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2020年11月13日【テクノロジー】

視覚障害者向けAIスーツケースの実証実験開始

山田清志

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 視覚障害者にとって朗報と言っていいかもしれない。視覚障害者が自立して街を移動するのを助けるAIスーツケースの実証実験が始まった。そのAIスーツケースにはカメラをはじめとしたさまざまなセンサーがついており、音声などで視覚障害者を誘導する。(経済ジャーナリスト 山田 清志)

 

実証実験を行うのは「次世代移動支援技術開発コンソーシアム」という一般社団法人で、2020年2月にアルプスアルパイン、オムロン、清水建設、日本アイ・ビー・エム(IBM)、三菱自動車工業の5社によって設立された。きっかけはIBMの浅川智恵子フェローが米国カーネギーメロン大学で行った視覚障害者のためのスーツケース型誘導ロボット「Cabot」の研究だったそうだ。

 

 

 近年、高齢化に伴う視力の低下や緑内障をはじめとする目の疾患発症により、視覚障害者は増加しており、日本には推定164万人いて、そのうち全盲の視覚障害者数は19万人弱ののぼるという。しかも、今後その数が加速度的に増えていくという研究結果も出ているのだ。

 

日本では、2006年6月の「バリアフリー新法」、16年4月の「障害者差別解決法」が施行されて以降、障害者に対する対策は進んでいるものの、視覚障害者は通勤や通学をはじめとした社会生活に欠かせない移動に依然として困難を抱えている。

 

 

そこで、こうした課題を解決するために5社が集まって団体を設立し、視覚障害者が自立して街を移動することを助ける総合ソリューション「AIスーツケース」の開発に取り組むことになったわけだ。旗振り役は日本IBMで、参加企業が技術や知見を持ち寄って今回のAIスーツケースを完成させた。それは、肩につけたウェラブルデバイスとスーツケース型ナビゲーション・ロボットがセットになったもので、移動とコミュニケーションの両方を解決するものだという。

 

 AIスーツケースの基本的な機能については6つある。(1)位置情報と地図情報から目的までの最適ルートを検索する機能(2)音声や触覚などによる情報提示を交えながら誘導する機能(3)映像およびセンサーの情報から障害物を認識し避ける機能(4)位置情報とクラウド上の知識情報から周囲のお店の案内や買い物の支援を実現する音声対話機能(5)映像から知人を認識し、表情や行動などから相手の状況を判断し、円滑なコミュニケーションを支援する機能⑥映像およびセンサーの情報から周囲の行動を認識し、「行列に並ぶ」といった、その場に応じた社会的な行動を支援する機能だ。

 

そのほか、新型コロナウイルス感染症への対応として新機能を追加したそうだ。例えば、映像やセンサーの情報から人とのソーシャルディスタンスを確保しながら誘導するほか、マスク着用の有無を判定して音声と振動で通知といった機能だ。

 実証実験は、まず三井不動産が管理運営する商業施設コレド室町3(東京・日本橋)から開始し、国内の商業施設、公共交通機関、大学構内などへ拡大していく計画だ。期間は2020年11月12日~2021年4月30日までを予定している。

非常に反響が多いそうだが、今のところ発売時期や価格については未定で、まずは搭載機能の性能や使いやすさなどの評価・検証をしていくとのことだ。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。