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2018年10月31日【テクノロジー】

ルノー連合ファンド、中国自動運転ベンチャーに投資

坂上 賢治

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 ルノー・日産自動車・三菱自動車(以下、ルノー連合)が設立した戦略的ベンチャーキャピタルファンド「アライアンス・ベンチャーズ」は10月31日、完全自動運転(レベル4)の技術に特化した企業として中国業界をリードしているWeRide.ai社(旧:JingChi.ai社)の資金調達ラウンド(シリーズA)への投資で存在感を発揮した。(坂上 賢治)

 

今投資は、次世代自動車技術の最先端に立つ起業家や新興企業を支援するべく設立されたアライアンス・ベンチャーズの戦略の一環となるもの。このルノー連合による資本支援により、完全自動運転に取り組むWeRide.ai社は、グローバル規模の自動車会社グループから投資を受けることになると同時に、中国の新興企業の中でルノー連合ファンドと最初に戦略的提携を結ぶ企業となった。

 

 

 この投資についてルノー連合で、アライアンス・ベンチャーズとオープンイノベーションを担当するアライアンス グローバル バイス プレジデントのフランソワ ドーサ氏は「新しいモビリティサービスの開発に際し、自動運転システムはアライアンスの重要課題のひとつです。

アライアンスのメンバー各社は、中国などの主要市場にそうした技術を導入することを約束しており、要求が厳しい中国市場向けの完全自動運転システムの先駆者であるWeRide.ai社を支援できることを嬉しく思います」と話している。

 

 これに対してWeRide.ai社のCEO兼 共同創業者でもあるトニー・ハン氏は「財務的投資に加えて、ルノー・日産自動車・三菱自動車とWeRide.aiは特定の領域で戦略的に提携することで関係を一層強化していきます。

自動運転革命は、新たに2.0の段階へ突入したと確信しています。WeRide.aiは技術革命をリードし続け、皆様に実質的な多大な利益をもたらしていきます」と語っている。

 

 ちなみにWeRide.ai社は今資金調達ラウンドに於いて、モルガン・スタンレーからもアドバイスを受けており、「自動車」、「交通サービス」、「都市の建築設計」に対する人々の意識を大きく変えるとされる中国での自動運転技術の開発に積極的に取り組んでいるようだ。

その証拠にWeRide.ai社は、投資で得た資金を活用して2019年に自動運転車500台を用いた実走行距離を500万キロまで伸ばすと共に、広州市と安慶市で主要パートナー企業と実証運用および商業化の実験を行う計画だ。

 

 そんなWeRide.ai社< https://www.weride.ai >は2017年、トニー・ハンをはじめとする優秀な人材が集まり創業。今や一般向け完全自動運転車の大規模な商業展開を目指す企業として業界を牽引する存在となっている。

 

その手法は技術的には、人間が関与せずとも周囲を察知して走行するべく人工知能を利用しており、安全・確実・便利な「サービスとしてのモビリティ」の提供に向け積極的に取り組んでいる。本社所在地は広州市で米サニーベール、北京市、安慶市にも事務所を構えた非公開会社である。

現在、世界で200名の従業員を抱えており、そのうちエンジニアが70%を占めている。中国の自動運転車企業の中では、初めて無人運転車の遠隔操作に5Gネットワークを使用する企業であり、同社は2020年までに中国の都市に自動運転車を広め、自動運転技術の大規模商用利用を世界で初めて実施することを目指している。

 

ここに至るまでの同社の自動運転車による累計走行距離は、テスト開始からすでに6万キロを超えており、世界で3千人以上にサービスを提供してきたが、資本投資という面では、前回の資金調達ラウンドに於いて投資家のリーダー的役割を演じた「Qimingベンチャー・パートナーズ」が今ラウンドにも引き続き参加しており、今回は他にも「Hanforキャピタル」、「Atopキャピタル」、「ジョンソン・エレクトリック」、「シャオペン・フー」、「Idinvestパートナーズ」、「OceanIQキャピタル」が今ラウンドに参加している。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。