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2023年2月1日【エネルギー】

ボルボ、CO2削減を目指しバイオガストラックにも注力

坂上 賢治

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単一ソリューションだけで気候変動問題を解決させる事は出来ない

 

ボルボ・トラック( Volvo Trucks )は2月1日(スウェーデン、ヴェストラ・イェータランド県ヨーテボリ)の報道発表に於いて液化バイオガス車を改めて紹介している。当該トラックはCO2排出量を大きく削減させながらも、欧州委員会から求められる長距離輸送タスクを請け負える車両だという。( 坂上 賢治 )

 

 

 

今を遡る事5年、同社は低環境負荷の液化バイオガス ( バイオLNG ) トラックを発売した。使用される液化バイオガスは、食品スクラップを含む有機廃棄物から生成される再生可能燃料であり、CO2排出量を最大100パーセント削減出来る。

 

同車両についてボルボ・トラックのダニエル・バーグストランド( Daniel Bergstrand )プロダクトマネージャーは「液化バイオガストラックは、BEVトラックを使う輸送ソリューションのウイークポイントを補完するもので、貨物輸送の炭素中立の確立と、輸送企業にとっての事業上の高い持続可能性に貢献します。

 

 

この液化バイオガストラックには、以前からの420馬力と460馬力を発揮するパワーユニットに加え、500馬力の出力を発揮する新エンジンも揃えました。

 

また燃焼効率は技術的に大きくアップグレードされて最大4%向上。これに新しく10パーセント大型化されたガスタンクが組み合わされ、航続距離の延長に貢献しています。

 

これにより当社の液化バイオガストラックは、既存のディーゼル車に匹敵する性能と機動性を備えるに至っており、欧州地域ではバイオLNGとLNGの両方で600を超える供給ステーション網も充実しているため、欧州地域に於いて長距離輸送の一翼を担うに値する一手段に成長しています」と説明した。

 

 

欧州で化石由来LNGをバイオLNGに置き換える大規模計画が進む

 

ちなみに同社のゼロエミッションを目指す動力ラインナップは、3つの戦略( BEV車、燃料電池車、バイオガス & HVO< 水素化植物油 > &グリーン水素燃焼車 ) が並列に進む。

 

この液化バイオガストラックには、ボルボFH、FM、FMXで、420、460、500馬力の搭載ユニットがあり、使用燃料はバイオLNG ( 液化バイオガス ) またはLNGとなっている。またバイオガスを点火させるために少量のディーゼルまたはHVOを使用する。最大航続距離は1000キロメートルとなっている。

 

使用されるバイオLNG ( LBG<液化ブタンガス>とも呼ぶ ) は、液体バイオガス ( バイオメタン ) の再生可能燃料だ。先の通り、これらの燃料は有機性廃棄物( 処理プラントからのスラッジ、食品廃棄物、肥料、その他の残留物 )を消化させてバイオガスを生成させる。

 

 

ちなみにLNG( 液化天然ガス )を燃料とする場合は、地下または海底埋蔵物から抽出される化石ガス( メタン )が使用されるがバイオガスの液化プロセス自体はLNGと同様となる。

 

車載にあたっては、燃料搭載のための必要スペースをコンパクト化させるため、一旦マイナス162°C迄冷却して圧縮充填。これにより大量のエネルギーを搭載出来るようにして航続距離を伸ばす。

 

エンジン構造は、ディーゼルエンジンの高効率を活かしつつディーゼルトラックと同等の走行性能を実現。高負荷走行や長距離走行を可能にした。

 

より詳細には、摩擦を低減するための新しいインジェクターとピストン、新しいターボ、可変オイルポンプ、ろ過されていないオイルを処理するクランクケースベンチレーションによって効率を高めた。Euro6をクリアし燃料効率は最大4%向上している。

目下、ヨーロッパの液化バイオLNGの生産は急速に拡大しており、化石由来のLNGからのスムーズな移行が期待される。そうした中で欧州委員会は〝REPower EU〟と呼ばれる新たなプランを提唱した。

 

 

このプランでは、様々な種類のカーボンフリーエネルギーに係る国内生産能力を大きくに高める事に重点を置いている。その計画によると2030年迄にバイオガスの年間生産量を今の10倍の350億立方メートルにする目標であり、この分野は既に急速な成長段階に入っているといえるだろう。

 

また近年は欧州外でも液化バイオガスへの関心が高い。一方、欧州地域内だけでも2024年迄に78を超えるバイオLNGプラントの開発準備が整えられつつあり、ドイツ、イタリア、オランダは、今後数年間でバイオLNG普及の主要国に育つと予想されている。

 

 

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。