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2020年12月14日【ESG】

トヨタ、第1回AA型種類株式を残存取得・消却総額4779億円

坂上 賢治

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トヨタ自動車・ロゴ トヨタ自動車(本社:愛知県豊田市、代表取締役社長:豊田 章男、以下、同社またはトヨタ)は12月14日、今からおよそ5年前にあたる2015年7月2日に、国内個人投資家向けに発行した種類株式「第1回AA型種類株式」の残存株式を全取得して消却する意向を発表した。(坂上 賢治)

 

 今から5年前、同種類株の発行を決めた当時のトヨタは、第一に〝次世代の最先端技術の輩出〟が自らの企業価値向上に不可欠であると考えていたこと。第二に、既存株主に資金を頼るだけでなく、多様なステークホルダーがSDGs的な〝中長期的な目線で企業を評価する〟という考え方に着目。これを背景に新たな研究開発資金の調達手段として新株発行に着手した。

 

そこで同年6月開催の定時株主総会で会社定款の変更を提案。同提訴変更で1億5000万株(発行済み株式数の5%未満)まで、AA型種類株式を発行できるようにした。なお、このAA型種類株式の「AA型」という名前は、株式市場に於ける何らかの規則や慣習に則ったものではない。

 

その名前は、1936年(昭和11年)にトヨタの前身である「株式会社豊田自動織機製作所・自動車部」が開発・製作したトヨタ初の乗用車から採ったもの。トヨタが独自が考えた新株の名前という訳だ。その時点でトヨタは、このAA型種類株式を、今後複数回に亘って発行していくとしていた。

 

 募集株式数は、都合4710万株(当初の上限は5000万株)、具体的な申込期間は、先の発表翌日の3日から22日迄の20日間。引き渡しは7月24日とした。配当は初年度が0.5%、5年目以降は2.5%で固定。これに伴う同年の手取り概算額は4749億円に達した。

 

ちなみにAA株は議決権こそあるものの、先の通り、中長期保有の株主を開拓する目的であることから種類株購入者は5年間、同株式を売買できない。その一方で5年後に普通株への転換や、発行価格で投資家から買い戻す取得条項が付けられなど、世界でも希な新型株誕生となり当時のニュースを賑わせた。

 

 それから5年を迎えた今年9月、購入者が発行価格での取得請求が可能になったことを受け、トヨタは当初目的に沿った開発成果が上げられたとして残存分の取得を決めたという。結果、種類株は3月末から9月末までの間に200万7100株増加し、残存規模は約4779億円。同社は手元資金を原資として2021年4月2日に取得する予定としている。

 

同社では、「発行後、コネクティッド、自動化、シェアリング、電動化といった〝CASE〟と呼ばれる新領域への投資。次世代環境車の開発。異業種も含めた様々なパートナーとのアライアンスなど未来への投資が着実に推進させて、モビリティ社会への礎を築いてまいりました。

 

また、この間AA株を保有する株主の皆様には、高い比率の議決権行使を通じてトヨタの経営にも積極的に参画頂きました。こうした取り組みを推進することができましたのは、トヨタを信じ、資金を投じてくださった株主の皆様のおかげであり、改めて感謝申しあげます。トヨタは、今後も〝幸せの量産〟に向けた未来への挑戦を続け、より多くの株主、投資家の皆様に応援頂けるよう取り組んでまいりたいと考えております」と話している。

 

以下は2015年春頃のトヨタの個人投資家向けIRイベント動画

概要
取得価額 発行価格相当額+経過配当金相当額
取得日 :2021年4月2日
消却日 :2021年4月3日

 

(参考)AA株概要
発行日 :2015年7月24日
発行価格 :1株につき10,598円
発行価格の総額 :4,992億円

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。