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2021年3月11日【経済・社会】

豊田日本自動車工業会会長会見

松下次男

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日本自動車工業会・JAMA・ロゴ

 

 日本自動車工業会の豊田章男会長(トヨタ自動車社長)は3月11日、オンラインで記者会見を開き、東日本大震災から10年を経て東北地方に根付き、成長する自動車産業を概観するとともに、2050年のカーボンニュートラルに向け「エネルギーグリーン化」を推進しなければ日本の自動車産業は衰退するとの危機感を訴えた。(佃モビリティ総研・松下次男)

 

 会見はちょうど10年前に東日本大震災が発生した日に当たる節目の中で行われた。このため、豊田会長は当時を振り返りながら、東北地方に根付き、同地で拡大する自動車産業を感慨した。
 震災当時の日本の自動車産業は超円高など6重苦と言われた中にあり、そこへ日本の半分近くが被災に合う東日本大震災が追い打ちをかけた。もはや「自動車産業は成熟産業」という見方さえあった

 

 このような中で、東北地方の人たちは「自動車産業に期待し、復興のど真ん中に置いてくれた」と述べ、これに応える形で「自動車産業という実業を通じ、東北の皆様と一緒の未来をつくる」ことに取り組んだと述懐した。
 日産自動車は福島でエンジン工場を、トヨタは東北を中部、九州に続く第3の生産拠点に位置づけ拡大してきた結果、新たなモノづくりも始まった。

 

 その一つとして豊田会長は「地元企業の多くが自動車部品にチャレンジしてくれた」ことを掲げ、その成果として「8000人雇用拡大し、東北地方からの出荷額で8000億円増加した」と強調した。
 先進技術も進んでおり、「東北生産の多くは電動車であり、その比率は8割を超えている」と述べた。

 

 また、復興支援などを目的に豊田会長は毎年3月に東北地方を訪問しており、今年は昨春稼働開始した福島県浪江町の福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)などを視察した。
 FH2Rは再生可能エネルギーを利用した世界最大級のグリーン水素製造装置を備えた実証実験施設であり、実用化されれば燃料電池車(FCV)の普及拡大を後押しするとして期待がかかっている。

 

 これに対し、豊田会長はモビリティの観点からプロジェクトの支援を要請され、同施設を視察したという。そして水素社会実現のためには「水素を作る、運ぶ、利用するというすべてのプロセスをつなぐことが重要」と述べ、FH2Rの作るR&D(研究開発)に加え、運ぶ、使うという実装の観点から参画すると表明した。

 

 支援については「FH2Rの水素製造能力は900トンであり、これはクルマにすると約1万台分。これは浪江町ではオーバーキャパシティだが、隣接の福島市や郡山市、いわき市などに適応できる。これら30万人都市というのは日本の自治体で最も多い都市の規模」と述べ、全国展開へ向けたキャパシティや有効性の検証に役立つとの見方を示した。

 

 さらに「東北の人たちと一緒にカーボンニュートラル社会という未来を実現することが自動車産業の役割だと思っている。自動車をカーボンニュートラルのど真ん中に置いてほしい」と強調した。一方で、そのためには「エネルギー政策と産業政策をセットで実現することが重要だ」とも指摘した。

 

 特に日本ではエネルギー消費に占める化石燃料の比率が75%と高く、電動化の進展に懸念を表明。カーボンニュートラルに向け「EV(電気自動車)化すればよいという単純な話ではない」とし、CO2(二酸化炭素)排出の観点から「全く同じ(トヨタの)ヤリスを日本とフランスで作っても、(エネルギー分野でCO2排出量の多い)日本製は使ってもらえない」と危機感を表した。
その結果は、「輸出が減少し、雇用にも響く」と述べ、再生可能エネルギーなどCO2排出量の低いエネルギーへの転換を並行して進めるよう求めた。

 

 この時期の自工会会長会見では次年度の需要見通しを発表してきたが、コロナ禍で「予想が不可能」として昨年度に続き予測を見送った。ただし、豊田会長はサプライチェーンのためにも「基準を示す」ことが重要と述べ、可能な時期に公表したいとした。
 半導体不足で自動車生産が滞った問題でも、コロナ禍で「基準を示せず、半導体業界が減産したのが要因の一つ。そこへ民生用の需要が拡大し、自動車も予想より早く回復に向かった」と述べ、コミュニケーションの重要性を指摘した。
 東京モーターショーについても「そろそろ決定しなければならない時期」としながらも「見通しは立っていない」とした。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。