NEXT MOBILITY

MENU

2024年4月22日【トピックス】

日本発、無人航空機の衝突回避でISOが技術報告書を公開

坂上 賢治

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

図1 NEDOの委託事業における衝突回避の実証実験イメージ

 

国際標準の速やかな規格開発に貢献し、無人航空機の社会実装を加速

 

NEDOの委託事業「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト」での成果を基に4月15日、日本無線と三菱総合研究所が取りまとめた無人航空機の衝突回避技術に関する国際標準化機構(ISO)の技術報告書「ISO/TR 23267:Experiment results on test methods for detection and avoidance (DAA) systems for unmanned aircraft systems」(ISO/TR 23267)が公開されたことが(4月22日)明らかにされた。

 

この技術報告書「ISO/TR 23267」は、無人航空機用衝突回避システムに関する規格「ISO/DIS 15964 Detection and avoidance system for unmanned aircraft systems」(ISO/DIS 15964)の要求事項の根拠と位置付けられ、新たな国際標準の速やかな規格開発に貢献することで、無人航空機の社会実装の加速が期待できるものとなっている。

 

日本発のISOによる技術報告書の内容は以下の通り

 

1.概要
一般にドローンと呼ばれる小型~中型の無人航空機は、既に農業分野などで利用が広がっており、更には災害時の物資運搬や遭難者捜索、物流インフラなどの用途での活用に、大きな期待が寄せられている。

 

しかしその一方で、他の航空機との衝突をどのように回避するかが無人航空機の安全利用に於ける喫緊の課題として明確になってきている。

 

そこでNEDOの「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト(ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト)」では、2017年度から無人航空機の衝突回避技術の開発を開始し、2021年度までに様々な実証実験を行い、衝突回避技術に関する複数の研究開発成果を公開してきた。

 

また2023年度より、日本無線と三菱総合研究所が主要な研究開発成果を取りまとめ、日本発として提案したISO/TR 23267が2024年4月15日に公開された。

 

現在、無人航空機システムの国際標準化を担当するISO/TC 20/SC 16では、レーダー、光学センサー(カメラ)などを無人航空機に搭載した衝突回避システムに関するISO/DIS 15964を開発中であり、発行された技術報告書「ISO/TR 23267」は、ISO/DIS 15964の要求事項の根拠と位置付けられるものになる。

 

2.技術報告書の内容
無人航空機の衝突回避に関しては、2023年10月に無人航空機の運航手順の規格である「ISO 21384-3:2023 Unmanned aircraft systems Part 3: Operational procedures」(以下、ISO 21384-3:2023)が衝突回避のCONOPS(Concept of Operations:運用構想)として新たな章を追加し、6ステップからなる基本的な衝突回避手順を規定した。

 

更に、この6ステップの衝突回避手順を具現化する衝突回避システムとしてISO/DIS 15964の規格が現在開発されている。

 

そうしたなかで今回公開された技術報告書「ISO/TR 23267」は、ISO/IEC 専門業務用指針2023年(第3版)の3.3TR(技術報告書)(PDF4.7MB)で示される、「関連するIS(国際規格)に関する特定の要求事項に係る根拠を提供するため」を目的として、NEDOの委託事業における衝突回避の実証実験の中から重要な成果を取りまとめたもの。

 

具体的には、無人航空機の衝突回避6ステップで使用されるハードウエア・ソフトウエアを本文に提示し、これを裏付ける根拠として各種実証実験結果などをAnnex(別紙)で示しつつ、引用先をBibliographyに明記する構成とすることで、レーダーと光学センサー(カメラ)を備えた機体による衝突回避システムの手順について説明している。

 

また、衝突回避のモデリングとシミュレーション、機器単体の定量的評価試験、ハードウエア・ソフトウエアを試作搭載した飛行試験へとステップアップするテスト方法を解説することで、要求事項の根拠となる衝突回避CONOPSの6ステップに於ける各種センサー機器の役割や探知・認識距離などを明示している。

 

図2 無人航空機と有人航空機の衝突回避6ステップ

表1 衝突回避6ステップで使用されるハードウエア・ソフトウエア

表2 衝突回避試験における探知・認識距離

 

<各社の役割>
日本無線:衝突回避システムの評価試験と飛行実証
三菱総合研究所:技術報告書(案)の作成

 

3.今後の予定
日本発の技術報告書「ISO/TR 23267」が公開されることで、世界各国の無人航空機に関する製造者、販売者、購入者、顧客、業界団体、ユーザー、規制当局などステークホルダーが、個別に進めてきた衝突回避システムに対して、共通概念が提供されることが可能となり、現在開発が進められているハードウエア・ソフトウエアの国際規格(ISO/DIS 15964)の要求事項の根拠と位置付けられることで、早期の国際標準化を推進し、将来に向けた国際的な無人航空機の社会実装への貢献が期待される。

CLOSE

坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。