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2018年4月3日【テクノロジー】

NTTデータ、イングランド銀行とのXBRLに関する実証実験を完了

NEXT MOBILITY編集部

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NTTデータは、英国中央銀行のイングランド銀行(BoE)と、ドイツのスタートアップ企業のReportix(レポーティクス)とともに、XBRL(注1)形式データの格納、分析に関する実証実験を完了、その概要を発表した。

 

同社開発のXBRL DWHソリューションの利用により、データ形式変更に伴うメンテナンスコストの約7割の削減と、自在で機動的なデータ分析が可能になると云う。

NTTデータ・ロゴ

金融監督業務は、時代と共にその内容が変更され、それに伴い監督当局が金融機関から収集する情報も変化する。

 これまで監督当局は、これらの変更のたびに保有する情報システムを改修、コスト負担が続いてきたと云う。

 

今回の実証実験では、RegTech(注2)の一環としてNTTデータが開発したXBRL DWHソリューション(NEXTERA XBRL:ネクステラ エックスビーアールエル)を利用、システム改修をせずに多様なデータの取込・分析ができることを確認した。

 

このソリューションは、監督当局の分析業務の利用だけでなく、どのようなXBRLデータでも個別対応なしで分析することが可能なことから、金融機関や機関投資家の投融資判断業務等、XBRLデータ活用の幅が広げられるとしている。

 

[背景]

 

現在、世界60カ国以上、100以上の金融監督当局が、金融機関から財務やリスク等の報告を受けるのにXBRL形式を活用(注3)。

 特に欧州では、CRD IV(注4)、Solvency II(注5)などの規制データ量の増加に伴い、当局側での分析の効率性やコストの課題が膨らんでおり、例えばBCBS239(注6)対応コストだけでも全世界で年間15~20億ドル(注7)に達すると云う。

 

一般にXBRL形式のデータは、監督当局がタクソノミと呼ばれる報告事項(定義)を設定し、報告する金融機関や企業側がインスタンスと呼ばれる報告データを作成。

 監督当局が収集する情報を変更する場合、このタクソノミも変更する必要があり、それに応じて収集するインスタンスの形式も変更される。

 このため収集データは経年で比較すると項目の一貫性が無く、監督当局はデータを格納・分析する情報システムを都度改修していると云う。

 

BoEは、FinTechの革新技術をどのように活用できるかを探る目的で、サイバーセキュリティー、分散型元帳技術など複数のテーマを設定した「Fintech Accelerator Program」として、共同で実証実験を行う一般企業を定期的に募集している。

 

今回、BoEは、XBRLの課題を解決できるソリューションをテーマに設定し、NTTデータ、NTTデータUK、およびReportixは、NoSQLデータベースを活用した検索性と保守性の両立を実現したデータ統合サービスの提供実績やノウハウが評価され、2017年9月から2018年2月まで実証実験を行うこととなった。

 

監督当局による金融機関への監督に伴うXBRLデータの流れ

監督当局による金融機関への監督に伴うXBRLデータの流れ

 

[実証実験の概要]

 

NTTデータは、XBRL DWHソリューション(NEXTERA XBRL)を開発し、タクソノミとインスタンスの両方を解釈し、細分化してNoSQLデータベースに格納することで、柔軟性(タクソノミの違いや変更に関わらずシステム改修せずにデータを格納)と検索性(高速でのデータ抽出)の両方を実現。

 NEXTERA XBRLでは、XBRLデータの解釈・変換機能としてReportixのCellStoreを、NoSQLデータベースとしてMarkLogic社のMarkLogic Serverをそれぞれ活用している。

 

今回の実験では、BoEから提供された複数種類のタクソノミに基づくXBRLデータを、NEXTERA XBRLを用いてシステムの改修なしで格納し、経年でのデータ比較の可否や検索速度、操作性、他システムへの連携容易性などを評価した。

 

その結果、BoEはWebブラウザベースで直感的に、経年でのデータを抽出・可視化できることを確認するとともに、各種システム改修コストの67%以上の削減が見込まれることを確認したと云う。

 

NEXTERA XBRL導入による課題解決

NEXTERA XBRL導入による課題解決

 

[NEXTERA XBRLの特長]

 

・あらゆるXBRLデータをデータベースメンテナンス不要で取り込む

 

・XBRLデータを各ユーザーが求める形で抽出し可視化する

 

利用者はXBRLの専門的な知識を持たなくても独力でデータを抽出・分析できるため、仮説の立案と検証を機動的に実施できるようになり、分析の幅が大きく広がる。

 

そのため、BoEなど監督当局の分析業務だけでなく、金融機関や機関投資家の投融資判断業務でも利用可能。

 

[今後について]

 

NTTデータは、世界中の規制当局、金融機関、および財務情報を分析する投資家も対象に含めこのソリューションを展開し、RegTechを引き続き推進。業界を問わずMarkLogicを活用したデータ統合サービスを拡充するとしている。

 

注1:XBRLとは、eXtensible Business Reporting Languageの略。海外の会計不祥事以降、適切な財務情報の記述目的として開発されたデータ形式であり、監督当局・金融機関・一般企業の間で主に財務情報の報告で採用。日本では金融庁のEDINETや東京証券取引所のTDnetなどに利用され、また環境省が取り組む環境情報開示基盤整備事業でも活用されている。

 

注2:RegTechとは、RegulationとTechnologyをかけ合わせた造語であり、規制およびコンプライアンスの負担を解決するため新技術を使用すること。

 

注3出典:XBRLインターナショナル “XBRL Around the World”(September 30, 2016) https://www.xbrl.org/xbrl-around-the-world/(英語のみ)

 

注4:CRD IVとは、EUが2013年6月に採用し2014年1月に適用が開始した、「資本要求指令IV(The Capital Requirements Directive IV)」のこと。金融機関および投資会社の財務健全性を獲得するための資本要件パッケージ。欧州銀行監督局(European Banking Authority:EBA)によってXBRLタクソノミが定義されている。

 

注5:Solvency IIとは、EUにおいて2009年4月に欧州議会(European Parliament)、同年11月に欧州連合理事会(Council of the European Union)が採択し、2016年1月に施行された流動性比率規制のこと。保険会社の財務健全性を表す指標のひとつ。欧州保険・年金監督機構(European Insurance and Occupational Pensions Authority:EIOPA)によってXBRLタクソノミが定義されている。

 

注6:BCBS239とは、2013年1月9日にバーゼル銀行監督委員会(Basel Committee on Banking Supervision : BCBS)が公開した、「実効的なリスクデータ集計とリスク報告に関する諸原則」のこと。G-SIBs(グローバルなシステム上重要な銀行)に対して2015年12月末までに遵守することを求めたもの。国内においては、金融庁が2014年6月2日に公表した「主要行等向けの総合的な監督指針」の改正版の中で、G-SIBsの他にD-SIBs(国内のシステム上重要な銀行)に対しても、指定後3年後までにBCBS239の遵守を求めている。

 

注7:SunGard Details Cost and Compliance Issues of BCBS 239(24th November 2014)https://datamanagementreview.com/blog-entry/sungard-details-cost-and-compliance-issues-bcbs-239(英語のみ)

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。