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2018年2月27日【社会インフラ】

未来創生ファンド、ジャパンタクシーに対して2度目の投資を実行

坂上 賢治

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スパークス・グループとトヨタ自動車、三井住友銀行の3社が2015年11月に設立した「未来創生ファンド」が2月26日、ジャパンタクシー(JapanTaxi)株式会社(本社: 東京都千代田区、代表取締役社長:川鍋一朗)へ2度目の投資を行った。(坂上 賢治)

 

先の通りJapanTaxi への出資は、2017年6月以来 2 度目となるもの。投資は円による投資で、その額面は10.5億円。

 

 

投資先のJapanTaxi株式会社は、国内タクシー会社最大手の日本交通傘下のグループ企業であり、日本最大の利用者数・加盟台数のタクシー配車アプリ「全国タクシー」の開発・運営を行っている。

しかし現況に甘んじる事なく同ソフトウエアは、改良が続けられており、現在400万ダウンロードを突破した。

これはタクシー配車アプリの加盟台数換算で、全国のタクシー車両の約4分の1に達する約6万台分。現段階ではタクシー配車アプリ国内最大手としての立ち位置を維持している。

 

 

今回の資金調達でJapanTaxiは、このソフトウエアの機能改善、アプリケーションサービスを使用しての顧客体験の質を高めることを目指す。

具体的には、タクシー事業者のデジタライゼーション(業務手順やサービス提供の手段などのプロセスがデジタル技術によって拡充されること)促進を目指して、ソフト・ハード両面から統合的に目下、構築しているプラットフォームの強化を図っていくと云う。

 

こうした取り組みの背景としては、今日のタクシー業界で、配車アプリの開発競争が過熱していることにある。

タクシー業界に於ける競争は、新聞などのメディアで騒がれるような米の配車大手ウーバー・テクノロジーズ等の「ライドシェア(自家用車の相乗り)」の攻勢だけではないのだ。

 

 

まさに今のタクシー業界は、営業区域外からのライバルの参入のみならず、より広く深く、多角的な戦国時代が到来し、風雲急を告げている。

 

例えばソニーはAI事業の深化を図る「AIロボティクスビジネスグループ」の設立を背景に、人工知能(AI)技術を用いて天候や顧客の需要要素から、タクシーの客待ち走行などの稼働効率を削減させる技術の完成を目指している。

 

 

また先の2月12日には、中国の配車アプリ大手である滴滴出行(ディディチューシン、DiDi)とソフトバンク株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長 兼 CEO:宮内 謙)が日本のタクシー事業者向けサービスで協業を決めた。

 

神奈川県タクシー協会は、ディー・エヌ・エー(DeNA)と協力し、配車アプリ「タクベル」を目下鋭意開発しているが、このディー・エヌ・エー自体は、先の2月23日に日産と、近距離無人交通システム「Easy Ride」の実証実験にも動き出している。

 

 

またそもそも自動運転の技術発展に乗じて、自動車が自ら周囲の環境と交信する(いわゆるIoT)ことによって成立するAIソリューションの可能性は日夜拡大を続けている。

それは自動車自身が直接、周囲の環境をセンサーで読み取ることもあれば、地形や道路の状況について人工衛星やビーコンなどのの外部通信設備から情報を受信して活用することもある。

 

 

このような事象下で、自動車はドライバーや乗降客を介在させることなく、技術と技術が直接、繋がる「三次技術」によって、これまでの輸送サービスを超えた新たな価値創造や効用を生み出す目前にまで迫っている。

 

そうしたなか「未来創生ファンド」を背景とする企業グループにとっても、モビリティ業界を揺るが要因が極めて広域要素になった今日、新たな投資を追加して、いち早く変化に対応、厳しい覇権争いに勝ち残ることを加速化させる事を決断したということなのだろう(MOTOR CARSより転載 )。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。