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2018年5月30日【エネルギー】

豊田通商、EV蓄電池活用の仮想発電所(VPP)V2Gアグリゲーター事業へ

NEXT MOBILITY編集部

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豊田通商と中部電力は、経産省・資源エネルギー庁の補助事業、「平成30年度需要家側エネルギーリソースを活用したバーチャルパワープラント構築実証事業費補助金」のうち「V2Gアグリゲーター事業」に共同で申請、補助金の執行団体・環境共創イニシアチブから5月29日に交付決定を受けたことから、5月30日より実証事業を開始する。

VPP技術は、家庭や工場などに点在する太陽光発電等の再生可能エネルギー(再エネ)発電、蓄電池などをネットワークでつなぎ、あたかも1つの発電所のように機能させる仕組み。

 

なかでも「V2G(Vehicle to Grid)」は、プラグインハイブリッド車(PHV・PHEV)や電気自動車(EV)などの電動車の車載蓄電池を活用し、充電に加えて、蓄電した電力を電力系統に供給(逆潮流)する技術となる。

 

再エネでは、日射量や風量など、自然条件の変化による発電出力のふらつき(出力変動)の増大や、発電する時間帯の偏りによる余剰電力の発生などが課題とされるが、V2G技術は、この出力変動に対応するための調整力の提供や、余剰電力を充電して供給力が必要な時間帯に放電する供給力シフトを可能とする技術として期待されている。

 

同実証事業では、V2Gによる調整力の提供や再エネの供給力シフトの実現可能性を検証するため、複数台の車載蓄電池を束ねて充放電を制御するV2G制御システムを構築し、愛知県豊田市の駐車施設に充放電器を設置し、実証試験を行う。

 

 

また、電動車の蓄電池への充電だけではなく、電力系統に逆潮流させることで、電力系統に与える影響を評価し、電動車の需給調整用途活用を目指すとしている。

 

さらに同実証では、米国ヌービー社(※1)のV2G技術を活用し、応動時間が短く難易度が高い短周期変動へ対応する調整力(周波数調整力※2)の提供も目指すと云う。

 

この実証で、豊田通商は、アグリゲーター(※3)としてV2G制御システム(ヌービー社製のV2Gシステムを利用予定)を構築し、電力系統に対して調整力の提供や、再エネの供給力シフト等、電動車の新たな価値の創造を目指す。

 

また、中部電力は、一般送配電事業者の立場からV2Gの電力系統への影響評価を行い、新たな調整力の確保に繋がる技術の向上を目指す。

 

豊田通商と中部電力は、実証事業を通じて、今後増加が見込まれる電動車の新たな価値を見出し、再生可能エネルギーの更なる普及や環境負荷の低い電動車の普及を促進し、低炭素社会の実現および電力の安定供給に貢献していくとしている。

 

実証事業のスケジュール

実証事業のスケジュール

 

※1:欧米で電動車を活用したV2G事業を展開する米国のベンチャー企業。世界各国において周波数調整力を提供し、デンマークにおいては世界で初めてV2Gの商業化に成功している。豊田通商が2017年12月に出資参画している

http://www.toyota-tsusho.com/press/detail/171215_004081.html

 

※2:電力系統の周波数を一定(50Hz/60Hz)に保つために、一般送配電事業者が需給調整(周波数制御および需給バランス調整)に使用する電力。周波数が変動すると電気の品質が低下し産業用機器の使用などに不具合が生じるおそれがあるため、電力系統の周波数を一定に保つことが重要。また、再エネの導入により、需給のバランスが乱れやすくなり、今後さらに周波数調整力の重要性が高まっていくとされている。

 

※3:エネルギーリソースを活用し、発電事業者、一般送配電事業者、小売電気事業者にサービスを提供するビジネスの事業者。

 

 

実証事業の概要(PDF):http://www.toyota-tsusho.com/press/upload_files/201805301300.pdf

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。