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2024年3月27日【SDGs】

日本特殊陶業、水素製造と発電が可能な小型SOCシステム開発

坂上 賢治

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Niterra(ニテラ)グループの日本特殊陶業( 社長:川合 尊 、本社:名古屋市東区)は3月27日、開発中の固体酸化物形セル(SOC:Solid Oxide Cell)を使用し、水電解による水素製造と燃料電池による発電を1台のセルスタックで実現するシステム「リバーシブル SOC システム」を開発した。

 

リバーシブルSOCシステム開発の背景は、 再生可能エネルギー由来電力の導入が進んでいるなかで、同エネルギーは発電量が変動するため、需給バランス上の電力の余り、あるいは不足する余剰電力の利活用が社会的な課題となっている。

 

これを受けて同社は、兼ねてから有する燃料電池の技術を応用し、セルスタック 1 台で 水電解による水素製造と燃料電池による発電が可能な 「リバーシブルSOCシステム」を開発した。

このリバーシブルSOCシステムシステムに使われるセルスタックは、「電気を使って水素を生成するSOEC」と、「水素と空気を使って電気を生み出す SOFC 」のそれぞれの動作が可能だ。

 

 

どちらもCO2などの温室効果ガスを排出しないため、カーボンニュートラルの実現には欠かせない技術といえる。また単一のスタックで水素製造と発電を切り替えながら使えるため、SOECとSOFCの併設に比べてシステムをコンパクトにすることができ、設置面積が小さくなるなどのメリットもある。

 

しかも既存のSOCシステムの場合は 、セルスタックを700℃前後の高温に保持する必要があり、この熱エネルギーのマネジメントがシステムの効率を大きく左右する。

 

対して同社システムでは、内部で発生する熱を有効に活用できる小型で高効率なホットモジュール(セルスタック、熱源、ガス配管類、断熱材で構成された構造体。高効率でセルスタックの700℃前後の昇温、高温の保持が可能)を搭載。高温環境下でのセルスタックの電気化学特性を制御する技術と熱流体解析技術を応用した。

 

これを踏まえた具体的な利用シーンとしては、発電量の季節間変動が大きい太陽光発電と水素貯蔵システムを組み合わせて、夏の余剰電力をSOECで水素に変換貯蔵。冬に不足する電力を夏に貯めた水素によるSOFC発電で補うことで、季節間の電力需給の調整が可能とした。

 

また災害などで停電が発生した際も、貯めた水素でいつでも発電でき 、昼夜問わず柔軟にエネルギーを供給できる電源となるため 、非常用電源としての役割も果たすこともできる。

 

同社では、このリバーシブルSOCシステムに係る将来展望について、「今後は2024年度に実証をおこないながらエネルギーマネジメントシステムとしての検証をしていきます。

 

実証ではSOCシステムの耐久評価実績の取得、水素貯蔵システムと組み合わせた稼働実績の取得、SOCシステムの変換効率向上のための改善活動などを予定しています。また、社会へのSOCシステム普及促進のための啓蒙活動、協業パートナーの探索をおこない、2025年度中の製品化を目指します。

 

当社はSOC事業に於いて、セルスタック、ホットモジュール、システムを広くお客さまに提供できる、業界のリーディングカンパニーを目指し、持続可能な社会の構築に貢献してまいります」と話している。

 

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。