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2024年5月17日【企業・経営】

クニエ、「事業グロースに関する調査レポート」を公開

坂上 賢治

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81%が失敗/経験者314名への調査から見えた“失敗する事業グロース20の特徴”

 

コンサルティングファームのクニエは5月17日、新規事業の立ち上げ後の「事業グロース」に於ける成功と失敗の要因抽出を目的として、事業グロースに携わったことのあるビジネスパーソン314名を対象とした実態調査を実施した。

 

その結果、事業グロース経験者のうち81%が「事業開始から3年目経過時点での最も重要なKPIの達成率が100%に満たない」と回答しており、「81%の事業グロースが失敗している」ことが分かった。

 

また、事業グロースの成否においては「既存事業の活用度合いは成否を分けない」「プロモーション施策による成否の差は限定的」という特徴も明らかになった。

 

レポートでは、分析の観点として「事業評価」「事業戦略」「マーケティングミックス」「組織」「事業の見直し」に分類し、失敗・成功事例の特徴を比較・分析することで判明した“失敗する事業グロースの特徴”を20のポイントとしてまとめている。

 

更に調査・分析結果に加え、これまでのコンサルティング活動で培った経験・ノウハウを踏まえ、事業グロースを成功に導くための要点を「クニエの提言」として解説している。

 

【背景】
近年、デジタル技術の進歩や消費者意識の変化を背景として、企業の事業環境は急速に変化している。新規事業の立ち上げに取り組む企業も増加する一方、世間に広く認知されるような新規事業は一握りであり、多くの新規事業は立ち上げ後に、競争の激化や顧客ニーズの多様化を筆頭とした「事業グロースの壁」に直面しているのが現状となってている。

 

そこでクニエはこうした課題を解決すべく、「事業グロースの成功と失敗を分ける要因は何か」に重点を置き、事業グロースに携わったことのあるビジネスパーソンへの実態調査や、コンサルティング現場を通じて培った知見を踏まえ、本レポートを作成した。

 

【事業グロースの定義】
同調査に於ける事業グロースは、「新規事業をリリースした後の事業拡大・成長に向けた取り組み」を指している。一般的に新規事業として注目される、検討開始からリリースまでの“ゼロイチ”のフェーズではなく、その後の1→10、10→100等の拡大フェーズにおける取り組みを対象とした。(下図参照)
*事業規模“1→10”、“10→100”の定義や評価指標(売上高等)は、企業規模・事業規模によって異なる

 

【調査概要】
目的:事業グロースの成功・失敗要因の把握・分析
手法:インターネット定量調査
調査エリア:日本全国
回答者数:スクリーニング調査1,371名、本調査314名
対象:従業員100名以上の企業において、「新規事業の事業開始前」および「事業開始後3年経過時点まで」のフェーズに携わったことのある経験者
実施時期:2023年12月

 

【調査結果のサマリー(抜粋)】
1. 事業グロースの成否(最重要KPI達成度)
“81%の新規事業が事業グロースに失敗している”
調査対象者が回答した事業に於いて、事業開始から3年経過時点での最重要KPIの達成度が100%以上を“成功”、100%以下を“失敗”と定義して調査したところ、81%の新規事業が事業グロースに失敗していることが分かった。なお、最重要KPIとして設定される項目の上位は「売上」「利益」「販売数・契約数」だった。

2. 失敗する事業グロースにおける20の特徴(抜粋)

  • 事業戦略 事業目的が曖昧なままフェーズが進む
  • ロードマップが「絵に描いた餅」で終わる
  • マーケティングミックス ターゲットに合わせて商材を拡充できない
  • クロスセルができず、収益性を高められない
  • 組織 「試行錯誤」を言い訳にして、事業の規律が緩む
  • 社内事情による事業移管に翻弄される
  • 事業見直し 施策の検討・見直しが後手に回る
  • 潜在顧客の声を軽視する

 

マーケティングミックス:ターゲットに合わせて商材を拡充できない
商品・サービスについて事業開始時点では、失敗層は「顧客のニーズ・課題に合致するものになっていた」「機能や付随サービスを可能な限り盛り込んだ」と回答した割合が低い。顧客が誰で、どのような商品・サービスがフィットするかの見極めが甘いままリリースに至ると、事業の失敗につながると言える。

 

また、事業開始後では、「顧客層の広がりに応じて商品・サービスを追加できた」が低い。事業グロースの観点では、事業が拡大するにつれてターゲット層が広がり、商材へのニーズもより多様化していく。初期の商材に加えて、より“マス”なターゲットに適した商材を拡充できない限り、事業グロースは実現できないと言えよう。

組織:「試行錯誤」を言い訳にして、事業の規律が緩む
失敗層は、「新規事業における数値目標は見直しを前提としているものだ」と回答した割合が10pt以上高く、また「新規事業における各施策は、試行錯誤しながら柔軟に見直すべきものだ」と回答した割合も高い。

 

一般論として、新規事業は事業の不確実性が高いため、計画的な進め方ではなく、試行錯誤的な進め方が望ましいとされている。しかしこのグラフは真逆の結果を示している。

 

事業グロースの観点では、事業のフェーズが進むことで、顧客や業界の理解が進むため、事業の不確実性は徐々に低下する。「新規事業は試行錯誤するもの」という考えに固執し続けると、数値や施策管理の規律が緩みやすい。事業グロースの成功には、その事業のフェーズに合わせた管理を行うべきである。

 

3. 調査結果およびコンサルティング実績から導き出したクニエの提言(抜粋)
新規事業の方法論を妄信しない
これまで、新規事業を立ち上げるための方法論として、必要最低限の機能を持った試作品を早く・低コストで作り、学習サイクルを繰り返す「リーンスタートアップ」や、ユーザーが抱えるニーズを起点に課題解決を行う「デザイン思考」等が脚光を浴びてきた。

 

しかし、事業のグロースフェーズを対象とした今回の調査では、「リリース時には商品の機能を盛り込むべき」「試行錯誤より事業の規律を重視すべき」など、上記に合致しない結果も明らかになっている。事業グロースは、新規事業の立ち上げフェーズとは求められる要素が異なる。流行りの方法論に振り回されず、事業成長のための施策を愚直に進める実行力が欠かせない。

 

 

事業の“成長痛”を乗り越える
事業が成長するとターゲット層が広がり、競合も参入してくる。多様化するターゲットのニーズに応えるために、商材のラインナップや販路の拡充、組織の再構築などやるべきことは多いうえ、商材を見直すことで既存客が離れる可能性もある。

 

調査では、事業のロードマップの明確さが成否を分ける要因の一つだと判明した。事業として目指すべき方向性を描き、組織としての優先順位を明確にすることが、事業グロースに伴う“成長痛”を乗り越えるポイントとなる。

 

【調査レポートについて】
より詳細な分析結果を記載している調査レポート(完全版)は、以下より閲覧できる。
https://www.qunie.com/service/management-strategy/#report05

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

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1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。