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2024年2月16日【CASE】

GM、ハンズフリー運転網を全米121万Kmに拡大

坂上 賢治

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GM( General Motor/ゼネラルモーターズ )は2月15日( 米国デトロイト発 )、自社のハンズフリー運転機能〝Super Cruise(スーパークルーズ)〟の利用範囲を、北米エリアの高速道路網で約75万マイル( 約121万キロメートル )まで拡大させた。

 

GMでは、「常にハンズフリー運転のリーダーであり続けるために、立ち止まっている訳にはいきません。より多くのお客様から、カスタマーサティスファクションを獲得するには、我々のテクノロジーへ触れて頂ける機会を、更に拡大させる必要があります。

 

 

そこで我々は、当社の主力技術であるスーパークルーズの対応範囲を、高速道路上に於いて大きく拡大させました。その結果、米国とカナダを含めスーパークルーズの対応距離は約75万マイルになりました。

 

スーパークルーズのような先進運転支援システム ( ADAS ) を導入した上で、安全性をも高めることは、未来を思わせるドライビング体験を介して、ドライバーへ運転することの愉しさを醸成する試みだけでなく、GMに厚い信頼を寄せて頂くことも重要なステップとなります。

 

そもそも今回、お示した75万マイルという距離は、地球から月まで3回旅行することに匹敵し、地球上に於いては、ニューヨーク市からサンフランシスコまでの陸路を130回往復することに相当します。

 

 

当社のスーパークルーズは、この拡大策を介して北米最大のハンズフリー領域を持つことになり、それは他社の運転支援機能が示すハンズフリー範囲の6倍にもなります」と、全米に於ける自社技術の適応範囲の大きさを強調した。

 

またGMの副社長でADAS担当を務めるアナンタ・カンチェラ氏は、「GMは、厚く信頼頂けるハンズフリー運転を、より多くの車両、より多くの道路で、より多くのドライバーが、愉しんで頂けるために全力を注いでいます。

 

その技術の重要部分は、当該車両に搭載したLiDARセンサーなどのチューニング技術と共に、高速道路の高精度マッピングとの組み合わせで始めて実現するものです。

 

 

今回の高速道路上の対応範囲の拡大により、安全かつ安心してスーパークルーズの魅力をお愉しみ頂けるようになりした」と述べた。

 

ちなみに、GMのスーパークルーズは、2010年代初めの段階でドライバーが走行中にハンドルから両手を離した状態で、自動運転が維持されるハンズオフ運転の実現を視野にした技術ロードマップを公開。

 

その7年後の2017年に、米自動車産業界初のハンズフリーADASとしてキャデラックブランドの一部車種へ、スーパークルーズと称したレベル2の自動運転機能を投入した。

 

以降、同社はそのネットワーク範囲と対応車種を段階的に拡大。程なくカナダと米国の主要高速道路を含めた40万マイル ( 64万キロメートル ) に到達。そして今拡張によって、地方都市や郡区を結ぶ幹線道路も、部分的に対応範囲に加わっている。

 

 

その技術的な仕組みは、GPSデータと高精細地図による道路マッピングデータを参照。その上でLIDARセンサーから発射されるレーザーや、カメラを併用してハンズフリーの自動運転を可能にするシステムとなっている。

 

更にGMは今後、自動運転レベルを3から4水準へと順次到達させるべく、EV構想「アルティウム」を背景にQualcomm( クワルコム )と連携。新たな次世代自動運転システム「Ultra Cruise( ウルトラクルーズ )」の早期量産化に向けた準備を進めている段階にある。

 

このウルトラクルーズの対象車両には、クワルコムが開発したSoC( システムオンチップ )を採用したコンピューター・アーキテクチャーを搭載。700万〜800万画素のロングレンジカメラにより、交通標識や信号機、他の車両、歩行者を検知。車両の4隅に設置された短距離レーダーは、半径90メートル以内の物体を検知する。

 

車両の前後に設置された3つの4D長距離レーダーは、車両の速度に対する物体の位置や方向、高さを検知することで、高速道路でのアダプティブクルーズコントロール( ACC )の速度管理や車線変更操作などを行い、これにLiDARセンサーを組み合わせて、悪天候でも車両の周囲360度を正確に検出できるようになるという。

 

更に今回のスーパークルーズと同じく、ウルトラクルーズでもステアリングコラムの上部に赤外線小型カメラを設置。常にドライバーの頭の位置や視線を監視し注意喚起を行い、車両運行中の安全を確保する。

 

 

そんな流れから今日のスーパークルーズは、自動運転の普及機能の先兵役としての役割を担っている。そのスーパークルーズを実際に使用するには、まずはアダプティブクルーズコントロールをオンに。そして高速道上に於いて車両を車線の中央を走行させる。

 

 

その際、速やかにスーパークルーズ自らが、自車機能と互換性のある道路を走行していることを検出。必要条件が満たされている場合( 例えば、車線区分線が表示されている、GPS が利用可能、システム障害がないなど )、インストルメントパネル内のディスプレイ上に、スーパークルーズの利用可能を知らせるシンボルアイコンが白色に点灯する。

 

これを確認してステアリングホイール上のスーパークルーズの作動ボタンを押すと、ステアリングホイール内に組み込まれたアンビエントランプがグリーンに点灯。以降は、地図データの把握も含めて最も見通しが良い場合、最大2500メートル先を車載センサーやカメラを頼りに捉えながら、自動車レーンの中央を正確にトレースしていく仕組みだ。

 

 

同一レーン上の速度の遅い前車を追い越したい場合は、追い越しのためのターンシグナル操作を作動させるか、ステアリングを握って追い越しのための車線変更操作をすれば良い。この際一時的に車両は、特定車線の中央から外れるため、再び車線の中央に戻るまでアンビエントランプが青色に点灯し続ける。

 

なお、スーパークルーズ利用中は常に視線を前方に置いておく必要があり、ドライバーの視線が外れた際は、ステアリング内のアンビエントランプが赤色に変わり、警告を発して前方に視線を戻すか、ステアリングを握るよう促され、従わない場合、最終的には車両が路肩などに自動停止する。

 

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。