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2021年8月25日【MaaS】

トヨタ、ソフトウェアとコネクティッドの取り組み説明会

松下次男

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マルチメディアシステム・コネクテッドサービスを4年ぶりに刷新

 

 トヨタ自動車は8月25日、ソフトウェアとコネクティッドに関する説明会をオンラインで開いた。それによると車両通信基盤のマルチメディアシステム・コネクテッドサービスを4年ぶりにフルモデルチェンジし、近く発売する新型レクサス「NX」に搭載することを明らかにした。

 また、ソフトウェアの開発体制を大幅に拡充することも表明。トヨタ、ウーブンプラネット、トヨタコネクティッドでは海外拠点を含めて3千人規模へ。グループ全体では1万8千人規模へと体制を強化する。(佃モビリティ総研・松下 次男)

 

 

最新機能は新型NXに搭載。さらに地域開発ではOTA機能にも取り組む

 

 今回のソフトウェアとコネクティッドに関する説明会は「これからのクルマづくりにトヨタがどう挑もうとしているか」をチーフプロダクト・インテグレーション・オフィサーの山本圭司執行役員が紹介するという趣向だ。その山本執行役員によると、全面刷新する新たな通信基盤であるマルティメディアシステム・コネクティッドサービスは「地域ごとに開発できるものだ」という。

 

 

 より具体的には、国や地域によって道路事情やクルマの使われ方が異なっている事を挙げ、その環境下で通信サービスを介して「グローバルワンパッケージで地域に展開するのは限界がある」と強調した。

 

そこで、それぞれ地域のデータを収集し、地域に合わせたコネクティッドサービスを展開するとした。地域例では、北米ではセンターによる衝突事故検知・保険申請サポート、欧州では路上駐車案内などをNXで展開する計画だ。

 

 

走る場所、走る時間によってHVの制御を変えるジオフェンス技術も実用化へ

 

 なおこの新型NXではOTA(オーバー・ザ・エアー)によるソフトウェアのアップデートも可能とした。さらにトヨタはコネクティッドを活用したクルマの省エネ化、省資源化の開発を進めていることも明らかにした。このOTAとは、走る場所、走る時間などに応じてハイブリッド車(HV)の制御を変える技術で、「ジオフェンス技術」と呼んでいる。

 

 

 このジオフェンス技術について一例を挙げると、日本国内に於けるHV車両は走行時の半分でエンジンが停止するが、PHV(プラグイン・ハイブリッド車)であれば、そうした走行環境が80%に増える。

 

 ジオフェンス技術はこれらエンジンの停止時期を地域、時間に応じて先読みすることにより、省燃費化を一段と向上する。近い将来の商品化を目指しており、その考え方は新型NXにも盛り込む方針。また現地現物で集めたデータで、クルマの健康状態をカルテとして見える化することにも取り組む。

 

 

ソフトウェア開発はトヨタ含む傘下3社で3千人規模、グループ全体で1万8千規模へ

 

 そもそもトヨタのコネクティッドカーは「トヨタ」「レクサス」ブランド合わせて既に1千万台を超える。山本執行役員はこれらのラインナップ上にソフトウェアを重ねる事により「新たな価値体験や感動が提供できるクルマへ」と大きく変わっていく可能性を示した。

 

 その参考としては、携帯電話からスマートフォンの変遷を掲げていた。コモディティ化された電話が情報を連携することで、新たな価値体験を生み、あっという間に世界に広がったとし、それを実現したのが「ソフトウェアとコネクティッドだ」と話す。

 

 

 このためにもトヨタはグループ全体でソフトウェアの開発強化に乗り出しており、今後、クルマの開発体制をも変える可能性を示唆した。

 

 具体的には、ウーブンプラネットで開発を進める車両ソフトウェアプラットフォーム「アリーン」を活用することで、ハードとソフトを分離し、現在のすり合わせ開発を見直す方針。これにより、ソフト先行の開発体制を構築していく考えで、新車載OSの「アリーナ」・プラットフォームを搭載した車両を2020年代半ばにも市場投入する計画であると結んでいる。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。