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2023年11月17日【ESG】

米国トヨタ、レッドウッド社とEV蓄電池の材料調達で合意

坂上 賢治

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計画にはリサイクルのサプライチェーンから素材調達する合意が含まれる

 

トヨタモーターノースアメリカ( TMNA/Toyota Motor North America, Inc )とネバダ州カーソンシティに本社拠点を置くレッドウッドマテリアルズ( Redwood Materials, Inc )は米・東部時間(テキサス州プレイノ)の11月16日、EV蓄電池のバッテリーエコシステムの循環目標に近づけるべく、蓄電池リサイクルと材料調達で合意に達した。( 坂上 賢治 )

 

今回の合意は、トヨタ製のハイブリッド車とEV(電気自動車)搭載バッテリーの回収とリサイクルに関して、昨年発表されたレッドウッド社との協力契約に基づくもの。そこにはレッドウッド社の蓄電池のリサイクル活動に於いて、カソード活物質( CAM/正極材 )とアノード銅箔( 集電体 )を調達する事案も含まれている。

 

ちなみにレッドウッドマテリアルズは、ネバダ州カーソンシティに本社を置き、リチウムイオン電池をリサイクルして電動輸送機器や蓄電機構の電池材料を製造することを目的とした技術企業だ。

 

従ってリサイクル電池から大規模生産するアノードとカソード材料の米国初の大規模供給源として知られており、同活動によりアメリカ本土で、リチウムイオン電池を搭載する全てのデバイスを対象に循環型サプライチェーンの構築に貢献。持続可能なエネルギー環境に於けるコストを削減と負荷低減に寄与している。

 

バッテリーエコシステムの完全循環を目指す両社の目標が達成へと近づく

 

そんなレッドウッド社は、先のトヨタモーターノースとの蓄電池リサイクルに係る協力契約を前提にネバダ州北部の施設を増強。更にサウスカロライナ州チャールストン郊外に2番目のバッテリー材料キャンパスの着工を進めている。

 

レッドウッドはTMNAとの蓄電池リサイクルに係る協力契約を前提にネバダ州北部の施設を増強した

 

レッドウッド社の両キャンパスでは、バッテリー材料のリサイクル、精製、製造を行い、コンポーネントの生産を年間100GWhに拡大させることを目指している最中だ。

 

実際、トヨタの車載蓄電池に関しては、既に20年以上前に発売された初代プリウスモデルなど、多くの電動車両がいよいよライフサイクルの終わりを迎える時期に差し掛かることから、トヨタ製車載蓄電池のリサイクルに関するニーズは、今後数年間で大幅に増加すると予想されている。

 

また現時点では、そうしたトヨタ製電動車両の多くはカリフォルニアに数多く存在しているため、ひとまずレッドウッド社ネバダ州のリサイクル施設は、トヨタの北米サプライチェーンについてサポート体制を敷き、バッテリーエコシステムに係るクローズドループに向けたTMNAの取り組みに貢献する体制を組みつつある。

 

今後、そんなトヨタ製バッテリーのエコシステムに加わるユニットは、およそ500万個にのぼり、そこには蓄電池のリサイクル・再製造・再利用が含まれる。

 

 

回収された金属をリサイクルしバッテリーのサプライチェーンに再導入する

 

そこで今回トヨタモーターノースは、先よりの長期契約の一環としてレッドウッド社から、正極活物質(CAM)と銅箔を調達する計画も含むクローズドループの枠組みを共同開発する施策に同意した。

 

今後は、同合意の条件に基づき、レッドウッド社のリサイクル活動から回収・製造された正極活物質は、ノースカロライナ州のトヨタ・バッテリー・マニュファクチャリング(TBMNC)へ向けて、将来の新しいバッテリーユニットのリサイクル材料として供給される流れだ。

 

このようなリサイクル材料の使用は、米国外から調達する蓄電池材料サプライチェーンと比較して、国内サプライチェーンの優位点と競争力を高めるのに大いに役立つ。そこでトヨタモーターノースは、 140億ドル近い投資を行い、TBMNCの自動車用バッテリー製造施設を2025年に稼働させる計画を敷いている。

 

 

さて今回の合意についてTBMNC(トヨタ・バッテリー・マニュファクチャリング)のショーン・サッグス社長は、「トヨタ・バッテリー・マニュファクチャリング・ノースカロライナの生産開始が目前に迫っているなか、当社のバッテリーエコシステムに組み込むための重要なバッテリーコンポーネントと材料を調達できる目処がついたことを嬉しく思います。

 

私たちは、地球上の貴重な資源を最大限に有効活用し、その過程で大幅な二酸化炭素排出量を削減するべく、ここ米国でのバッテリー材料の調達とリサイクルに引き続き、精力的に取り組んでいきます」と述べた。

 

既存のリサイクル協定を拡張しトヨタ製車載電池の完全循環を確立へ

 

またトヨタモーターノースの事業開発担当グループでバイスプレジデントを務めるクリストファー ヤン氏は、「今合意により、車載蓄電池リサイクルに係る取り組みと関連部品&素材の国内調達を加速させ、バッテリーエコ循環を完成させるための最終目標に近づくことができました。このエコシステムは、北米全土の道路上にバッテリーを搭載した車両が増えるにつれて、益々重要になります」と述べた。

 

TBMNC(トヨタ・バッテリー・マニュファクチャリング)

 

これに対してレッドウッドマテリアルズのカル・ランクトン最高商務責任者は、「今日、トヨタモーターノースは我々との協力体制を敷き、持続可能な未来に向けて、大きな一歩を踏み出しました。

 

彼らは真摯にEVの責任ある耐用年数管理に取り組んでいるだけでなく、部分的に持続可能な国産のバッテリーコンポーネントを使用して、次世代EVを製造することも計画しているからです。

 

また当社は、米国のバッテリーセルメーカーや自動車メーカーに初めて国産の戦略的バッテリー材料を供給するため、技術と設備を拡大するために大規模な投資を行っています。

 

サウスカロライナ州チャールストン郊外の第2バッテリー材料キャンパス図

 

例えば我々はネバダ州北部の施設に対しても飽くなき拡張を続けており、今年後半にはサウスカロライナ州チャールストン郊外に2番目のバッテリー材料キャンパスの着工を予定しています」と蓄電池の循環環境に取り組む積極姿勢を示しつつ、その言葉を結んでいる。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。