で名門レーシングチームのザウバーグループ(Sauber Motorsport AG/拠点:スイス・チューリッヒ州ヒンヴィル)を完全買収する方針を改めて明確にした。これを踏まえ同社CEOを務めるゲルノート デルナー氏(Gernot Döllner)は、Audi Agendaを掲げて今後焦点をあてていく戦略ポイントを改めて示した。

 

また上記を踏まえ、アウディAGとフォルクスワーゲンAGの監査役会のメンバーは、共にF1への取り組みを強化し、2026年シーズンの開幕に向けた準備を加速させ、アウディブランドの力強いポジショニング構築に注力するとしている。

 

 

アウディAGは、ザウバーグループの株式を100%取得した後、現在、アウディAGの技術開発部門で統括責任者の任にあるオリバー ホフマン氏(Oliver Hoffmann)が、アウディフォーミュラレーシングGmbH株主委員会の委員長に就任するのに加えて、ザウバーの取締役会長にも就任。ゼネラル レプレゼンタティブ(総代表)としてアウディフォーミュラ1プログラム全体の指揮を執る。なおこれに伴いアウディAG取締役会のメンバーは辞任する。

 

加えて現在、ザウバーチームを牽引しているアンドレアス ザイドル氏(Andreas Seidl)は、引き続きアウディF1チームの最高経営責任者(CEO)として、組織管理だけでなく、当該F1プロジェクトの遂行にも責任を負う。

 

一方で先の通り、オリバー ホフマン氏は、アウディAGの取締役会によってゼネラル レプレゼンタティブに任命され、世界最高峰のモータースポーツ参戦に関する責任を担うことになる。

 

同社は、フォーミュラ1レース参戦のために実施すべき3つの柱。〝著名なスイスのレーシングチーム、ザウバーへの出資〟〝バイエルン州ノイブルクに設けたアウディフォーミュラレーシングGmbHでのF1用パワーユニットの開発〟〝フォーミュラ1レーシングシーンでの成功するための戦略実行〟、これら全てを着実に進めていかねばならない。

 

同計画の成功は、国際的なマーケットでアウディブランドの価値を高め、モータースポーツと市販モデルの緊密な連携を図る事で、より大きな成功を収めることを目的としている。

 

なお現在、ザウバーグループ大株主のイスレロ・インベストメンツAG(Islero Investments AG)とは合意に達しており、この変更を全面的に支持している。これを受けてアウディCEOのゲルノート デルナー氏は、フォーミュラ1レーシングシーンでのアウディAGの成功をサポートするべく、現役職に加えて技術開発部門の統括責任者を兼任する予定だ。

 

アウディAG監査役会会長のマンフレート デス氏(Manfred Döss)は、「フォーミュラ1レースへの参入は、アウディのモータースポーツの成功の歴史に新たな到達目標を示すだけではありません。

 

このモータースポーツへ挑むことはとてつもなく大きな挑戦であり、それは財務部門に於ける目標達成と同じぐらい重要な事柄です。そこでザウバーグループの活動を完全に引き継ぐことで、オリバー ホフマンを同挑戦に集中させるべく、私たちは2026年シーズンに向けた準備を加速させていきます」と述べた。

 

 

アウディAG監査役会副会長 兼 労使協議会議長のヨルク シュラグバウアー氏(Jörg Schlagbauer)は、「当社は技術的な柔軟性を維持し、将来に対応できるよう機動力を保たなければなりません。

 

そのためには、明確な道筋が必要です。“Vorsprung durch Technik”(技術による先進)は、引き続き、私たちのスローガンとしてあり、現在でも経営陣の最優先事項となっています。

 

そのために私はゲルノート デルナーと、更に緊密に協力できることを、今から楽しみにしています。またアウディ従業員全員が、オリバーホフマンのこれまでの功績に感謝の意を表明しています。私たちは、ホフマンとアウディが、モータースポーツの最高峰クラスで成功することを祈っています」と語った。

 

アウディAG取締役会会長のゲルノート デルナー氏は、「技術開発担当取締役として貢献してきた、オリバー ホフマンの献身的な努力に感謝します。

 

近年、ホフマンは、アウディ製品のDNAにさらに磨きをかけてきました。私たちはAudi Q6 e-tronの発売と共に、このDNAを徐々に市場に浸透させていきます。特に、私たちにとって重要なPPEおよびPPCをベースにした市販モデルの開発は、彼の功績です。

 

ホフマンはモータースポーツにおける豊富な経験を持っているため、適切なタイミングで適切な人材が当該戦略に最適な統括責任者に任命されたことになります。

 

彼は技術開発担当取締役として、またアウディスポーツの統括責任者として、アウディのモータースポーツ活動で大きな成果を上げてきました。これらには、カスタマーレーシング、ドイツツーリングカー選手権(DTM)、電動マシンによるフォーミュラE世界選手権での国際的な勝利とタイトルの獲得が含まれます。

 

今年アウディは、革新的な電動ドライブトレインを搭載したマシンで、有名かつ過酷なダカールラリーで優勝した最初のメーカーとなりました。そして今、2026年のフォーミュラ1参戦に向けた準備が本格化しています」と説明しつつホフマン氏のこれまでの実績を湛えた。

 

これらのコメントを受けてオリバー ホフマン氏は、「近年の素晴らしい実績に対し、技術開発チーム全員に感謝したいと思います。また私たちの集中的な取り組みから誕生し、今後数か月以内に発売される予定の優れた製品を誇りに思います。

 

当社のモータースポーツへの挑戦。なかでもフォーミュラ1は、私が大きな情熱を注いでいる分野です。複数の責務を負い、ザウバーグループの株式を100%引き継ぐことになり、2026年のFormula 1参戦に向けた準備を、さらに加速できると確信しています。

 

 

アウディF1チームのCEOに就任したアンドレアス ザイドルと、一緒に仕事ができることをとても嬉しく思います。彼はまさに、私たちの意欲的な計画に適任です。自動車メーカーだけでなくフォーミュラ1チームでの指導的役割を通じて得た幅広い経験を持つ彼は、今回のプロジェクトに多大な貢献をしてくれるでしょう。

 

ドイツのパッサウで生まれたアンドレアス ザイドルは、BMWのフォーミュラ1プログラムでモータースポーツのキャリアをスタートして、在職中にレースオペレーションのディレクターも務めました。

 

チーム代表として、ザイドルは複数の世界タイトルと、ル・マン24時間レースで3回の総合優勝を経験しています。またザイドルは、2019年から2022年までマクラーレンF1チームの代表を務め、2023年にザウバーグループのCEOに就任しました」と自身が成功を目指すことへの意欲と共にザイドル氏の実績を高く評価した。

 

最後にアンドレアス ザイドル氏は、「私のことを信頼してくれたゲルノート デルナーとオリバー ホフマンに感謝すると共に、アウディF1チームのCEOとして、アウディをフォーミュラ1参戦へと導き、モチベーションの高いチームを組織することを、今から楽しみにしています。

 

私たちは、アウディスポーツの拠点があるノイブルクだけでなく、ザウバーの本拠地ヒンヴィールでも、より競争力を高めるための明確なロードマップを敷いており意欲的な目標があります。現在、当チームは、これらの目標の実現に向けて進行中ですが、アウディAGによるザウバーの完全買収によって、こうした取り組みが更に加速されることでしょう」と結んでいる。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。