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2024年4月25日【ESG】

ホンダ、カナダで北米エリアのEV生産体制確立へ動く

坂上 賢治

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ホンダ・オブ・カナダ製造所内を並んで歩くカナダのジャスティン・トルドー首相(中央)とホンダの三部敏宏社長兼最高経営責任者(左から2人目)

 

北米での将来的なEV需要の増加に向け、EV供給体制を強化

 

本田技研工業( ホンダ )は4月25日( カナダ・オンタリオ州アリストン発 )、将来を見据えた北米地域のEV需要増に応えるべく、新工場建設を含むEV生産に係る包括的バリューチェーンをカナダ国内に構築するための検討を開始した。( 坂上 賢治 )

 

検討内容は、合弁パートナー企業からの出資額も併せて約150億カナダドル 110億米ドル)の投資を行い、包括的なEVバリューチェーンを構築するべく提携。これにより北米地域のEV供給能力を強化するもの。

 

投資にあたっては、カナダ連邦政府の「インベストメント・タックスクレジット」制度による補助金に加え、オンタリオ州からも補助金を受ける予定であり、今後、カナダ連邦政府やオンタリオ州と協議を進めていく。投資額の詰めについては、約半年間かけて精査を進め、今秋の最終決定後に改めて詳細を明らかにする予定という。

 

一方、投資に係る生産工場の建設計画は、EV専用の完成車工場(以下、EV工場)・EV用バッテリー工場(以下、バッテリー工場)の建設であるが、より具体的にはパートナー企業との合弁会社設立を背景とした、セパレーターや正極材といったバッテリーの主要部材のカナダ国内での生産体制の確立を目指す。

 

そこでホンダは、オンタリオ州アリストンへのEV工場と、バッテリー工場を建設するための要件評価を開始。目下、検討されているホンダのEVバリューチェーンの整備には、POSCO Future M(二次電池素材の正極材と負極材を同時生産する企業)との合弁パートナーシップによる正極活物質および前駆体(CAM/pCAM)加工プラントと、旭化成(車載バッテリー用セパレーターの生産企業)との合弁パートナーシップによる拠点建設が挙がっている。

 

これら建設検討に入っているEV関連工場は、環境負荷を最小化する一方で革新的な生産技術も併せて導入予定であり、年間最大生産能力としては24万台規模を想定。稼働開始は2028年を目指している。また、バッテリー工場の年間最大生産能力は36GWh規模となる。

 

上記を踏まえてホンダは、オンタリオ州の既存の完成車生産を担うHonda of Canada Manufacturing( ホンダ・オブ・カナダ・マニュファクチャリング )の従業員4,200 人の雇用規模を確保することに加えて、同工場に隣接して建設する2つの工場の稼働により、新たに約1,000人の人員追加を想定している。

 

この上記目標実現に向けた取り組みの第一弾として、米オハイオ州の工場をEV生産のハブ拠点に位置づけ、生産設備の改修や、LGエナジーソリューションとの合弁によるバッテリー工場の建設など、北米に於けるその他のEV生産体制についても基盤拡張を進めている。

 

その第二弾の取り組みとなるカナダでは、オハイオ州の拠点建設で培ったEV生産のノウハウをベースに、カナダの豊富な資源やクリーンエネルギーを活用し、バッテリーを中心とした原材料の調達から完成車生産までの包括的なバリューチェーンの構築を目指していく。

 

これによって、EVの基幹部品であるバッテリーの安定的な供給体制を確立すると共に、EV生産体制全体のコスト競争力を高める。更に車載蓄電の二次利用やリサイクルに至るまでを視野に入れ、当該車両のライフサイクル全域を通じた価値創出を実現。

 

炭素の排出を確実に削減しつつも高い収益性を併せ持つ事業基盤の確立と、2040年にEV・FCEV の販売比率を100%とするカーボンニュートラル社会の実現を達成させる構えだ。

 

以上の取り組みに際して本田技研工業取締役で代表執行役社長の三部敏宏氏は、「ホンダは2050年カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みをグローバルで進めています。

 

北米に於いては米国でのEV生産体制の構築に続き、今回ここカナダで、カナダ連邦政府やオンタリオ州政府の支援も頂きながら、包括的なEVのバリューチェーン構築の検討を開始しました。当社は、北米での将来的なEV需要の増加に向け、EVの供給体制を強化していきます」と述べた。

 

対してHonda Canada Inc., プレジデント兼CEOのJean Marc Leclerc氏( ジャン・マルク・ルクレール )は、「Honda of Canada Manufacturingは、世界的にも優れた四輪車生産工場の一つとして、40年近くに亘り、進化への飽くなき挑戦を続けてきました。

 

今回の投資は、カナダの自動車産業において歴史的な取り組みです。これは、Honda of Canada Manufacturingの卓越した生産技術や、優れたスキルを持つ従業員への高い評価であると共に、カナダに於けるEV生産のエコシステムが、長期的に見てHondaにとって非常に魅力的であることを示しています」と結んでいる。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。