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2018年8月9日【エネルギー】

東芝のPSC太陽電池装置がエネルギー変換効率世界一に

NEXT MOBILITY編集部

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東芝が開発したペロブスカイト太陽電池(PSC)モジュールが学術論文誌で、世界一のエネルギー変換効率を誇ると掲載される

 

東芝が新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業で開発した、ガラス基板とフィルム基板の2種のペロブスカイト太陽電池モジュール(Perovskite Solar Cell/注1)が、学術論文誌「Progress in Photovoltaic」に掲載される世界の太陽電池トップデータ集の「Solar cell efficiency tables ver.52」(注2)に、認定機関で測定したモジュールでは世界一のエネルギー変換効率(注3)として掲載された。

 

認定は、太陽電池の変換効率を認定する国際的な測定機関の1つである産業技術総合研究所によって行われたもので、今回、このエネルギー変換効率が、「Solar cell efficiency tables」に世界一として掲載。

 

ガラス基板上に作製した面積802cm2(開口部サイズ 27.20cm×29.50cm)のモジュールのエネルギー変換効率は11.6%。東芝が6月に発表した開口面積703cm2(開口部サイズ 24.15cm×29.10cm)のモジュールでは、エネルギー変換効率11.7%の認定を受けており、サイズが800cm2以上の「モジュール」、200cm2以上の「サブモジュール」のカテゴリーで世界一となると云う。

 

面積世界最大のフィルム型ペロブスカイト太陽電池モジュール(24.15cm×29.10cm、703cm2)

面積世界最大のフィルム型ペロブスカイト太陽電池モジュール(24.15cm×29.10cm、703cm2)

 

東芝は、ペロブスカイト太陽電池の面積拡大化に向けた塗布プロセスの開発を行い、塗布溶液であるインク組成を工夫することで、基板上でのPbI2(ヨウ化鉛)とMAI(ヨ化メチルアンモニウム)の反応を制御してMAPbI3(ペロブスカイト)を結晶化し、塗布する際のプロセス制御とペロブスカイト結晶成長条件の適正化を行うことで、大面積での面内膜厚均一性、結晶膜質の均質性を高めることに成功(注4)。

 

その結果、大面積でも10%を超えるエネルギー変換効率を実現し、実用化に一歩近づいたとしている。

 

大面積向けの塗布プロセスの開発

大面積向けの塗布プロセスの開発

 

東芝は今後も、NEDOの委託事業「高性能・高信頼性太陽光発電の発電コスト低減技術開発」の中で、フィルム型ペロブスカイト太陽電池モジュールについて、積水化学工業の封止技術を用いながら開発を進める。

 

また、実用化サイズとして想定される900cm2を目指し、さらなる面積拡大化を進めるとともに、ペロブスカイト層の材料改良等で、結晶シリコン太陽電池並みの高効率実現を実現し、基幹電源並みの発電コスト7円/kWhの実現を目指すとしている。

 

 

注1:光吸収層がペロブスカイト結晶で構成されている太陽電池
注2:M.A. Green, et al, “Solar cell efficiency tables (version 52)”, Prog Photovolt Res Appl. 2018;26:427–436.
注3:太陽光のエネルギーを電気エネルギーに変換する効率
注4:6月18日付「面積世界最大のフィルム型ペロブスカイト太陽電池モジュールを開発-モジュール面積703cm2で変換効率11.7%を実現-」 http://www.toshiba.co.jp/rdc/detail/1806_03.htm

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。