英Arm(本社:英国ケンブリッジ、日本法人:神奈川県横浜市)は3月14日、自社エコシステムを介した一連の取り組みとして、最新のArm Automotive Enhanced(AE)プロセッサー群とオートモーティブ向けの新しいバーチャルプラットフォームを発表した。
これらは導入初日から利用でき、開発サイクルを最大2年短縮できるというメリットを業界にもたらすと謳っている。
Armでシニア・バイスプレジデント兼オートモーティブ事業部門ジェネラルマネージャーを務めるディプティ・ヴァチャーニ氏(Dipti Vachani)は、「かつてない変革期に直面する自動車業界では、更なる自律性や、より高度なユーザー体験、そして電動化へのトレンドといったニーズを背景に、ソフトウェアとAIに対する爆発的な需要が生まれています。
車載エレクトロニクスの複雑化が進む一方でタイムリーな提供を求められる中、製品開発に対する抜本的な見直しが必要です。そこでArmは今回初めて、Armv9ベースのテクノロジーをオートモーティブ向けに提供し、この最新世代のArmアーキテクチャがもたらすAI、セキュリティ、仮想化などの機能を自動車業界で活用できるようにします。
今日の自動車に求められる性能要件に応えるため、Armではインフラストラクチャ市場に於ける強みを生かし、サーバークラスのNeoverseテクノロジーを車載向けにも投入すると共に、拡張性の高い新しいArmv9ベースのCortex-A製品も提供します」と述べた。
これを踏まえた新たな製品ラインナップは以下の通り
・Arm Neoverse V3AE:Neoverseテクノロジーをオートモーティブ分野に初めて導入、AIアクセラレーション対応の自律走行とADAS(先進運転支援システム)のワークロード向けにサーバークラスの性能を提供
・Arm初となる車載用途に特化したv9ベースCortex-Aプロセッサー:
- – Arm Cortex-A720AE:幅広いソフトウェア定義型自動車(SDV)アプリケーション向けに、業界をリードする持続的パフォーマンスとSoC設計の柔軟性を提供
– Arm Cortex-A520AE:業界をリードする電力効率と機能安全を通じて、車載ユースケースに幅広く対応
・Arm Cortex-R82AE:最高性能のリアルタイム・プロセッサーとして、機能安全向けのリアルタイム処理に初めて64ビット演算を提供
・Arm Mali-C720AE:最も高負荷のコンピュータービジョンとヒューマンビジョンのユースケースに最適化された、構成可能なISP
・一連の構成可能なシステムIPにより、Armのシリコンパートナーはスケーラブルな高性能車載SoCを提供可能に
なお今技術は、Marvell、MediaTek、NVIDIA、NXP、ルネサス、Telechips、Texas Instrumentsなどの企業が既に採用している。
なおArmによると、今後、システムはさらに複雑化し安全性へのニーズは高まる一方だという。そこで同社では、今回のオートモーティブ向けArm Compute Subsystems(CSS)提供にあたり、これら全ての演算コンポーネントをパートナーのために取りまとめ、重要な部分で一貫性を保つための標準化に取り組んだ。
より具体的にオートモーティブ向けのArm CSS for Automotiveは、今後、最先端のファウンドリー・プロセスに対応し、性能、消費電力、実装面積に最適化されたArm AE IPの事前統合済み・検証済みの構成を提供する。今後、オートモーティブ向けCSSの第一弾は、2025年中の提供開始を予定しているという。
またかつて従来型の自動車の開発サイクルは直線的なプロセスであり、それはプロセッサーIPが提供された後、シリコンの開発が始まり、約2年後にハードウェアが完成すると、ソフトウェア開発者はこれに基づきソリューションの構築に着手するという流れを辿るもの。
しかしArmは今回、業界をリードする最新世代のArm AE IPを使用したバーチャルプロトタイピングという新しいアプローチによって、この状況を変えるという。
同社は、新Arm Automotive Enhanced(AE)プロセッサーを介して、Amazon Web Services(AWS)、Cadence、Corellium、Siemensなどの業界リーダーと協業してバーチャルプラットフォームとクラウドソリューションを提供する構え。
なお、これらのソリューションは、Autoware Foundation、BlackBerry QNX、Elektrobit、Kernkonzept、LeddarTech、Mapbox、Sensory、Tata Technologies、TIER IV、Vectorなどのパートナーとの協力により、ソフトウェアスタック全体にわたって、より早く、よりシームレスな開発を可能にするとした。
最後にArmでは、「同発表は、オートモーティブ・エコシステムの実現に向けた重要な一歩です。開発者にとっては新たな機会が得られると同時に、Armベースのソフトウェア定義型自動車の未来を構築する自動車メーカー、ティア1サプライヤー、半導体メーカー、ソフトウェアプロバイダーは、市場投入期間の短縮のメリットを享受できます」と結んでいる。
新しいバーチャルプラットフォームについての詳細は同URLリンクの通り(英文)、基盤およびアプリケーション・ソフトウェア層のコラボレーションについての同URLリンクの通り(英文)となる。