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2023年8月28日【エネルギー】

パナソニック、V2X対応の産業用蓄電システムを発売

山田清志

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パナソニックは8月28日、電気自動車のバッテリーに蓄えた電力をビルや施設内などへ供給するV2X(Vehicle to X)と蓄電池を連携させ、太陽光発電の電気をビルや施設内などで自家消費する新製品「産業用蓄電システム」の受注を12月21日から開始すると発表した。

 

同社はすでに電気自動車の電気を住宅に供給するV2H(Vehicle to Home)システムを販売しており、今回のV2Xで産業用にも広げてシステムの売り上げを大きく伸ばそうと目論む。(経済ジャーナリスト・山田清志)

 

業界初の電気自動車と蓄電池に同時充放電を実現

 

再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)の段階的な値下げや、2050年のカーボンニュートラル実現に向けた脱炭素化、電気自動車の普及の加速、電気代高騰などを受け、太陽光でつくった電気を売電するのではなく、ビルや施設などで利用する自家消費のニーズが高まっている。

 

パナソニックの産業用蓄電システムは、業界初の電気自動車と蓄電池による同時充放電を実現した。最大9kWの太陽光発電による充電、最大6kWの交流出力が可能となり、より多くの太陽光発電をビルや施設内などで有効活用でき、太陽光発電の売電量・系統からの購入電力量を減らし、電力自給率向上に貢献する。

 

 

また、平常時は高度な協調制御により同一共用分電盤に最大4システム接続でき、従来比約4倍の最大出力24kWまで対応可能にした。これによって、負荷に合わせたシステムの構築が可能となり、より幅広いお客にシステムを提供できるという。

 

さらに、単相負荷に対する追従制御で外部制御装置なしでも太陽光発電の全量自家消費を実現。逆潮流発生やRPR動作によるシステム停止リスクを低減することで太陽光発電の継続利用を実現し、自家消費向上が図れる。

 

1セットあたり472万円から設置可能

 

これまで工場に電気自動車の電気を融通するシステムは電力機器大手などが提供していたが、高電圧を必要とする産業用機器を停電時でも動かせるようにシステムを組むため、初期投資が数千万円かかるケースが少なくなかった。これに対して、パナソニックのシステムは蓄電池の台数によって価格が異なるが、1セット472万7800円~901万7800円(工事費別)となっている。

 

ちなみに472万円のセットは産業用パワーステーション1台、産業用蓄電池用コンバータ1台、産業用リチウムイオン蓄電池ユニット(6.3kWh)1台、系統・自立切替器1台で、901万円のセットは産業用パワステ-ション1台、産業用蓄電池用コンバータ2台、産業用リチウムイオン蓄電池ユニット2台、系統・自立切替器1台、産業用V2Xスタンド1台だ。

 

V2Xスタンドは、エアコン室外機1台分より小さい床面積で設置可能なコンパクトサイズで、駐車場の限られたスペースにも設置しやすく、電気自動車の購入時期に合わせて屋外工事のみで後から増設が可能だという。

 

パナソニックは2月に電気自動車の電力を家庭に供給するV2Hと蓄電池を連携させ、太陽光発電の電気を家庭で自家消費するV2H蓄電システム「eneplat(エネプラット)」の受注を開始。2025年度までに年間数万台の販売を計画している。同社は今後もエネルギーソリューションの提供を通じて、快適で豊かな暮らしの実現に貢献していく方針だ。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。