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2018年5月16日【経済・社会】

国交省、「冬期道路交通確保対策検討委員会」の中間報告

NEXT MOBILITY編集部

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国土交通省は、突発的な大雪に対する道路交通への障害を減らすための具体的な対策など、今後取り組むべき課題を検討するため、平成30年2月に学識経験者等からなる「冬期道路交通確保対策検討委員会」を設置、3回の検討会を開催。

 

5月16日、これまでの検討結果を踏まえ、「大雪時の道路交通確保対策中間とりまとめ」として、提言を公表した。

国土交通省・ロゴ

提言では、集中的な大雪時に、これまでの通行止めを回避するという道路交通確保に対する考え方を転換。

 

道路管理者の連携により、最大限の除雪に努めつつ、関係機関、道路利用者や地域等に協力を求めながら、道路ネットワーク全体として大規模な車両滞留の抑制と通行止め時間の最小化を図る「道路ネットワーク機能への影響の最小化」を目標とすべきとした。

 

また、大雪時の道路交通確保に向けた道路管理者等の新たな取り組みとして、以下について示した。

 

・タイムライン(段階的な行動計画)の作成
・チェーン等の装着の徹底
・集中的な大雪時の予防的な通行規制・集中除雪の実施
・予防的な通行規制に伴う広域迂回の呼びかけ

 

これら提言を受け、国交省は、提言に盛り込まれた新たな取り組みの実施に向けて、検討を進めるとしている。

 

 

[大雪時の道路交通確保対策 中間とりまとめの概要]

 

<Ⅰ 冬期の道路交通を取り巻く環境>

 

○近年、24時間降雪量の増大、積雪深さの観測史上最大の更新など、雪の少ない地域も含め、集中的な大雪(※)が局所的に発生している。

 

※:大規模な車両滞留や長時間の通行止めを引き起こす恐れのある大雪

 

○道路ネットワークの整備が進む中で、車社会の進展、輸送の小口多頻度化等により、国民生活や企業活動の道路交通への依存が高まっており、大雪時の車両の滞留は、国民生活や企業活動に大きく影響している。

 

○集中的な大雪時であっても、通常時と比べて自動車の利用台数に大きな変化が見られない。

 

→冬期の道路交通を取り巻く環境は非常に厳しい状況

 

<Ⅱ 大雪時の道路交通確保に 向けたこれまでの取り組み>

 

1.繰り返し発生する大規模な車両滞留

 

○集中的な大雪時に大規模な車両の滞留が繰り返し発生、解消までに数日間を要するケースもある。

 

○高速道路の早期通行止めに伴い、並行する国道等に車両が流れ込み、大規模な車両滞留につながるケースも多い。

 

○チェーン未装着の大型車による影響が大きい。

 

2.道路管理者等によるこれまでの主な取り組み

 

○異例の降雪が予想される場合、「大雪に関する緊急発表」を行うなど道路利用者に注意喚起を実施。

 

○関係機関の連携強化を図るため、地域単位で「情報連絡本部」を設置。

 

○除雪優先路線・区間の設定、除雪体制の応援等を実施。

 

○平成26年の災害対策基本法改正に基づき、道路管理者による立ち往生車両・放置車両等の移動が可能。

 

→これらの取り組みを実施している一方で、大規模な車両滞留や長時間の通行止めが繰り返し発生している。

 

<Ⅲ 大雪時の道路交通確保に対する考え方の転換>

 

●これまでの考え方

集中的な大雪時は、「自らが管理する道路を出来るだけ通行止めにしないこと」を目標として対応する。

 

●今後の考え方

道路ネットワーク全体として大規模滞留の抑制と通行止め時間の最小化を図る 「道路ネットワーク機能への影響を最小化」を目標として対応する。

 

<Ⅳ 大雪時の道路交通確保に向けた新たな取り組み>

 

1.道路管理者等の取り組み

 

(1)ソフト的対応

 

○タイムライン(段階的な行動計画)の作成
・関係機関と連携し地域特性を踏まえ作成・合同訓練実施・気象予測精度向上。

 

○除雪体制の強化
・地域に応じた体制強化・道路管理者間の相互支援などの構築。

 

○除雪作業を担う地域建設業の確保
・契約方法の改善 ・予定価格の適正な設定等。

 

○除雪作業への協力体制の構築
・道路協力団体等地域や民間団体が参加できる仕組み等。

 

○チェーン等の装着の徹底
・チェーン未装着の大型車等の通行制限やペナルティ等の検討。

 

○集中的な大雪時の需要抑制

・出控え等の要請と社会全体のコンセンサス・都市部における公共交通機関との連携した呼びかけ。

 

○集中的な大雪時の予防的な通行規制・集中除雪の実施

・通行止め基準の検討、リスク箇所の事前把握と監視強化・集中除雪による早期開放・広域的な広報、予告の発表による広域迂回の呼びかけ。

 

○立ち往生車両が発生した場合の迅速な対応

・本線等の速やかな通行止め・沿道施設管理者との連携によるUターン場所の確保・滞留車両への物資や情報等の適切な提供。

 

(2)ハード的対応

 

○基幹的な道路ネットワークの強化

・地域の実情に応じて、高速道路の暫定2車線区間や主要国道の4車線化、付加車線等を通じ、ネットワークを強化

 

○スポット対策、車両待機スペースの確保

・カメラ増設、ロードヒーティング等の消融雪設備の整備・SA・PAの拡張や待避所の整備 等

 

2.道路利用者や地域住民等の社会全体の取り組み

 

○集中的な大雪時の利用抑制・迂回

・主体的な利用抑制に取り組む環境の醸成。

 

○冬道を走行する際の準備

・チェーン等の装備の備え

 

3.より効率的・効果的な対策に向けて

 

○関係機関の連携の強化 ○情報収集・提供の工夫 ○新技術の積極的な活用

 

 

■大雪時の道路交通確保対策中間とりまとめ(概要、本文、参考資料)(PDF):
http://www.mlit.go.jp/common/001234888.pdf

 

■提言の概要や「冬期道路交通確保対策検討委員会」の開催状況、資料等。(国土交通省)冬期道路交通確保対策検討委員会のHP:

http://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-council/toukidourokanri/index.html

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。