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2020年5月27日【トピックス】

ルノー、日産、三菱の3社が新アライアンスを発表

間宮 潔

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ルノー・日産自動車・三菱自動車・ロゴ

 仏ルノー、日産自動車、三菱自動車の首脳は5月27日、それぞれの本社でビデオ会議に臨み、新しい3社アライアンスの枠組みを発表した。これまで限定的だった車両プラットフォームの共通化、部品共同購買などの取り組みを拡大・進化させ、コロナ経済危機で予想される競争激化のなか、3社が生き残るための基盤、新ビジネスモデルになるものと期待を込めた。(佃モビリティ総研・間宮潔)

 

 アライアンスオペレーティングボード議長でルノー会長のジャン・ドミニク・スナ―ル氏は冒頭、新型コロナウイルスによる世界の状況に触れ、「劇的な変化のなかで、われわれの共通のアライアンスの志は変わっていない」とし、ここ数週間にわたって議論を深めたアライアンス再構築の背景、ポイントを説明した。

 

 従来のアライアンスは、すべての市場で力強い成長、高水準の販売を追求する拡大路線だったが、世界はモビリティへのニーズが大きく変化、競争も激化していることから、コロナ禍を機に方向転換した。

 

 「再び生産・販売を再開できた時だからこそ、3社のアライアンスは回復力、レジリエンス(強靭)、競争力を支える土台、鍵となる」と強調した。

 

 日産の内田誠社長兼最高経営責任者は「今年は日産にとって経営立て直しに向け、加速化させる重要な年。競争力向上には選択と集中で、強味のある分野に資産を集中させ、他の領域はアライアンスの力、サポートを活用していきたい」とメッセージを寄せた。

 

 三菱自動車の益子修会長は過去、拡大戦略を過剰に追求した結果、厳しい経営環境を招いたとの反省、「これを元の成長路線、ビジョンに軌道修正するために、アライアンスの力を活かしてきたい」とコメントした。

 

「リーダーとフォロワー」の枠組み導入で重複投資を削減

 

 新アライアンスの骨子は、商品開発や先進技術、市場への取り組みで、それぞれ重複した投資を避け、先行して投資しているリーダー会社の技術、生産設備、販売アフターなどの資産をフォロワー会社が積極的に活用する「リーダーとフォロワー」の枠組みを導入した。

 

 現在、3社生産ボリュームの39%にとどまっているプラットフォーム(車体)共有化を2024年までに倍増させ、部品共通化を拡大させる。

 

またプラットフォームの共通化は、アッパーボデーの領域にも広げ、モデル開発投資および生産設備投資も含めて最大4割の削減を目指す。金額にして20億ユーロ規模の削減効果が期待されている。

 

商品セグメント毎に、リーダー会社を決め、マザービークル(リーダー会社の開発車両)をベースに、フォロワー会社のシスタービークルの開発をサポートする。また必要に応じて、リーダー会社とフォロワー会社の車両生産を、少数の工場に集約するなど、3社による効率追求を目指す。

 

すでに小型商用車(LCV)の領域で、リーダー会社、フォロワー会社を決め、取り組んでいるが、これを乗用車領域に広げる。先進技術分野でも「リーダーとフォロワー」の枠組みを明確化。また各社が強味とする市場を「リファレンス地域」と位置付け、そのリーダー役がフォロワー会社を補完し、市場ごとに3社の効率を追求する。

 

「リファレンス地域」を設定し、リーダー会社が3社アライアンスを牽引

 

 日産は中国、北米、日本。ルノーは欧州、ロシア、南米、北アフリカ。三菱はアセアン、豪州をリファレンス地域とした。
小型商用車(LCV)では、バン・小型ピックアップトラック分野でルノーがリーダー役となり、日産のNV250など、三菱のエクスプレスをフォロワー会社のシスタービークルに位置付けた。

 

1トンピックアップトラックでは、日産のナバラがリーダーとなり、ルノーのアラスカンがフォロワーとなる。
欧州市場では、BセグメントSUVのモデル刷新、コンパクトEVの将来モデルをルノーがリードして展開するが、CセグメントSUVのモデル刷新は日産がリードする。

 

南米地域では、ルノーと日産が現行4プラットフォームで6モデルを投入しているが、将来、1プラットフォームに集約。7モデルの投入が計画されており、ハッチバック系とSUV系で2工場が生産を分担する予定。1プラットフォームで30万台の生産ボリュームを狙っている。

 

 日本では、日産が軽自動車のプラットフォームを開発、生産を三菱が分担。アセアンでは、三菱エクスパンダ―の日産へのOEM供給拡大(リヴィナ)、フィリピンなどでの協業を推進している。豪州はルノーが三菱向けにバンをOEM供給する。
アライアンスの対象となったモデル数は、2019年段階で全体の9%(US、中国専用モデルを除く)に過ぎないが、25年には半数の48%になる見通し。

 

先進技術の領域でもリーダー会社がそれぞれ分担し、効率的な開発を追求

 

技術領域での協業は、既にパワートレインとプラットフォームで進展しているが、先進技術領域でもリーダー会社を決めた。
運転支援技術では日産がリーダー会社を務める。eボデー(電気電子アーキテクチャのコアシステム)はルノーが開発リーダーとなった。

 

コネクテッドカーでは、アンドロイドプラットフォームがルノー、中国向けプラットフォームで日産が担当する。eパワートレインはCMF-A/B用でルノー、CMF-EV用で日産自動車が担当する。三菱自動車もC/Dセグメント向けPHEVの開発でリーダーとなる。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。