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2023年12月13日【経済・社会】

TGR、「ハイラックス」でダカールとW2RCに挑む

坂上 賢治

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TOYOTA GAZOO Racing(TGR)は12月13日、来たる2024年1月に開催されるダカールラリー2024と2024年シーズンのFIA世界ラリーレイド選手権(W2RC)に、昨年のダカールラリー、及びW2RCを制した車両を改良・強化したGRダカールハイラックスEVO T1Uの5台体制で参戦すると発表した。

 

改良されたGRダカールハイラックスEVO T1U・2024年仕様は、W2RCカテゴリーの名称変更を反映して車名が、GRダカールハイラックスEVO T1Uとなったもの(前年までのT1+クラスは2024年シーズンよりT1 Ultimateクラスに変更)。

 

また今回のダカールラリー2024には、チームランドクルーザー・トヨタオートボデー(TLC)がランドクルーザー300 GR SPORTの2台体制で。そして日野チームスガワラは、HINO 600シリーズをベースにした車両の1台体制でトラック部門に挑む。

 

対してTGRは今大会、2組のルーキーコンビを含む5組のクルーで世界で最もタフな自動車レースであるダカールラリー2024に挑む予定だ。

 

そんな今年の5台体制は、TGRとしては過去最大規模でのダカールラリー参戦となり、ベテラン、ジニエル・ド・ヴィリエール選手のダカールでの比類無き経験と、ルーカス・モラエス選手とセス・キンテロ選手の才能溢れる速さが、どう活きてくるかが見どころだ。

 

モラエス選手はコ・ドライバーとしてアルマンド・モンレオン選手、キンテロ選手はコ・ドライバーとしてデニス・センツ選手と組み、この2組はTGRワークスとして2024年シーズンのW2RCにフル参戦することも今回、決定した。

 

ちなみにダカールラリー2024は、2024年シーズンW2RCの初戦という複線があり、そうした意味でもW2RCシリーズに参戦する2組のクルーにとって重要なレースとなる。この2組のクルーがフル参戦する2024年シリーズは、開幕戦のダカールラリーの後、以下4ラウンド、全5戦で戦われる。

 

 

第2戦 アブダビ・デザートチャレンジ(アラブ首長国連邦:2024/2/25-3/2)
第3戦 BPアルティメイト・ラリーレイド(ポルトガル:2024/4/2-7)
第4戦 デサフロ・ルータ40(アルゼンチン:2024/6/2-8)
第5戦 ラリー・モロッコ(モロッコ:2024/10/5-11)

 

ダカールラリーの後、この2組のクルーがW2RCチャンピオンを目指して戦いを続ける一方で、残る3人の南アフリカ人ドライバーは、競争レベルの非常に高い南アフリカラリーレイドシリーズ(SARRC)に参戦し、GRダカールハイラックスEVO T1Uの継続開発をおこなっていくこしになっている。

 

このなかでルーカス・モラエス選手は、ダカールラリー2023で頭角を現し、プライベーター参加ながらトヨタ・ハイラックスでラリーの大半を2位走行。最終的には3位でフィニッシュし、ダカールラリー史上、初出場ドライバーによる最高位フィニッシュ記録を更新した実績を持つ。

 

今年、このブラジル人ドライバーは、スペイン人のアルマンド・モンレオン選手をコ・ドライバーとしてペアを組む。2輪でダカールラリー参戦を開始したモンレオン選手は、その後SSV(サイドバイサイド:軽量四輪バギー)に乗り換え、ラリーレイドのトップドライバーとして活躍してきた。

 

対してセス・キンテロ選手は、コ・ドライバーのデニス・センツ選手とのコンビで2024年シーズンのW2RCにフル参戦する。キンテロ選手はラリーレイド界で神童と呼ばれ、現在の若手ドライバーの中でも最大の才能を持つドライバーの一人だ。彼も比類無き速さを持ち、21歳というその若さに合わぬ経験の深さも併せ持ってビバークに於いて、最も注目されている一人でもある。

 

TGRでは、この速く、若いドライバーが新型トヨタGRダカールハイラックスEVO T1Uでどんなことを達成してくれるのかを楽しみにしているという。キンテロ選手と組むドイツ人コ・ドライバーのデニス・センツ選手は、キンテロ選手同様4度目となるダカールでの完走を目指す。

 

モラエス組にキンテロ組と、この2組の若きクルーの才能は、2009年のダカールウィナーであるジニエル・ド・ヴィリエール選手がチームにもたらす豊富な経験が加わることで更に活かされる。

 

このド・ヴィリエール選手は、これまで参戦してきたダカールラリー20戦全てで完走、そのうちトップ10フィニッシュを逃したのは1回のみ、そして、20戦中8度の表彰台フィニッシュを含む15回のトップ5フィニッシュという比肩するもののない記録を持っている選手だ。またド・ヴィリエール選手は、2022年大会から南アフリカ人のデニス・マーフィ選手をコ・ドライバーとして戦っており、このコンビはSARRCの2022年チャンピオンでもある。

 

 

加えてサオード・ヴァリアワ選手とコ・ドライバー、フランソワ・カザレ選手という新世代コンビもチームに加わってくる。ヴァリアワ選手は、南アフリカのツーリングカー選手権を戦う一方で、南アフリカラリーレイドシリーズにもトヨタ・ハイラックスT1+で参戦。

 

南アフリカ・ヨハネスブルク出身で、ダカールラリー史上最年少ワークスドライバーとなるヴァリアワ選手は、18歳という若さながら豊富な経験を持ち、初のダカールラリー2024への挑戦を楽しみにしているようだ。サオードの父親であるシャミア氏はTGRからの出場で2回ダカールラリーを完走しており、サオード選手はこの父の足跡を追おうとしている。

 

最後の5台目のGRダカールハイラックスEVO T1Uを駆るのは、ガイ・ボッテリル選手とブレット・カミングス選手のコンビだ。カミングス選手はヘンク・ラテガン選手のコ・ドライバーとして既にチームには馴染み深い存在。

 

ラテガン選手が、今年初めの南アフリカでの激しいクラッシュにより肩を負傷したため、ボッテリル選手がドライバーとして参戦する。ボッテリル選手にとっては初めてのダカールラリー出場となるが、カミングス選手の経験を活かしての活躍に期待がかかる。

 

ボッテリル選手は、南アフリカのラリーシリーズで好成績を収めており、2023年シーズンはラリーレイドシリーズにフル参戦。今年はタイトル獲得こそならなかったものの、僅差のランキング2位を獲得している。

 

そんなダカールラリー2024は1月5日(金)に、サウジアラビア北西部アルウラ市街地近郊の短いプロローグランでスタートが切られる。その後、舞台は東へ向かい、前半戦は6つのステージで戦われる。

 

このうち第6ステージは「48時間クロノステージ(アラビア半島南部のルブアルハリ砂漠に設けられた約600kmのステージを計48時間の中で選手のみで走り切るステージ)」と称される革新的な拡張マラソンステージとなる。

 

このタフな前半戦の後、1月13日(土)、サウジアラビアの首都であるリヤドで伝統的な休息日を過ごした出場者たちは、サウジアラビア北部を舞台にさらに6つのステージで構成される後半戦を戦い、1月19日(金)にサウジアラビア西部の港町ヤンブーでゴールを迎える。

 

新型GRダカールハイラックスEVO T1U
2024年シーズン向けの新型は、これまでのモデルに対し100mmワイドになり、サスペンションなど各所に改良が施された。エアコンユニットも更なる効率を求め、搭載位置が変更された。加えて、新型GRダカールハイラックスEVO T1Uは新たな冷却パッケージを採用し、更なる冗長性を確保した。

 

この新車開発にあたって、品質、耐久性と信頼性へのこだわりは重要な要素だった。そのため、クルマの開発はシーズンを通してコンスタントに続けてきており、TGRのクルーは2023年シーズンのW2RC及びSARRCレース参戦やテストで、総計で3万キロに及ぶ走行をこなしてきた。

 

さらに、アフリカ南部のカラハリ砂漠での追加テストや、ナビブ砂漠での最終テストも行われ、来季のW2RCと、その開幕戦となるダカールラリーへの最終準備が整えられてきた。

 

新開発のバイオ燃料
ダカールラリー及びW2RC参戦を通じて、チームはさらに持続可能な未来と、ダカールの将来を見据えたプロジェクトにも参加する。その一環として、TGRダカールチームはレプソル社と提携し、2026年の期限を大幅に前倒しして必要な目標を達成しようとしている。

 

レプソル社は、再生可能原料を70%含み、一般的なガソリン燃料に比べ、酸化炭素排出量を少なくとも70%削減できる革新的なバイオ燃料をTGRに供給する。この再生可能燃料は、スペイン・マドリードのレプソル技術研究所で、使用済みの食用油など、廃棄物から設計・製造される。

 

この新開発燃料はISCC(国際持続可能カーボン認証) EU持続可能スキームの下に認証された設備で製造され、原料および製造工程は再生可能エネルギー指令(RED: Renewable Energy Directive)の持続可能性要件に適合している。

 

TGRはパートナーであるレプソル社と共に、レプソル再生可能燃料70R+を最初のベンチテストから、その後の広範囲にわたるフィールドテスト、ダカール前最後のテストとなったナミビア砂漠まで、様々な環境で18か月以上にわたって、幅広く研究開発に取り組んできた。チームが使用する燃料は、FIAのレギュレーションに従いTGR専用に調合されている。

 

エンジン:V35A 市販仕様(ランドクルーザー300に搭載)
エンジンタイプ:ツインターボガソリン
コントロール規則:FIA規定パワーカーブによるブースト制限
最大出力:264 kW @ 5,300 rpm
最大トルク:620 Nm
エンジンマネージメント:モーテック
トランスミッション:Sadev製6速シーケンシャル
ディファレンシャル:前後及び中央全てLSD
クラッチ:セラミックツインプレート 直径215mm
フレーム構造:チューブラーフレーム
ホイールベース:3,140mm
トレッド幅:2,025mm
全長:4,810mm
全幅:2,300mm
全高:1,890mm
車重:2,010kg,FIA規定最低重量(ドライウェイト)
ボディ形状:トヨタ ハイラックスダブルキャブピックアップ 複合素材ボディ
フロントサスペンション:ダブルウィッシュボーン、ストローク350mm
リアサスペンション:ダブルウィッシュボーン、ストローク350mm
ホイール:Evo Course 17インチ
タイヤ:BFグッドリッチ 37インチ
燃料タンク:FT3安全セル 540リッター

 

 

その他の2024年参戦体制
ダカールラリー2023ではナッサー・アル-アティヤ/マシュー・ボーメル組がラリーレイド仕様のGRダカールハイラックスT1+で、トヨタにとって3度目となる総合優勝を果たした。

 

2024年1月にサウジアラビアを舞台に戦われるダカールラリー2024には、改良されたGRダカールハイラックスEVO T1Uの5台体制で参戦し、3連覇を目指す。

 

ルーカス・モラエス/アルマンド・モンレオン組、セス・キンテロ/デニス・センツ組は、2022年、2023年と連続チャンピオンを獲得したFIA世界ラリーレイド選手権(W2RC)に、2024年シーズンもフル参戦し、3連覇を目指す。

 

これらに加えてTGRは、トヨタ ランドクルーザーで参戦するトヨタ車体のラリーチームであるチームランドクルーザー・トヨタオートボデー(TLC)をサポートする。ダカールラリー2023では、市販車部門において10連覇を達成。ダカールラリー2024もランドクルーザー300 GR SPORTで参戦し、市販車部門11連覇を目指す。

 

 

日野チームスガワラは、ダカールラリー2023でトラック部門総合10位を獲得、32回連続完走を達成した。ダカールラリー2024では、ボンネットタイプのトラック(HINO600 シリーズ)で参戦、33度目の完走を目指す構えだ。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。