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2024年2月21日【IoT】

旭化成、EV向け半導体電流センサーの販売を開始

坂上 賢治

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コアレス電流センサー CZ39シリーズ

 

SiC/GaNパワーデバイスとの高い親和性、車載充電器用途などに向けて販売

 

旭化成エレクトロニクスは2月21日、SiC(シリコンカーバイド)やGaN(窒化ガリウム)などを用いた次世代パワーデバイスと親和性の高い電気自動車(EV)向けコアレス電流センサー「CZ39シリーズ」の量産および販売を開始した。

 

旭化成グループではデジタルソリューション事業をマテリアル領域の重点成長分野に位置づけており、電子部品・電子材料を併せ持つ強みを活かして「マテリアル領域の大きな収益の柱」とすべく、事業の拡大成長を加速させている。

 

そんな同社が推進する電子部品事業では、コア技術であるセンサー技術、アナログ設計、ソフトウェア技術を融合し、バリューチェーン・顧客提供価値に重点を置いたソリューションを提供している。

 

世界で販売拡大が加速するEVでは、安全性の向上と共に、航続距離を延ばすため搭載する部品の小型化や軽量化が求められている。また充電に関しては、発熱や電池の劣化を抑えつつ高速で充電を行うという高度な制御が必要となってきている。

 

当該製品では自社で長年培ってきた化合物半導体・パッケージ・回路技術を用い、高速応答性・低発熱・高耐ノイズ性を実現したという。

 

これらの特徴は、SiCやGaNなどを用いた高電圧かつ高速でスイッチング(電流のオン<通電>とオフ<遮断>切り替えを高速で繰り返すこと)をする次世代パワーデバイスを使用する際、必ず電流センシングに対して求められる性能となる。

 

自動車に搭載される充電器 (OBC/On Board Charger) や直流電圧を変換するDC/DCコンバーターの小型化に貢献する。加えて、その高速応答性から過電流を遮断し、安全性を高める電子ヒューズ(E-Fuse)システムにも使用可能だ。

 

そんな旭化成の電流センサーの開発・製造技術は、1980年の創業以来、磁気センサーとして使用されるホール素子事業で高感度な化合物半導体技術を培ってきた歴史かある。

 

そんな蓄積技術を基に、高度なパッケージ設計技術やアナログ回路設計技術を活かし、先進的な電流センサーを開発。2010年代には、コアレス電流センサーの開発に成功し「Currentier(カレンティア)」ブランドとして製品ラインナップを拡充させた。また同社のホール素子や電流センサーはモーターの駆動や電力変換など様々なアプリケーションでも使用されている。

 

当該製品による電流測定の仕組み

旭化成の電流センサーのあゆみ

 

当該製品の特長は以下の通り

 

1. 100ナノ秒(1000万分の1秒)の高速応答で電流を検知
化合物ホール素子の高感度特性を活かし、高速応答を実現した。
SiCやGaNなどを用いた次世代パワーデバイスを使用するOBCやDC/DCコンバーターに本製品を使うことで、スイッチング周波数の高周波化が可能となり、モジュールを小さく設計することができる。
また同製品はその高速応答性から過電流保護の用途にも利用可能。同製品を用いることで、システムにとって危険な過電流を検知した際に自動的に電流を遮断する電子ヒューズ回路を実現することが可能となっている。

 

2. 一次導体抵抗 0.3mΩにより発熱低減で熱設計が容易に
同製品は、デバイス内に流す電流を計測するコアレス式の電流センサー。独自のパッケージを開発することで、一次導体の抵抗値を 0.3mΩ まで抑えた。環境温度 125℃で40Armsの電流を連続通電させることが可能。併せて発熱も抑えることができるため熱設計が容易になる。加えて、沿面距離と空間距離を十分確保した耐圧構造を採用していることから、650Vを超える高耐圧アプリケーションにも使用可能となつている。

 

3. 高速スイッチング動作時においてもノイズの影響を抑えつつ電流検出が可能
SiCやGaNなどを用いたパワーデバイスでは、高電圧かつ高速のスイッチングを行うため、センサーの動作や測定結果に影響を与える電磁波ノイズが強く発生する。しかし同製品は当社の化合物半導体技術、パッケージ技術、回路技術を組み合わせることにより、そのような環境に於いてもセンサー特性への影響が発生しにくい設計とし、ノイズの影響を抑え電流検出が可能となった。

 

アプリケーション例
・EV用 OBC
・EV用 DC/DCコンバーター
・EV用 電子ヒューズ (E-Fuse)

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。