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2019年1月11日【トピックス】

東京地検特捜部、ゴーン日産前会長を特別背任罪で追起訴へ

坂上 賢治

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 東京地検特捜部は1月11日、日産自動車の前会長カルロス・ゴーン前会長(64)を、私的投資の損失を日産自動車に付け替えさせたとされる事件について会社法違反(特別背任)罪で追起訴した。併せて自身の役員報酬で、直近3年分を過少に記載したとされる事件でも金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)罪で追起訴した。(坂上 賢治)

 

また東京地検特捜部は、サウジアラビアの知人に対して日産自動車が支出した資金。その他にゴーン前会長の指示で、日産自動車が支出した資金ついても中東のオマーン等の政府当局に捜査共助を要請。今回起訴した以外の資金の流れについても捜査を継続する意向とみられる。

 

特に中東・オマーンの知人などに機密費から支出した約50億円と見られる資金の支出については、ゴーン前会長自ら子会社の社員に指示していた可能性が浮上。その他にも3社連合の統括会社から一部のルノー取締役に非公表の報酬を支出していた可能性も浮上している。

 

 

 なお先の私的投資の損失について東京地検特捜部は、平成20年10月に約18億5千万円の評価損を一時的に日産に付け替えた他、損失の信用保証に協力したサウジアラビアの知人側に対して、傘下の中東日産を経由し平成21~24年の4年間で計1470万ドル(当時のレートで約12億8400万円)を支出させたとしている。

 

一方、役員報酬の過少記載については、日産自動車のグレゴリー・ケリー前代表取締役(62)と共謀し、平成27~29年度の約42億円の報酬を過少に記載したとしてケリー前代表取締役に加えて法人としての日産を金商法違反罪で起訴した。ケリー前代表取締役は「退任後の支払い方法は検討していたが、役員報酬とは関係ない」と供述していた。

 

 昨日に高熱を出して取り調べに応えられずにいるゴーン前会長の身柄拘束は、昨年11月19日に逮捕されてから今日1月11日で通算54日間に及ぶ。このため弁護人は、同日中にも東京地裁に保釈を請求する模様。

 

 

これらの起訴の流れを受けて日産自動車は、フランス・パリの住居賃料の支払い停止に続き、ゴーン前会長に対して東京都港区の住居退去を通告。継いで富裕税逃れのため契約していたと見られているオランダ・アムステルダム等の住居賃貸契約の解除も行っていく模様。

 

 併せて日産自動車は法人としてリリースを発表し、このなかで「元代表取締役会長カルロス・ゴーンが会社法違反(特別背任罪)により起訴されました。これに先立ち、当社はカルロス・ゴーン元会長について、同法違反で東京地方検察庁に刑事告訴いたしました。

 

今般の刑事告訴は、多額の会社資金の不正な支出などを対象とするものですが、かかる行為は会社として到底容認できるものではなく、厳重な処罰を求めるものです。

当社といたしましては、同様の不正な支出の有無等について、引き続き調査を行うこととしております。

 

 また本日、元代表取締役会長カルロス・ゴーン及び元代表取締役グレッグ・ケリーの両名が金融商品取引法違反(虚偽有価証券報告書提出罪)により追起訴されました。併せて、当社につきましても、同法違反により追起訴されました。

 

当社として、このような事態に至ったことを大変重く受け止めており、改めて関係者の皆様に多大なご迷惑をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。

 

当社は、過日設置したガバナンス改善特別委員会における議論・提言を踏まえ、今後、更なるガバナンスの強化に努め、企業情報の適切な開示を含め、コンプライアンスを遵守した経営に努めてまいる所存であります」と結んでいる。( MOTOR CARSから転載  )

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。