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2024年5月2日【企業・経営】

TDB調査、正社員の人手不足に高止まり傾向続く

坂上 賢治

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帝国データバンクは5月2日、企業の2024年度の業績見通しに関する調査を実施・公開した。それによると業績の下振れ要因とし て「人手不足の深刻化」を挙げる割合がトップとなり、多くの企業が懸念している実態が明らか となったという。

 

実際に、2023年度の人手不足に起因する倒産件数は313件となり、過去最多を記録し 前年度から倍増となるなど、事業継続の可否を決める大きな要因のひとつだと纏められている。以下にその概要の抜粋を掲載する。より詳細は景気動向オンラインを参照されたい。

 

 

当該調査結果の要旨は以下の通り

  • 正社員が不足している企業の割合は 51.0%で、前年同月比-0.4ptとなったものの 5 割を超えて高止 まり傾向が続いている。
  • 業種別では、IT エンジニア不足が顕著な「情報サービス」が 71.7%でトップ。 また、非正社員が不足している企業は 30.1%で、同-0.6ptと同様の傾向がみられた。
  • 深刻な人手不足がみられる「旅館・ホテル」「飲食店」は、それぞれピークだった 2023 年時点から低下 に転じた。特に非正社員における従業員数が増加した割合が高い。

 

 

1. 人手不足割合は正社員で 51.0%と高止まり、非正社員でも同様の傾向
2024 年4月時点に於ける全業種の従業員の過不足状況について、正社員が「不足」と感 じている企業の割合は51.0%。

 

毎年4月は、新卒新入社員が入社することで人手不足が緩和される傾向があるが、前年同月比で僅か0.4 ポイントの低下に留まり 高止まりが続く。また非正社員では30.1% 。前年同月から0.6 ポ イント低下し、正社員と同様 の傾向がみられたとしている。

 

 

2. 正社員・業種別:IT エンジニア不足の「情報サービス」が 71.7%でトップ、「旅館・ホテル」も高水準
正社員の人手不足割合を業種別にみると、主にIT企業を指す「情報サービス」が 71.7%でトップとなった。18カ月連続で7割以上と高水準が続いている。

 

当該業種の企業からは「AIブームのなかで人材が確保できず、自社での開発を断念するなど案件数が一時に比べると減少傾向にある」(千葉県) や「開発案件は多く出てきているが、 開発案件に対応できるスキルマッチした要員が不足しており、受注に至らない」(新潟県)などの厳しい声が聞かれたという。

 

また、活況なインバウンド需要がみられるなかで「旅館・ホテル」も 71.1%で深刻な人手不足がみられる。その他、「建設」(68.0%)、「自動車・同部品小売」(64.9%)など6業種が6割台となった。

 

3. 非正社員・業種別:「飲食店」が 74.8%でトップ、個人向け業種が上位に並ぶ
非正社員の人手不足割合を業種別にみると、「飲食店」が74.8%となった。引き続き高水準は変わらないもの の、前年同月から10.4ポイント低下と人手不足の緩和がみられた。

 

次いで 「旅館・ホテル」(63.8%)も高水準で続いたが、「飲食店」と同様の傾向で大幅に低下している。以下、「各種商品小売」(60.8%)など、小売・サービス業を中心に個人向け業種が上位に並んでいる。

 

 

4.「旅館・ホテル」「飲食店」の人手不足割合は低下、特に非正社員では従業員数の増加が背景

「旅館・ホテル」「飲食店」の人手不足割合 ※母数が20社以上の業種が対象。

2024年3月には訪日外国人が初の300万人を突破するなど、行動制限のない「ポストコロナ」 が到来してから 1 年が経過し旅行需要は活況。

 

そうしたなか、「旅館・ホテル」は正社員に於いて71.1%の企業が人手不足となり、深刻な状況が続いている一方で、8 割に迫る水準まで上昇していた人手不足割合は2023 年と比較して低下しており、2024年以降は7割前後で推移している。引き続き他業種と比較して高水準であることに 変わりはないが低下傾向に転じた。

 

「飲食店」に於いても非正社員では74.8%と引き続き高水準ではあるものの、8 割を上回ってい た2023 年から低下しており、「旅館・ホテル」と同様の傾向がみられた。

 

両業種共にその傾向は低下したものの、人手不足を感じている企業のなかで従業員数の変化をみると傾向は様々で、正社員が増加した割合はいずれも2割台に留まった。

 

一方で、非正社員の方が増加した割合が高く、特に飲食店では40.0%となった。こうした従業員数の増加が、両業種の非 正社員に於ける人手不足割合が前年同月から10ポイント以上低下した背景にあるといえる。

 

 

5.今後の見通し:人手不足割合は高止まりで推移も、就業人口の増加が続けば低下に転じる可能性
人手不足割合は正社員では51.0%、非正社員では30.1%となり、それぞれ高水準で推移している。 そうしたなか足元では月次ベースとして2カ月連続で前年同月を下回った。

 

新型コロナウイル ス感染症が「5 類」に移行されてから人手不足割合は上昇し続け、2023年から高止まりで推移していたなか、僅かながら変化の兆しがみられる。

 

2024年3月時点の労働力調査(厚生労働省)では、就業人口は前年同月から20カ月連続で増加した。働き手の拡大が人手不足の緩和に繫がっている可能性が示唆され、実際に新規求人倍率 や有効求人倍率(同)に於いても2023年より低下した。

 

今後も同様の傾向が続けば、人手不足の 割合は低下傾向に転じることも考えられる。
一方で、高水準が続いている業種は引き続き顕著という。

 

IT人材不足が深刻な「情報サービス」や 2024年問題に直面している「建設」「運輸・倉庫」を筆頭に、インバウンド需要の高まりを受けて 「旅館・ホテル」「飲食店」は特に際立っている。それぞれの業種からは、堅調な引き合いのなかで人手不足を理由に受注し切れないという声が相次ぐなど、機能不全が顕在化している。

 

人手不足が常態化すれば業績の維持・拡大が期待し難くなるなか、中長期的に人材確保や業務効率化に向けた対策を講じられるかが、今後の事業継続を大きく左右するといえるだろうと結ばれている。

 

同調査期間は2024年4月16日~4月30日。調査対象は全国2万7,052社、有効回答企業数は1万1,222社(回答率41.5%) 。なお雇用の過不足状況に関する調査は2006年5月より毎月実施しており、今回は2024年4月の結果をもとに取りまとめたとしている。なお、先の通り、より詳細は景気動向オンラインを参照されたい。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。