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2020年12月18日【SDGs】

富士経済、次世代電池の世界市場調査

NEXT MOBILITY編集部

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富士経済・ロゴ

 

富士経済は12月18日、「2020次世代電池関連技術・市場の全貌」を発表した。この調査は、現行のリチウムイオン二次電池(LiB)と比較して高い安全性や高容量化を実現する可能性があり、現状日本が世界をリードし、国レベルで開発・実用化に向けて注力している全固体電池の市場を調査・分析したもの。

 

対象となっている市場は、全固体電池4品目に加え、非リチウム系二次電池7品目、新型リチウム二次電池8品目、次世代電池材料6品目。加えて、応用製品(アプリケーション)3品目における次世代電池の採用動向や次世代電池の製造プロセスについても整理している。
※市場は生産金額ベースで捉えている

 

 

■2035年市場予測
– 全固体電池 2兆1,014億円
 ~高分子系や酸化物系が先行するが、xEV向けを中心に硫化物系が大きく伸びる~
【xEV向け全固体電池(容量ベース)】 101,660MWh
 ~LiBと比較して航続距離の延長や安全性の向上により採用が増加~
– 非リチウム系電池 555億円
~2030年以降、ナトリウムイオン二次電池を中心に市場が本格化~

 

 

<調査結果の概要>

■全固体電池の世界市場

 

現状、酸化物系と高分子系の市場が立ち上がっており、2020年は34億円が見込まれる。当面は酸化物系、高分子系がけん引するが、将来的にはxEV向けの需要を中心とした硫化物系の伸びが期待される。錯体水素化物系は2030年頃から市場が立ち上がるとみられる。

 

– 硫化物系
硫化物系は、参入電池メーカーが2020年代前半の実用化に向けて研究・開発を進めており、現状はサンプル出荷が開始された段階である。当面の採用は宇宙向けなどの特殊用途に限定されると想定される。

 

量産技術の確立などの面で課題があるものの、将来的にはxEV向けで需要増加が期待される。2020年代前半には、大手自動車メーカーが硫化物系を搭載したEVを発売するとみられ、2025年頃から採用車種の増加が予想される。以降、中国電池・自動車メーカーの参入も予想され、市場が活発化すると想定される。2030年頃から本格的な普及段階に入り、他モビリティにも採用が波及するとみられ、2035年の市場は1兆5,775億円が予測される。

 

製造プロセスは量産や大面積化が可能な湿式塗工法が有力である。この製法では現行のLiBの製造技術が応用できるため、量産規模の拡大に伴い低コスト化が進展し、ESS(エネルギー貯蔵システム)など他大型用途への展開も期待される。

 

 

– 酸化物系
酸化物系は、タイプごとに異なるアプリケーションでの採用を目指して製品化が進められている。大型用途を想定するバルク型(全固体/疑似固体)と、小型用途で実用化が進む薄膜型/積層型に分けられる。

 

バルク型は、xEVをターゲットとして研究開発が進められているが、全固体電池の実用化は技術的なハードルが高いため、現時点では疑似固体電池が製品化されている。疑似固体電池は、固体電解質を主材料としてイオン液体やゲルポリマーを微量添加しており、全固体電池と比べると性能は劣る。しかし、現行のLiBと比べて安全性が高く、パック当たりの体積エネルギー密度向上、入出力特性の改善が進むなどの利点があるため、2020年代前半にはEVへの搭載が予定されており、普及が進むとみられる。バルク型の全固体電池については、中国電池メーカーによる疑似固体電池からの技術進展や、欧米ベンチャー企業による研究開発により、2030年代にxEVに搭載可能な製品が実現するとみられる。

 

薄膜型は、2013年頃から製品化が進められており、ウェアラブル機器やICカード、IoT関連の採用が期待される。薄型で、省スペースや基板実装が可能などの特徴があるが、製造コストが高く、容量の増加が難しいため、採用アプリケーションは限定されるとみられる。積層型は、MLCCやチップインダクタの技術が高い日本電池メーカーが積極的に展開している。小型で耐熱性や安全性に優れるなどの利点があり、基板実装が可能であるためアセンブリコストや搭載スペースの削減も期待されている。センサーや無線通信モジュールなどのIoT関連、ウェアラブル機器、太陽光発電と組み合わせたエネルギーハーベスティングなどでの採用が期待される。

 

– 高分子系

高分子系は、EVやEVバス、ESS向けの展開が一部でみられ、現状は欧州での需要が大部分である。安全性が評価されており、EVやESSで採用が進むと予想される。中国電池メーカーが製品化・量産化を進めており、容量をはじめとした性能面での課題が改善されることで、2030年以降に市場が本格化するとみられる。

 

– 錯体水素化物系
錯体水素化物系は、2020年代前半まで材料の基礎開発と実証実験が進められ、2025年前後の商品化が期待される。参入電池メーカーはEVでの採用をターゲットとしているが、性能評価や量産体制の整備に時間を要するため、耐熱性や高容量密度を必要とする特殊用途やウェアラブルなどの小型用途から採用が始まるとみられる。

 

 

 

【xEV向け全固体電池の世界市場(容量ベース)】

 

 

xEVは、全固体電池の搭載により、現行のLiBと比べて航続距離延長や安全性の向上が期待できるため、量産技術の確立によって将来的な採用増加が予想される。当面は高級車種を中心に普及が進むとみられる。

 

現状、高分子系の採用が欧州の一部EVバスなどでみられる。高分子系以外は技術的なハードルが高く、界面形成の課題や量産技術が未整備であることから、実用化を優先して酸化物系の疑似固体電池による製品化が進められている。

 

当面は、高分子系や酸化物系の疑似固体電池の採用が中心になるが、硫化物系は安全性に優れ、リチウムイオン輸率が高く急速充放電が可能なことなどから注目されている。2020年代前半には硫化物系を搭載したxEVが発売される予定であり、2025年頃から硫化物系の需要が増えるとみられる。各自動車メーカーは、全固体電池の開発や関連するスタートアップ企業への出資に積極的であるため、全固体電池の採用は2030年代に急伸すると予想される。

 

 

 

■非リチウム系電池

 

 

金属空気、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムの各二次電池を対象とした。レアメタルフリーや現行のLiBを超える大容量などの利点から、電池メーカーや関連機関が研究開発を進めている。

 

ナトリウムイオンは、欧州や中国のベンチャー企業を中心に実用化を目指した研究開発が進められており、徐々にではあるが、ESSやUPS(無停電電源装置)などのエネルギー貯蔵、バックアップ電源用として市場が形成されるとみられる。また、現行のLiBと比べて入出力特性に優れることなどから、商用車を中心にxEV向けでも採用が進むと予想される。ESSやxEV向けが中心となるが、量産規模の拡大による低コスト化が進めば、鉛蓄電池の代替として始動用バッテリーや電動二輪車などでの採用も期待される。

 

金属空気、カリウムイオン、マグネシウム二次電池は、2030年以降に市場が立ち上がるとみられる。

 

 

<調査対象>

 

 

<調査方法>
富士経済専門調査員による参入企業および関連企業・団体などへのヒアリングおよび関連文献調査、社内データベースを併用

<調査期間>
2020年7月~10月

 

■「2020次世代電池関連技術・市場の全貌」
https://www.fuji-keizai.co.jp/report/detail.html?code=142004808

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域の取材活動を経て同社出版局へ。コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に環境&リサイクル紙、車両ケア&整備ビジネス専門誌等の創刊誌編集長を歴任。独立後は一般誌、Web媒体上でジャーナリスト活動を重ね30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。